【名犬】勇者ゴン、俺達はお前を忘れない/HN:ロビンM

やあロビンミッシェルだ。

俺の話に幾度となく登場する犬、マモル。だが今回はマモルの話では無く己の指名を全うした知られざる名犬「ゴン」の話をさせて貰う。

時は十年も前に遡る。

当時、10tダンプを生業としていた俺は毎日の様にとある採石場へと出入りしていた。

そこは過去に雨による地滑りで社員二十名が生き埋めになったり、これは噂だがヤク○が山の上に死体を埋めに来ているという話など、まぁどこの山にでもある様な曰く付き?の山だった。

その日俺は線路に引く栗石を運ぶ為夜勤に出ていた。全ての石を線路に引き終わったのは午前二時。次の日も朝六時から出勤だった為、そのまま採石場に戻りダンプで仮眠を取る事にした。

入り口の太いチェーンを解除し、二十四時間照明のついた比較的明るい詰所の横にダンプを着けて、エンジンを切った。

国道から離れた山の中にあるこの場所は耳がキーンとなるほど静かで、この広い採石場に自分一人しかいないという不安な気持ちと、先程も述べた曰くなどもあってか妙に心細くなる。いつもの事だから慣れてはいるがな。

一月中旬とあって瞬く間にヒーターの熱も冷め吐く息も白くなり、俺はキャビンの後ろに用意しておいた寝袋に潜り込んだ。

「 ちぇ、ビールでも買ってくりゃ良かったかな…」

いつもなら直ぐに夢の中へと行けるのだが、なぜかその日に限って中々寝付けなかった。

時折山から吹き下ろしてくる突風でキャビンがグラリと揺れる。

昨晩よく寝たからなのか一向に睡魔が襲って来る気配が無いので、仕方なく気分転換にスマホで音楽を聴きながら一服する事にした。

煙草を取りに運転席へ戻り、窓を開けて火をつける。

外気が一気に車内へと押し寄せ身震いする。キンと冷え切った空気。煙りを吐き出しながらすぐそばに聳え立っている高さ五十mは有るであろう岩壁を見上げた。

これがもし地滑りして来たら本当に一溜まりもないだろうな、と改めて実際に過去にあった惨劇が頭を過った。

そう言えば亡くなった人の中に同級生の父親もいた。休憩中、小屋で麻雀をしていた最中に小屋ごと土砂に流され生き埋めになったそうだ。そして数年経った今でも身体はまだ発見されていない。

無念だったろうな…

クゥん…

干渉に耽っていると車の足元から鳴き声がした。見るとこの採石場で飼われている元野良犬の「ゴン」がちょこんとお座りして俺を見上げていた。

「今日は何も持ってねぇんだ、すまんな」

クゥん…

いつもダンプを見ると寄ってきて弁当のオカズをねだるゴン。可愛い///

元は野良だが真っ白な紀州犬で、生還な顔立ちをしており、顔馴染みの無い部外者を見るとドスの効いた唸り声をあげる。深夜の採石泥棒から山を守る立派な番犬として皆に可愛がられているのだ。

ゴンは赤い舌をベロンと出しながら暫く俺を見上げていたが、何も貰えないと悟ったのか突然足早に奥の暗闇へと姿を消した。

あれから三十分くらい経っただろうか、寝袋の中で漸くうつらうつらし出した時に微かに窓の外からゴンの唸り声がした。

またかよと思い無視して寝ようとしたが、いつまで経ってもしつこく唸り続けるので渋々窓を開けて下を覗くと、さっきと同じ位置にゴンがお座りして此方を見上げていた。

「どうした?飯なら無いっつっただろ…が?!」

俺はゴンの横に転がっているその白い塊を見て言葉を呑んでしまった。

それはまだ所々に肉と髪の毛が付着している頭蓋骨だった。

言葉に詰まる俺を見て、ゴンは嬉しそうに尻尾を振りながらそれをカプリと咥え、また先程の暗闇へと走り去って行った。

何者かにキャビンのドアをドンドンと叩かれ目を醒ました俺は慌てて腕時計で時間を確認した。七時。起きる予定を三十分もオーバーしている。

慌てて車を降りて詰所に駆け込み、待ってくれている配車係に詫びを入れた。いつもは硝子越しに「おはよう!」と元気な笑顔で迎えてくれる配車係だが、今日は妙に沈んだ顔で挨拶もなく俺をジッと見つめてくる。

やっぱ怒ってる?俺はもう一度詫びを入れようと彼に声を掛けた。すると彼は首を振りながらこう言った。

「今朝、ゴンがプールの所でペッシャンコになって浮かんでいたんス。ロビンさん心当たりありませんか?」

そう言って彼に付いて行くと、詰所の裏手に変わり果てたゴンの姿があった。

俺は目の前が真っ暗になった。入り口のチェーンを開けて採石場に入ると自動的にまずその足洗いのプールを通らなければらならない。しかし昨晩そこを通った車は俺のダンプだけだ。

俺がゴンを轢いた?

マジかよ…

嘘だろ… 昨日と言ってもまだ数時間前の記憶が鮮明に蘇って来た。

俺が詰所の横でエンジンを切った後もゴンはまだ生きていた。はっきりと見た。二回も…そしてハッと俺は何故か今まで完全に忘れていた頭蓋骨の事を思い出した。

気付くと俺は配車係の彼を連れて、昨晩ゴンが消えて行った方向の林へと二人で分け入っていた。

ゴンが付けたのであろう狭く歩きにくい獣道をどんどん進むと、今は掘削のされていない裏手の開けた場所へ出た。

足元に白い物が落ちている。手に取ると何かの動物の骨のようだ。

配車係の彼は歩きながら言った。

「数年前にここで土砂崩れがあって沢山の人が生き埋めになったんです…」

知ってるよ (小声)

下には大きな池がありそこへ大量の土砂が流れ込んで半分程を埋めた状態で固まっていた。数年経っているとはいえ当時の事故のその凄まじさが伝わって来た。

数十m先でまた白い物が転がっている。俺達はまるで何かに誘導されるかの様にその骨を辿って行った。

すると高く盛り上がった山の上から微かだが風に乗って低い唸り声の様なものが聞こえた。見上げるとなんと死んだ筈のゴンがお座りして此方を見下ろしていた。

配車係の彼には聞こえていないのか見向きもせずに池の方へと向かって歩いている。俺は配車係の彼を呼び止めもせずにゴンがいる山の頂上を目指して走り出していた。

すると後ろから配車係の彼が追いかけて来て俺の作業着の襟を掴んで来た。声になってない掠れ声で「いっちゃ駄目です!あれ見て下さい!ロビンさんあれ見えてないんですか?!」

見ると先程ゴンが座っていた場所に俺と同じ採石場指定の作業着を来た人間が立っていた。

一、二、三…いや、十人以上いる。皆服は泥だらけで紫色の無表情な顔だ。ジッと俺達を見ている。

今までビュービュー吹いていた風の音が止み、俺の嫌いなカラスの群れがそいつらの上を旋回している。

何故かこれだけ距離があるにも拘らずはっきりと表情までもが見てとれる。無表情なのに物悲しいその表情…

それは生きてる人間の顔では無かった。

一度詰所に戻り上の人間に事情を話した所、半信半疑ではあったが山の作業員数人を連れて件の場所を調べに行ってくれた。情けないが俺達二人はそこへ怖くて行けなかったのが正直な所だ。

結果、ゴンが座っていた土砂の山の上辺りには大量の人骨が掘り起こされた状態だったそうだ。警察が言うには数人では効かない骨の量だったという。それは恐らく不明者の物で間違いないだろうという事だった。

ゴン…

お前は命尽きるその時まで山の為に働いていたんだな。人知れず毎日掘り起こしていたのだろう…お前はそれを俺に伝えたかったんだな?

俺は涙を堪えて手を合わせた。

ゴンを埋めた所に皆が買ってきた大量のドッグフードや、生前好物だった骨付き肉が添えられている。

「さようなら」

残念ながら俺に轢かれて星になってしまったゴンだがˉ̞̭ ( ›◡ु‹ ) ˄̻ ̊ 彼の偉業はこれからも後世へと語り継がれて行く事だろう。

ゴン、ありがとう。

そして、グッジョブ、ゴン!!

【了】

2015年03月16日(月) 04:22 ロビンM ◆eBcs6aYE
投稿広場より掲載

 
  • 匿名

    ホロッとさせられる話ですねぇ。

    あと蛇足ながら、指名→使命
    生還→精悍の間違いでは?

     

世にも奇妙な怖い話や都市伝説から不思議体験スピリチュアルまで…オカルト小説投稿/2chまとめサイト。1万3千話超えの厳選物語を貴方に★