【投稿広場】心霊*不思議カテゴリ総合【part3】

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  • ロビンM

    やあロビンミッシェルだ。

    この話↓は過去に書いていた話の続きだが、知らない人も多いとおもい繋げて書いてみたよ…ひ…

    しかもまだ完成してない所がお茶目だと笑ってくれ!次で完結する予定なんでまさかの驚愕のラストを楽しみにしていてくれ!…ひひ…

     
    • カイジ

      どこに書いてもスレ違いになるので誰も使ってない此所に記す。

      『世にも奇妙な掲示板』は表も裏もアクセス不能、完全に終わった。

       
      • 匿名

        とうとう裏もアクセス不能になりましたね。
        雑談の場をなくした理由はだいたい察しはつくけど、せめて事前通告くらいあってもよかったですね。少なからず利用者がいたわけだから。
        サイトに対しての質問とか意見とか発信できる場はほしかったかも。

         
        • 匿名

          天通もしろちゃと同じく放置にするみたいだな。
          知らない人間もいるだろうから、告知くらいすれば良いのにな。
          いまだに1000人程の来場者いるのだから

           
  • ロビンM

    今夜は月が綺麗だ。

    昼間の茹だる様な暑さがまるで嘘だったかの様に、この山の高台はヒンヤリとして解放的で涼しい。

    俺は自宅から車で三十分程離れたとある外人墓地にいた。海に面しているせいか、潮の香りが混じる突風が時折ザワザワと周りの木々をしならせながら、この異様な雰囲気を更に盛り上げてくれている。

    「やべ、充電20%きってんな…」

    パシャリ!

    目下に広がる綺麗な夜景を写真に数枚収めた後、俺は心の中で軽く覚悟を決めた。

    振り返るとやはり先程と同じ光景…

    俺の愛車クラウンの中で怯える香織と龍。

    麗子はといえば長い黒髪を振り回しながら、ロックされたドアをこじ開けようとバンバン車体を叩いたり、何語か分からない言葉で喚きながらノブをガチャガチャさせている。

    怖い…正直…

    突如、豹変してしまった麗子。

    原因は分かっている。

    外人墓地に「出る」と云う噂を聞いた俺達は、真夏の深夜にわざわざこんな所まで肝試しに来たんだ。

    しかし車で周辺を軽く見て回ったものの、比較的街灯の多いこの墓地は洋式の四角い墓石がただ規則正しく並んでいるだけで、これといった異変も怪現象も起こらなかった。

    すると苛ついた龍が、事もあろうにその墓石の中の一つに中指をおったてながらジョロジョロと小便を引っ掛けてしまったんだ。

    慌てて止めに入った麗子だったが、突然胸を抑えながら苦しそうにしてうずくまり、一転ゲラゲラと笑い出したかと思えば、その墓石の前の土を素手で掘り始めた。

    実はもうその時から麗子は何処の国の言葉か分からない、理解不能な叫び声を上げていたよ。

    突然の事に呆気に取られている俺達はどうする事も出来ずに唯その光景を暫く眺めていたが、龍が麗子の名を呼んだ瞬間、土を掘る手がピタリと止まり、此方を振り返ったんだ。

    誰だよお前?

    俺の心の声だ。

    まるで別人としか言いようがない程に麗子の顔は変形していた。

    細かった筈の目はこれでもかと見開き俺達を睨みつけ、口からは涎と共に大量の泥がボタボタと滴っている。喰ってたんだよ、泥を…

    次の瞬間、体に大きなバネでも入っているかの様にビヨン!と跳び上がった麗子は、あーあーと奇声を発しながら此方へと向かって走って来た。

    恥ずかしながら腰を抜かしてしまった俺はその場から動けなかったが、香織と龍はあの走塁王「福本豊」顔負けのダッシュでクラウンへと逃げ込んだ。

    狙いは小便を引っ掛けた龍の様だ。

    何故なら麗子は座り込む俺に見向きもせず、二人の後を追ってクラウンのボディをバチバチと叩き始めたからだ。

    買ったばかりの新古車、一般人の夢クラウンをバチバチと…たまに鋭い蹴りも何発か入っている。

    正直、俺は麗子の変貌ぶりや龍の身の安全よりも愛車クラウンがとても心配だった。

    白のボディーが泥で汚され、ミラーが飛び、車体が変形していく様をとても直視出来なくなった俺は、ブラックメンソール1ミリを吹かしながらパノラマに広がる綺麗な夜景に目を移したという事なのだ。

    これは夢なのだろうか?頼む夢であってくれ!心の中の俺が叫ぶ。

    正に「憑依」としか言いようがないこの事態に、俺の脳味噌がどうしてもついていかないのだ。

    「…ひひ…」

    何故か逆に笑いが込み上げてきた。人間とは実に不思議なものだ。

    キラン

    満点の夜空に何かが光った。

    「 あ、流れ星!」

    願い事をしようと素早くスマホを取り出したものの勿論間に合う訳も無く、俺は充電が15%まで減ってしまった電話を再度内ポケットに突っ込んだ。

    話を整理してみよう。

    龍がヘマをしたせいで突如豹変してしまった麗子。

    別人の様に顔を変え、髪を振り乱しながら他国語の奇声を上げて俺の愛車の破壊をいまだに続けている。

    今の麗子は麗子であって麗子では無い。麗子に似てはいるが麗子自身の考えで動いている訳では無く、麗子の中に憑依した何者かが麗子の体を乗っ取り、麗子のフリをして麗子の体を操っているのだ麗子。

    ふぅ…

    ダアアアアン!!!

    「 あーあ、あいつボンネットの上に乗っちゃったよ…」

    ドアロックが解除出来ないと悟ったのか、あろうことか麗子はブロックを抱えてボンネットの上に這い上がり飛び跳ね始めた。

    まさかその手に持ったブロックでフロント硝子を叩き割るつもりだとでも云うのだろうか…嘘だろ?…

    「 ぐす…」

    突如、鼻が詰まったかと感じた途端俺の頬をさらりと涙が伝った。それは嬉し涙とも悔し涙とも違う、何か別の感情がその時俺の胸を支配していた。

    庶民の夢クラウン

    月四万の三年ローン

    保険屋の番号をスマホでチェックする。充電は既に8%を表示している。

    恐らく車の中で怯えている香織と龍には俺のこの気持ちは分かるまい。お前らの置かれている状況も中々にハードかもしれないが、今の俺に比べたらピロリ菌とシロナガスクジラ程の差があるだろうな。

    「 …ひひ…」

    ガアアアアアン!!!

    遂に麗子がブロックを硝子に投げつけた。

    しかし鈍い音をさせ跳ね返ったブロックがまともに麗子の体にブチ当たり、ドシャリと後ろへと吹っ飛んで行った。

    「 ざまぁみやがれ…ひひ…」

    心の中で軽く毒づいた後、俺は少し後悔した。

    確かに今の麗子は洒落にならない。得体の知れない何かに支配されているのは間違いないだろう。

    しかしそれを笑うという事は香織の親友を笑うという事だ。俺は一人心の中で反省した後、後ろのポッケから特殊警棒を取り出した。

    俺は今まで運動部に所属した事も無ければ、武術なども習った事は無い。しかし四歳から喧嘩という実戦で戦って来た経験と知識と度胸は持ち合わせているつもりだ。

    取り憑かれているとはいえ所詮は女。ここ十年程は連戦連勝のロビン様がこんな基地外に負ける理由は一つも無いのである。

    「 おい!麗子!!」

    返事は無い。

    奴は先程の一撃でボンネットの向こうへとすっ飛んでしまってから、気を失ってしまったのかまだ姿を現さない。

    「 い、今の内に逃げるか…」

    俺は警棒を伸ばしたまま、いつでも殴りかかれる体制を取りジリジリと愛車クラウンの元へと近づいていった。

    そこでふと妙な違和感に気付いた。

    静かだ…

    先程まであった潮風に煽られていた木々の音が消えている…

    「 …………」

    クラウンを見ると龍と香織が車の中から、俺の方を指差して大声で怒鳴っているように見える。

    無論、窓が閉まっているので奴等が何を言っているのかは全く分からない。

    首元に妙な冷気が走る。

    後ろ…?

    もしかして龍達は俺の後ろを指差しているのか?

    ギャーギャー!!

    振り返ろうとした時、突然左手の森から数羽の大きな鳥が飛びたった。

    「 ち、ビビらせんじゃねぇよこの野郎!!!」

    俺は鳥に石を投げてやろうと足元に目をやり屈み込んだ。その時左目の視界の隅にそれを捉えたのだ。

    白い裸足の脚

    それは俺のすぐ後ろに立っているようだ。

    「 ……麗子…か…?」

    俺は瞬時にそれが麗子だと見抜いた。

    しかし残念な事に武器の特殊警棒は石を拾う為、先程ポッケにしまい込んでしまっている。

    これは素手の肉弾戦に切り替える必要があった。

    麗子は卑怯にも俺の背後を取っているものの、いつでも攻撃が出来ると気を抜いている筈だ。幸いこちらが気付いている事はまだバレてはいない。

    喧嘩屋の俺が取る行動はただ一つ、ノーモーションでの上段後ろ回し蹴りだ。もうこれしか無い!!

    「 うりゃーー!!!」

    ドスウ!!!

    決まった!

    モロに首に入った!

    ドシャリと倒れ込む音がして、すかさず俺は麗子に馬乗りになりトドメの拳を振り上げた。

    誰だよお前…

    俺の心の声だ。

    月明かりが照らし出すその顔は、麗子とは似ても似つかない汚らしいオッさんだった。

    いや只のオッさんでは無い。こいつは黒人だ、しかもゴリゴリのやつだ。

    そいつは白目を剥き、口から血と共に黄緑色の液体をドクドクと吐き出している。

    しかも糞全裸!!

    「 胸毛気色悪い!!!∑(゚Д゚)」

    俺は本気の一発をそいつの顔面に振り下ろした。

    グシャ!っと顔が潰れ、そいつはピクリとも動かなくなった。

    「 …………」

    ジャリ… ジャリ… ジャリ…

    俺は肩で息を整えながらも、背後から近づいて来るその足音に気付いていた。

    どうやら一人では無い。

    ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ…

    振り向くと、街灯の下から墓石の細道をこちらに向かって歩いてくる数人の男。いや女もいる。

    そいつらは何故か皆全裸で、頭を斜めに傾け、両手をこちらに向けながらのスタイルでアーアー言いながらゆっくりと歩いてくる。

    「 はいはい、ゾンビゾンビ!」

    俺はポッケからまた特殊警棒を取り出し、冗談の様なこの展開に本気の怒りをおぼえた。

    「 てめーら!ここはジャパンだぞ!! ゾンビは他国でやれ、コンちくしょーが!!!」

    完全にキレてしまった俺は、これがマジで夢であってくれと願いつつもそいつらに向かって殴りかかった。

    「うおおおおお!!!」

    ガス!!ドス!!バシ!!

    「はい次ぃ!!」

    ガス!!ドス!!バシ!!

    「ヒャッハー!!」

    面白い様に攻撃が決まり俺がヒャッハーするのも無理は無い。幸いこいつらは最近流行りの走るゾンビとは違い、バタリアン時代の古いタイプのゾンビのようだ。

    あーあー言いながらただユラユラと歩いて来るだけなので、弱いも何もスキだらけで糞ダセえ単細胞ゾンビだった。

    ガス!!ドス!!バシ!!

    「へいへいへい、カモンカモン!!お代わりプリーーズ!!(´▽`) ‘`,、’`,、」

    ガス!!ドス!!バシ!!

    奴らは心臓、もしくは頭、つまり脳味噌を破壊すれば動かなくなる。奴等に噛まれさえしなければ楽勝。でも噛まれたら大変、俺もゾンビになってしまう。でも動きがノロマなのでその心配は皆無。

    それは「OF THA DEAD」シリーズを大体見尽くしている俺にとっては常識なのである。

    「へへ、貴様ら俺を甘く見ていたようだな!この死に損ないが!全員次こそ間違い無く地獄に送ってやるぜ!ひひゃひゃひゃ(´▽`) ‘`,、’`,、」

    ガス!!ドス!!バシ!!

    警棒を振り下ろす度にグチャリと鈍い音がしてめり込み、脳髄と思しきドロドロの液体が飛んで来る。既に俺の体は奴らの返り血で真っ赤に染まっている事だろう。気持ち悪りぃがこの際仕方ない、全員眠らせてから考える事にしよう。

    ふう、もう二十体ぐらいは殴り倒しただろうか?振り返ると奴等の動かなくなった夥しい数の死体が転がっている。

    そして、漸く今目の前をユラユラと歩くゾンビは残り一体となった。その格好からして生前牧師をしていた老人だと見受けられた。

    「へへ、余裕余裕♪♪」

    牧師は他の奴等と違ってある種異様なオーラを纏い、ボソボソと何かを呟いていた。両の目玉は抜け落ち、左手は肩からゴッソリと千切れ無くなっている。

    ピカ!ゴロゴロゴロゴロ!!ピシャン!バリバリバリバリ!!!

    突然、空からの雷鳴が牧師の後ろに聳え立つ巨木に降り注いだ。

    バキバキと真っ二つに裂ける巨木。

    それを待っていたかの様に牧師は右手を天高く突き上げ、大声で何かを叫んだ。

    『〆$○+%・€#<°!!!』

    ゴロゴロゴロゴロ…

    また夜空が鈍い光と共に唸りだした。どうやらやはりこいつが最後のラスボスの様だ。

    『〆$○+%・€#<°!!!』

    ピカピカ!!ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!ピカピカ!!

    「…………」

    雷鳴が鳴り止み、牧師は右手を挙げたまま微動だにしない。

    何も起きなかった。

    「へ、この見掛け倒し野郎が!(´▽`) ‘`,、’`,、」

    少し恐怖をおぼえてしまった自分が恥ずかしくなった俺は、この基地外牧師にトドメを刺すべく腰掛けていた石碑から立ち上がろうとした。

    「……ぐはっ!!」

    動けない…

    見ると土の中から伸びた紫色の分厚い手が俺の両足首を掴んでいる。振り払おうとも物凄い力でビクともしない。

    「は、離せこんちくしょう!!」

    ガシ!!

    「ふ、ふひょう!!( ´བ` ) 」

    直で触るのはキモいので警棒でその手を殴ろうとしたが、誤って自分の爪先を殴ってしまった。痛すぎる。爪が剥がれたかもしれない。

    「…うう…いてて…」

    『〆$○+%・€#<°!!!』

    痛みで項垂れる俺の髪の毛をガシリと何者かに掴まれた。強引に顔をグイと引き上げられる。

    目の前には顔面血だらけの歯を剥いた牧師のドアップ。

    『 ユー達はとんでもない事をしでかしてしまった…ミー達のボスである「アヤトラ・サディク・ジュンダラー・サセコビッチ」の墓に小便をかけてしまったのだ…決してサセコビッチ様はユー達は許さないだろう…許さない…サセコビッチは許さない…もう一度言う、サセコビッチは許さない…』

    「サセコビッチ…?」

    先程まで理解不能だった牧師の言葉が突如、日本語で直接脳に流れ込んできた。妙な説得力のある牧師の言葉に俺の身体は震えが止まらない。

    ゴロゴロゴロゴロ!!

    またも雷鳴が。

    『〆$○+%・€#<°!!!』

    「や、やべ!」

    牧師はまた変な呪文の様な叫びをあげた。俺を喰うつもりなのか大口を開けている。

    『怒りと共にユー達が我らの封印を解いたのだ!死を持って償いたもう!サセコビッチ様へ死を持って償いたもう!ガアアアアア!!!』

    「う、うわあああああ!!」

    ゴロゴロゴロゴロ!!

    「兄貴!!頭下げろー!!」

    バコオオオオオン!!

    背後からの龍の叫びが聞こえた瞬間、物凄い爆発音と共に目の前の牧師の頭が一瞬で無くなった。そして数秒後、首を失った首からは水圧の弱いシャワーの様にジュクジュクと真っ赤な血が溢れ出して来た。

    ドシャリ…

    牧師の身体は痙攣しながらゆっくりと地に堕ちた。

    振り返ると金属バットを手にした龍が震えながら立っていた。

    「良かった兄貴!間に合った!」

    龍は涙と鼻水をぐしゃぐしゃにした情けない顔でへなへなと膝を着いた。多分クラウンのトランクに忍ばせておいた金本サイン入りの金属バットを持って来たのだろう。

    足元を見ると先程俺の脚を掴んでいた不気味な手も消えている。

    「お、おう、サンキューな!ちょっとだけヤバかったぜ…へへ…」

    「 兄貴、笑ってる場合じゃないすよ!は、早く逃げないと!」

    「ふっ…情けない顔しやがって、ゾンビ共は全員俺がやっちまったから大丈夫だよ、そんなあせんなよ龍wわははは!」

    「あ、兄貴!あれ!」

    龍が指さす方を見ると、先程金属バットで吹っ飛ばされた牧師の生首がゴロゴロとこちらに向かって転がって来ていた。

    そして俺達と目が合う角度でピタリと止まった牧師は、不敵な笑みを浮かべながらこう言った。

    『ユー達はサセコビッチ様を甘く見ているようだな…一度復活されたサセコビッチ様を止める事はもう誰にも出来ない…その肉体が死のうと、また違う形で再生されるだろう…ユー達はサセコビッチ様から逃れる術は…ないのだ…フオッホッホッホッホッ!!ぐ、ぐはあああ!!』

    そこまで言った所で牧師は動かなくなり、絶命した。

    「…………」

    さっきまであれ程明るかった街灯が雷の影響を受けたのかその光力を弱めボンヤリと墓場を照らし、風の音も無い完全な静寂と生温い空気が辺りを支配している。

    「あ、兄貴…サセコビッチってなんすか?」

    「俺に聞くなよ知るかバカ!」

    イライラする。夢ならもう醒めてもいい頃だ。しかしリアル過ぎるこの現状。震えの止まらないこの両脚。牧師が死んだ今もまだ緩む事の無い緊張感。そして何か忘れている…

    何か…

    龍が俺の現状を察し肩を貸してくれた。墓場を見てももうゾンビの姿は見えない。やはりもう終わったのか?…

    強烈な臭気が鼻を突いた。

    足元の牧師の頭から水蒸気の様な煙があがっている。

    「あ、兄貴あれ!」

    見ると先程のゾンビ共も同様、酷いアンモニア臭を漂わせながらモクモクと煙を上げ溶け出していた。

    ジュン…ジュワアアアア…アア…

    そしてゾンビ共は跡形も無く消えた。

    夜空を見上げると雨雲も消え去り、ここへ来た時と同じ満点の星空が瞬いている。綺麗だ。

    「宇宙にいるみたい」

    隣りで龍がボソリと気持ち悪い言葉を発した。でも何か忘れている気がする…

    何か…

    返り血を浴びた上着を脱ぎ捨て、タンクトップ一枚になった俺は車に戻るのを躊躇った。あれ程麗子にボコボコにされた愛車クラウンを直視出来る自信が無かったのだ。んっ?

    麗子…?

    麗子…麗子…

    麗子!!

    その時、クラウンのボンネットの向こうで白い人影が動いた。完全にさっきまでの死闘で麗子の存在を忘れてしまっていた。

    麗子はどうなったのか?豹変した理由があいつらであるとするならば、あいつらが死んだ事により麗子はあいつらの呪縛、憑依から解放されて元の自分を取り戻したのだろうか?

    俺はクラウンの心配よりも麗子の心配の方が先だという事に気付き、龍を囮に使う事にした。

    「り、龍…麗子…麗子の様子見て来い!俺はクラウンのエンジンかけて香織と待ってっから」

    「ちょ、ちょっと何いってんすか兄貴!!無理ですよさっきの麗子さん兄貴も見たでしょ?完全にヤバイっすよあれ!兄貴が見て来て下さいよ!」

    龍は金本サイン入りの金属バットを俺に押し付けると、ジェリー並みのスピードでクラウンへと乗り込んでしまった。

    「あいつ足だけは速ええよな、ちぇっ!!」

    先程の動く白い人影はまだ動かずに突っ立っている。背後の森の影の影響でボンヤリとしか確認は出来ないが多分麗子で間違いないだろう。

    まあ、たとえ麗子があのままの状態で襲いかかって来たとしても勝てる自信はある。こいつで頭を吹き飛ばしてやるだけだ。

    余裕だ。

    俺はクラウンの後ろからボンネットの前に立っているであろう麗子に向かって叫んだ。

    「おい麗子!お前は麗子なのか?!」

    我ながらよく分からない質問を投げかけてしまった。しかしその人影はその声に反応する事も無く依然突っ立ったままで動く気配がない。

    サセコビッチ…

    突然、牧師の声が脳裏を掠めた。

    サセコビッチ…サセコビッチ…サセコビッチ…サセコビッチ…

    「おい、サセコ!!」

    つい間違えて麗子を「サセコ」と呼んでしまった。その瞬間人影がゆらりと動いた。

    そして…

    『ブギャアアアアアアア!!!』

    麗子はまるで猫の声を拡声機を通して聞いたかの様な物凄い音量の奇声を発し、またもやドン!とクラウンのボンネットに飛び乗ってしまった。

    『ブギャア!!ブギャア!!ブギャアアアアアアアアアアア!!!』

    サセコと呼ばれたのが勘に触ったのかは分からないが、麗子はメチャクチャに怒っている様だ。

    ドン!ドン!と闇雲にボンネットを踏み鳴らしながら、終いには四つん這い状態になり両手両足でボンネットを叩き始めてしまった。

    「くっ!クラウンが!俺のクラウンが!ち、畜生!!」

    俺の中で何かが弾けた。

    それは怒りが恐怖と痛みに打ち勝った瞬間でもあった。実は相手が香織の親友「麗子」だという事もあり、なるべく暴力では解決しない方向で考えていた。

    *しかし相手が麗子の様で麗子ではない存在(多分サセコビッチ)

    *龍と香織を安全に帰さねばならないという使命感の崩壊。

    *そして何より俺の分身とも言える愛車クラウンへの許す事の出来ない酷い仕打ち。破壊。

    以上、この三点が俺の当初の誓いを打ち破ってしまったのだからもう止められない。

    「うりゃあああ!サセコビッチこの野郎!てめぇもう許さねえ!絶対許さねえ!脳みそブチまけて口から手ぇ突っ込んで背骨カランコロン♪いわしたろかボケえええ!!」

    俺はバットを振り上げてボンネットに飛び乗り、躊躇する事無く麗子の脳天に渾身の一発を振り下ろした。

    【続く】

     
  • ロビンM

    やあロビンミッシェルだ。

    コメントありがとう!犬も好きだが動物は全て好きだ。最近はシマフクロウにハマっているよ…ひひ…

     
  • 匿名

    ゴンくんつぶれちゃったの?すっごく切ないんだけど…。ロビンさん犬大好きですよね?文章から伝わってきます、私も犬大好きです。特に柴犬♪

     
  • 匿名

    動物の話は切ないなあ…。

     
  • ロビンM

    やあロビンミッシェルだ。

    俺の話に幾度となく登場する犬、マモル。だが今回はマモルの話では無く己の指名を全うした知られざる名犬「ゴン」の話をさせて貰う。

    時は十年も前に遡る。

    当時、10tダンプを生業としていた俺は毎日の様にとある採石場へと出入りしていた。

    そこは過去に雨による地滑りで社員二十名が生き埋めになったり、これは噂だがヤク○が山の上に死体を埋めに来ているという話など、まぁどこの山にでもある様な曰く付き?の山だった。

    その日俺は線路に引く栗石を運ぶ為夜勤に出ていた。全ての石を線路に引き終わったのは午前二時。次の日も朝六時から出勤だった為、そのまま採石場に戻りダンプで仮眠を取る事にした。

    入り口の太いチェーンを解除し、二十四時間照明のついた比較的明るい詰所の横にダンプを着けて、エンジンを切った。

    国道から離れた山の中にあるこの場所は耳がキーンとなるほど静かで、この広い採石場に自分一人しかいないという不安な気持ちと、先程も述べた曰くなどもあってか妙に心細くなる。いつもの事だから慣れてはいるがな。

    一月中旬とあって瞬く間にヒーターの熱も冷め吐く息も白くなり、俺はキャビンの後ろに用意しておいた寝袋に潜り込んだ。

    「 ちぇ、ビールでも買ってくりゃ良かったかな…」

    いつもなら直ぐに夢の中へと行けるのだが、なぜかその日に限って中々寝付けなかった。

    時折山から吹き下ろしてくる突風でキャビンがグラリと揺れる。

    昨晩よく寝たからなのか一向に睡魔が襲って来る気配が無いので、仕方なく気分転換にスマホで音楽を聴きながら一服する事にした。

    煙草を取りに運転席へ戻り、窓を開けて火をつける。

    外気が一気に車内へと押し寄せ身震いする。キンと冷え切った空気。煙りを吐き出しながらすぐそばに聳え立っている高さ五十mは有るであろう岩壁を見上げた。

    これがもし地滑りして来たら本当に一溜まりもないだろうな、と改めて実際に過去にあった惨劇が頭を過った。

    そう言えば亡くなった人の中に同級生の父親もいた。休憩中、小屋で麻雀をしていた最中に小屋ごと土砂に流され生き埋めになったそうだ。そして数年経った今でも身体はまだ発見されていない。

    無念だったろうな…

    クゥん…

    干渉に耽っていると車の足元から鳴き声がした。見るとこの採石場で飼われている元野良犬の「ゴン」がちょこんとお座りして俺を見上げていた。

    「今日は何も持ってねぇんだ、すまんな」

    クゥん…

    いつもダンプを見ると寄ってきて弁当のオカズをねだるゴン。可愛い///

    元は野良だが真っ白な紀州犬で、生還な顔立ちをしており、顔馴染みの無い部外者を見るとドスの効いた唸り声をあげる。深夜の採石泥棒から山を守る立派な番犬として皆に可愛がられているのだ。

    ゴンは赤い舌をベロンと出しながら暫く俺を見上げていたが、何も貰えないと悟ったのか突然足早に奥の暗闇へと姿を消した。

    あれから三十分くらい経っただろうか、寝袋の中で漸くうつらうつらし出した時に微かに窓の外からゴンの唸り声がした。

    またかよと思い無視して寝ようとしたが、いつまで経ってもしつこく唸り続けるので渋々窓を開けて下を覗くと、さっきと同じ位置にゴンがお座りして此方を見上げていた。

    「どうした?飯なら無いっつっただろ…が?!」

    俺はゴンの横に転がっているその白い塊を見て言葉を呑んでしまった。

    それはまだ所々に肉と髪の毛が付着している頭蓋骨だった。

    言葉に詰まる俺を見て、ゴンは嬉しそうに尻尾を振りながらそれをカプリと咥え、また先程の暗闇へと走り去って行った。

    何者かにキャビンのドアをドンドンと叩かれ目を醒ました俺は慌てて腕時計で時間を確認した。七時。起きる予定を三十分もオーバーしている。

    慌てて車を降りて詰所に駆け込み、待ってくれている配車係に詫びを入れた。いつもは硝子越しに「おはよう!」と元気な笑顔で迎えてくれる配車係だが、今日は妙に沈んだ顔で挨拶もなく俺をジッと見つめてくる。

    やっぱ怒ってる?俺はもう一度詫びを入れようと彼に声を掛けた。すると彼は首を振りながらこう言った。

    「今朝、ゴンがプールの所でペッシャンコになって浮かんでいたんス。ロビンさん心当たりありませんか?」

    そう言って彼に付いて行くと、詰所の裏手に変わり果てたゴンの姿があった。

    俺は目の前が真っ暗になった。入り口のチェーンを開けて採石場に入ると自動的にまずその足洗いのプールを通らなければらならない。しかし昨晩そこを通った車は俺のダンプだけだ。

    俺がゴンを轢いた?

    マジかよ…

    嘘だろ… 昨日と言ってもまだ数時間前の記憶が鮮明に蘇って来た。

    俺が詰所の横でエンジンを切った後もゴンはまだ生きていた。はっきりと見た。二回も…そしてハッと俺は何故か今まで完全に忘れていた頭蓋骨の事を思い出した。

    気付くと俺は配車係の彼を連れて、昨晩ゴンが消えて行った方向の林へと二人で分け入っていた。

    ゴンが付けたのであろう狭く歩きにくい獣道をどんどん進むと、今は掘削のされていない裏手の開けた場所へ出た。

    足元に白い物が落ちている。手に取ると何かの動物の骨のようだ。

    配車係の彼は歩きながら言った。

    「数年前にここで土砂崩れがあって沢山の人が生き埋めになったんです…」

    知ってるよ (小声)

    下には大きな池がありそこへ大量の土砂が流れ込んで半分程を埋めた状態で固まっていた。数年経っているとはいえ当時の事故のその凄まじさが伝わって来た。

    数十m先でまた白い物が転がっている。俺達はまるで何かに誘導されるかの様にその骨を辿って行った。

    すると高く盛り上がった山の上から微かだが風に乗って低い唸り声の様なものが聞こえた。見上げるとなんと死んだ筈のゴンがお座りして此方を見下ろしていた。

    配車係の彼には聞こえていないのか見向きもせずに池の方へと向かって歩いている。俺は配車係の彼を呼び止めもせずにゴンがいる山の頂上を目指して走り出していた。

    すると後ろから配車係の彼が追いかけて来て俺の作業着の襟を掴んで来た。声になってない掠れ声で「いっちゃ駄目です!あれ見て下さい!ロビンさんあれ見えてないんですか?!」

    見ると先程ゴンが座っていた場所に俺と同じ採石場指定の作業着を来た人間が立っていた。

    一、二、三…いや、十人以上いる。皆服は泥だらけで紫色の無表情な顔だ。ジッと俺達を見ている。

    今までビュービュー吹いていた風の音が止み、俺の嫌いなカラスの群れがそいつらの上を旋回している。

    何故かこれだけ距離があるにも拘らずはっきりと表情までもが見てとれる。無表情なのに物悲しいその表情…

    それは生きてる人間の顔では無かった。

    一度詰所に戻り上の人間に事情を話した所、半信半疑ではあったが山の作業員数人を連れて件の場所を調べに行ってくれた。情けないが俺達二人はそこへ怖くて行けなかったのが正直な所だ。

    結果、ゴンが座っていた土砂の山の上辺りには大量の人骨が掘り起こされた状態だったそうだ。警察が言うには数人では効かない骨の量だったという。それは恐らく不明者の物で間違いないだろうという事だった。

    ゴン…

    お前は命尽きるその時まで山の為に働いていたんだな。人知れず毎日掘り起こしていたのだろう…お前はそれを俺に伝えたかったんだな?

    俺は涙を堪えて手を合わせた。

    ゴンを埋めた所に皆が買ってきた大量のドッグフードや、生前好物だった骨付き肉が添えられている。

    「さようなら」

    残念ながら俺に轢かれて星になってしまったゴンだがˉ̞̭ ( ›◡ु‹ ) ˄̻ ̊ 彼の偉業はこれからも後世へと語り継がれて行く事だろう。

    ゴン、ありがとう。

    そして、グッジョブ、ゴン!!

    【了】

     
  • ロビンM

    修学旅行先の長崎で麗子は何度も気を失った。

    後日、現像された写真には麗子の顔を覆い隠す様に纏わり付く無数の赤黒い骨の見えた手が写っていた。

    夏美は一週間学校を休んでいる麗子を心配し家に行った。すると麗子はげっそりと痩せ細り号泣しながら抱きついてきたらしい。

    家の中に入った瞬間焦げた臭いと右肩に鈍痛を覚えた為、玄関、風呂、月明かりの入る窓が有る部屋二箇所に盛り塩をし、何か良からぬ者を連れて来たみたいだと話した。

    麗子は喉の渇きが止まらないらしく絶えずペットボトルの水を飲み続けている。

    リビングで話している時も誰も居ない筈の二階から大勢の人が歩き回る足音や、ドアの開閉する音が何度となく続いていた。

    帰り際、麗子の後ろ手の廊下の暗がりに二メートルはある黒い塊に手と足が生えただけの歪な者が立っているのが見えた為、夏美の強い提案でその日から麗子は近所の親戚の家に泊まる事になった。

    因みに麗子の両親には全く見えないし、危害もない。

    家に憑いていると思った夏美は、何度も麗子を通して彼女の両親に引っ越しを促したが全く相手にして貰えなかった。

    結局、三ヶ月程してから夏美と共に麗子の実家を訪れてみると前の様な臭いも、嫌な感じも、異形の姿も綺麗さっぱり消えていた為、麗子はまたその家へと戻る事になった。

    その頃には身体の異変も治まり、体重も元に戻って元気を取り戻していたそうだ。

    夏美曰く、以来彼女の中に眠っていた何かが目醒めてしまったのか?大人しく口数の少なかった筈の性格が激変し、麗子は夏美以上のオラオラ系に変身してしまったと云う。

    ∑(゚Д゚)

    そしてその後、頻繁に彼女の周りで不思議な出来事が起こり始めたのはまた別の話…

    【了】

     
  • 匿名

    とても良かったと思います。個人的には、『何で忘れていた。あの地獄のような、天国のような時間を』の部分、地獄のようなはいらないと思います。暗黒の世界よりも漆黒の闇に走った閃光に比重を置いてる筈だから。当時はみんなが耀いてたんですもんね。

     
  • ゼロサム

    霧がやけに濃い…車で仕事場へ向かう途中、
    俺は渋滞にはまり、
    死亡事故でもあったか…根元に花が生けられている電柱の真横で停まった。
    いつもは遅刻ギリギリで、この前をすっ飛ばして行くから気付きもしなかった。
    花の萎れ具合から見てそれほど、生けられて日は経っていないようだ。
    駅前からつづく坂…上り終える手前で右へ折れる120R…
    その僅か先、左からの道と交わるT字路がある。
    混み具合から見て、そこが原因とは思えない…
    更に数百メートル先にある片側3車線の国道で何かあった…と、考えるのが妥当か。
    道を変えるにしてもT字路まで出ないとなんともならん…
    頑として動かない車列…サイドは引かず、フットブレーキを踏みつけて待つことにする。
    こんな市街地の中心にまで…
    北関東の一地方都市と言えども、駅前通りまで濃い霧が覆うなんて珍しい事だ。
    生まれも育ちもずっと地元な俺でも、こんなことは今までの記憶にない。
    視界は十メートル程度…ナビシート越し…
    道路脇に立ち並ぶシャッターの閉じた店先も退色している…
    水墨画というより、和紙そのものの白さだな。

    煙る視界の中に人影が立った。
    後姿…黒の短髪を立て、でかいフードが付いた黒いダウンのコートを着た男。
    件の電柱、生けられた花の前。
    疲れたように落ちた肩。
    あの後姿、突然…現れたように思えたのだが…事故の関係者か。

    コーナー途中にある電柱…ここは昔から死亡事故が多い。
    今の若い奴は知っているかどうか…
    人食い電柱…
    昔から、ここで多くの街乗り…暴走族が命を散らしている。

    今では四輪など転がしてはいるが、
    俺も高校の時分は中古で買ったVFR400Rを大事に乗っていた。
    NC30ではなくNC24。
    それを駆って休日は山へ出掛けては
    九十九に折れるコーナーで膝を削りながらガンガン攻めまくっていた。
    反対に、活動時間は深夜帯、寝静まった街中を爆音鳴らして疾駆する街乗りの連中…
    暴走族…そいつらの間で流行っていた度胸試し…
    いや、そんな甘いもんじゃないな…
    狂気に駆られたバイク二台で競い合うレースがあった。

    『ガンラン』もしかすると『ランガン』だったか…

    銃口から撃ち出された弾丸のようにゴールを目指し、ノンストップで突っ走るだけの遊び。
    この坂を上りきり、T字路を直進して1kmほど行ったところに女子高がある。
    その校門前押しボタン式信号の横断歩道をスタートラインに見立て、
    駅前ロータリー内にある横断歩道をゴールとする。
    途中にある片側3車線の国道から…数箇所ある交差点の信号を
    全て『青』であると想定し…同ベクトルでスピードを競い争われるチキンレース。
    そのクライマックスが坂上の交差点とこの下り120Rだ。
    コーナー手前の交差点が青ならいいが、
    赤なら横合いから車が顔を出す可能性は深夜だろうとゼロではない。
    対向車だってもちろん来る。
    それでもハイスピードで120Rを抜けるなら、
    度胸一発、事故るのを覚悟で一度、対向車線…アウト側へ車体を振り出し
    そこからインへ絞りに行かねば、とても曲がれたものではない。
    死線を越えた先に存在するライン…
    魂が凍りつくギリギリのブレーキング、
    深く切り込み弧を描く、息を飲むほど美しいコーナーリング、
    余韻を残す優雅な立ち上がり、
    ロケットのような加速をみせ、小気味良くコーナーを脱出していく…
    最高のパフォーマンスをギャラリーに魅せつけてこそ、
    走り屋の醍醐味だ。

    掘り返される記憶…
    俺は一度だけ、若気の至りで…
    俺はそのレースをやった。

    深夜…ヘッドライトが灯す前方…色が付いた僅かな世界…
    ハイスピード故…更に狭まる視界…
    寒さと命をベッドにした重みで左手が…クラッチの繋ぎが甘くなる。
    凍えた右手がスロットルを絞ることを拒否したように動かない。
    なのに全身の細胞は狂喜している。魂が加速せよと命じてくる。
    脳内麻薬が意識を冒して恐怖心を奪い、
    集中力が凍てついた下界を遮断する。
    瞬間、車体がロケットにでもなったかのように加速しだした。
    スタートダッシュでの遅れを取り戻す。
    横並びで飛び込む片側三車線…信号は青…僥倖!
    人車一体となって直線を駆け抜ける。
    前方で輝く赤信号への恐怖心が嘘のように退いていく。
    対向車はない。歩道を走る新聞配達のバイク…
    僅かに途切れた集中力…
    五本目の交差点を渡りきる寸前、
    横道から猛スピードで出てきた車にケツを引っ掛けられ…暴れる車体…
    視界が急速で横へ流れていく。
    衝撃、ガードレールの袖で膝を砕かれた。
    だが、転倒だけは免れる。
    暴れる相棒を押さえ込みにかかった。
    奇跡のような操作…神域へ到達したバランス感覚…
    氷の粒が撒かれたように輝く路上…立て直した。
    バイクは動く、俺も大丈夫だ。
    まだ、走れる。
    離されたあいつのテールランプを無我夢中で追いかける。
    最後の120R…コンマ数秒遅れで飛び込む…
    外へ振ったが殺されている俺のライン…
    絶対的優位に立つあいつとのラインが交錯…行くな!
    妖霊星(よれぼし)の如き、赤いテールランプが眼前を横滑りしていく。
    生きて踏んだゴールライン。
    駅のトイレで便器と相撲を取りゲェゲェ吐いた。
    吐く物もなくなり胃液を搾り出す
    現実に立ち戻り…自分が如何に馬鹿な事をしたか…
    何を代償に何を得ようとしていたのか…
    手足の力が抜けて身動きすら侭ならぬ…
    割れ鐘を叩くような頭痛が幾度も襲う…
    そこに達成感はなく地獄があった。
    俺の相手は…あの絶対的優位に立っていたあいつは…
    最後の最後で…バランスを崩し…バイクと共に…
    あの電柱へ磔となって死んだ。

    そうだ…あの電柱…墓標(grave marker)とも呼ばれていた。
    コーナーを曲がりきれなかった奴が行き着く場所…
    骨砕き…肉挽き器…
    仏壇、祭壇、卒塔婆…

    目立ちたかった。
    ただ、それだけだった。
    あいつらが高校前をスタート地点に選んだのは…女子校生の注目を惹きたかったから…
    伝説だとか事実を過大に飾り、ただ…ナンパの手管に加えたかったから…
    族なんかよりも俺達の方が格好良い…
    族なんかより俺達の方が圧倒的に速い…
    街乗りの外見だけで粋がってる奴等との違いを見せつけてやると…
    お前らとはスピードレンジが違う…
    ガードレールの外は切立った崖…安全マージンのないギリギリの場所で磨いた技術…
    ブラインドのコーナーへ飛び込める度胸と覚悟…
    コースを理解し、攻略法を見つける洞察力…
    全て俺等が勝っている…
    口だけで何も出来ない奴等の正体を暴き出してやる。
    見てろよ…

    そして、レースが始まった。
    族と峠の走り屋による一発勝負の対抗戦…
    時間も場所も全てあちらの条件を飲んで…
    結果は族の完敗…
    俺は生き残って…あいつは死んだ。
    ギャラリーがそれを煽った。
    族の面子は完全に潰され…熱くなった奴等は再戦を望み…
    ギャラリーは熱狂した。
    以来、俺は街を流すことはやめた。
    直したバイクと共に山へ戻った。
    族の間で始まったレースは走り屋との対抗戦へ移行し、
    このレースを因とした大事故が幾度も起きた。
    関係の無い一般からも死傷者が出た。
    規制が入り、監視が強くなっても隠れてレースは続けられた。
    路面に速度抑制を図る処理がなされるまで…
    この電柱は幾人もの命を奪ってきた。

    渋滞はまだ続いている。
    思い出に浸っていたから気が付かなかった。
    電柱の前に立つ人間が五人に増えている。
    全員が電柱を見ていた。
    上半身裸で…腹にさらしを巻いている古風な奴もいる。
    デッキブラシみたいに金色の髪を立てているのもいる。
    純白の特攻服…大昔の族が好んで着ていた纏姿の奴もいる。
    おかしい…まだまだ…数が増えていく。
    目の前で…たなびく霧が人の形を取っていくみたいに…

    花の生けられた電柱…
    地面から1メートル50センチの位置…
    そこには13人の名前が刻まれている。
    正しくは黒の油性ペンでだが…
    あのレースで生きてゴールラインを駆け抜けた人間の名前…
    電柱は折れて何度か付け替えられているが…その度に、何者かの手によって書き込まれた。
    何度消されても、次の日には元通りとなっている。
    松葉杖をつき…電柱に俺の名を見つけたあの日…
    名前しか知らない…死んだ相手へ捧げた花束…愛飲していた煙草の銘柄…
    背に族の名がプリントされたB-3のフライトジャケット…
    ファイアパターンのCBX400F…

    ああ、そうか…
    彼等は…俺に背を向けて立つ男達は…全員…
    ここで散った名も残らぬ…
    あの電柱は勝者の物ではなかったのか…
    プライドが高くて命知らず
    刹那的に生きて
    刹那の中で輝いて死んだ
    族達の黙示録…

    前の車が動き出した。
    霧も薄れていっているみたいだ。
    俺は彼等を見ず走り出す。
    思い出した。
    レース直前…気つけに…二人で飲んだバーボンの味…
    ジャックダニエルのシングルバレル…
    生死を賭けた一戦が始まるというのに…
    ショットグラスの中味を一息で煽り…美味いと無邪気な笑顔をしてみせた。
    フライトジャケットを着込んだ後姿…
    男伊達…
    乾したグラスを凍えたアスファルトへ叩きつけ、割り砕く。

    何故、今まで忘れていた。
    安穏な生活に埋もれ…あの天国のような地獄のような時間を…
    何事にも変え難い…光輝いた時間を…
    今更…彼の死を悼むなど、
    俺に許されることじゃない。
    資格がない。

    会社へ着いた俺はトイレへ直行して個室へ篭り
    少し泣いた。

    おわり

     
  • 0.血苺

    友人とロスに行った時の事です。

    旅行自体は、楽しかったけどごく平凡なものでした。
    友人がとても慎重な子だったので、危なそうな場所にも行きませんでしたし。

    アナハイムのホテルはすごく可愛かったけれど、本場のネズミの国は、意外に乗物がチャチに見え、

    「こんな事なら、フロリダのネズミーワールドにすれば良かったね」

    なんて言い合った程…

    帰国の一日前の朝、ホテルのロビーに行くと、ソファの上に新聞が置いてありました。
    勿論英字新聞なので読めませんが、見出しに

    “TOKYO,GAS”

    とあり、思わず手に取りました。

    「…何だろう…東京ガスがなんか不祥事でもあったのかね?」

    などと言い合っていると、

    「May I help you?」

    近づいてきた黒人男性が、親切に記事を読んでくれました。

    「………」

    英語で読まれてもさっぱりわからなかった私たちは、引きつった笑いを浮かべてお礼を言いました。

    「あの…良かったらこれ、召し上がってください」

    友人が日本語で言い、何故か“海苔巻きあられ”を袋ごと手渡しました。

    「……」

    彼は受け取り、怪訝そうな顔をしながら立ち去っていきました。

    「…なんであられなんかあげるのよ」
    「だって、お礼しなきゃいけないと思って…」

    翌日…帰国した私たちは、日本中を震撼とさせるある事件のニュースに、腰を抜かすほど驚きました。

    …あの新聞の見出しは、その事だったのです。

    記事を読んでくれた彼は、きっと私たちを馬鹿な日本人だと思った事でしょう。

    1995年3月2*日の苦い思い出です。

     
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