エッシャーと描く手/HN:たゆたう

エッシャーと描く手/HN:たゆたう

※奇妙掲示板より移転

エッシャー

大学生になってみたものの、バイトやら何やらで忙しく、毎日は退屈で塗り潰したようであった。

そんな毎日を変えようと、小説を書いてみた。同世代の異性のなんてことない日常の話。

俺と同じように恋人もいなく、平凡な女の子。生い立ちも癖も容姿もなにもかも緻密に設定して、彼女の何も起こらない日常をたんたんと綴った。

服飾の専門学校に通っていて、彼氏のいない少し冷めた女の子。

これがなかなか面白く、飽きっぽい俺でも、日記のように彼女の行動を書くことができた。書けば書くほど、彼女は生き生きと輝き、まるで実在する人間のように感じた。

ある日、ジンクスというか法則を発見する。小説の中の彼女の日常にほんの少しの幸せを書き足すと、俺の日常にも幸せが訪れるという事を。それは、平凡な日常を揺るがす事のない、本当に他愛がないものだが。

小説を書き始めてまる二年がたった。突然、理想の彼女ができた。それはもう、唐突に。思い描いていた女性。高嶺の花。言い方はいろいろある。

彼女のおかげで毎日が輝き出した。それと同時に小説の彼女には、興味がなくなっていく……。筆からは遠ざかりつつあった。

「彼女にも恋人を作ってあげよう」

少しの罪悪感からか、幸せのおすそ分けかないまぜだったが、小説の彼女にも、完璧な彼氏を作ってあげた。

それから、小説は書かなくなるまでさほど時間はかからなかった。

最近、白い。なんというか日常の密度が薄い気がする……多分、思い過ごしだろう。今日は、彼女と遊園地に行く予定だ。

外に出ると、雪、雪、雪。東京は、もう半月続けて雪だ。

描く手

私は、服飾の専門学校に入ったものの、周りの才能に怖じけづき、ただ、淡々と通うだけとなっていた。当初の情熱も冷めつつある。

ふらりと立ち寄った本屋で立ち読みした「日記を書いて自分を変えよう!」 という本に影響されて、私も一つ書いてみたい衝動に駆られた。だが、自宅に帰り筆をとってみても、余りにも情けない自分の日記を書く気にはならなかった。

だから、思いきって、架空の男性の日常を日記形式の小説として書いてみた。生い立ちや癖などを緻密に描写した。もし、知らない人が読んだら、実在する男性のつまらない日記にしか見えないだろう。

平凡な大学生の男の子。大学に来たら何か変わると勘違いしていて、彼女もいなくてバイト三昧な毎日、と……。

最初は鬱憤晴らしに、多少の意地悪もした。だが、どうだろう、余りにも緻密に設定したので実在する人間に思えてしまった。

そして、いつの間にか、平凡な彼の日常に、僅かな幸せを書き足す私がいた。そうすると、不思議な事に、私の現実にもささやかな幸福が訪れるようになった気がしていた。

それから二年、私の黒歴史になるであろう日記は続けていた。そんなある日、面食いな私が卒倒しそうなくらい完璧な彼氏ができた。それも突然に。

毎日毎日彼氏との、夢のような時間が過ぎ、日記の彼からは次第に遠ざかりつつあった。

幸せの時間の間でふと、思いついた。

「日記の彼にも、素敵な彼女を授けてあげよう」

早速、日記の彼に彼の理想とする彼女をつくってあげた。

最近、思い出せない日や、時間の空白が広がっている気がするが、もともと忘れっぽい性格だからか。まあ、あまり気にしてもしょうがない。

窓の外を見ると、雪。東京だというのにもう、半月続けて大雪。

このままだと全て白くなってしまいそうだ。

 

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