怪異の夜/HN:オルフェーヴル

怪異の夜/HN:オルフェーヴル

◇ ありきたりな話

とっぷりと日が暮れて夜。

とある集合住宅の横を通りかかると、1階の端っこの部屋の窓から誰かがこちらを見ている。

部屋の明かりもつけないで何をしているのだろうと訝しんだのだが、よく考えれば、その部屋は住人が出たばかりの空室だった。

現に、窓には『空室』の紙が貼ってある。

まるで立体ホログラフィのような、リアリティを伴わないその人は、凄い目でこちらを見ている気もするが、気付かないふりをしよう。

何、こんなのは、巷では良くある事だ。

その部屋がどうして空室になったかを、チラと考えたが、それこそ、ありふれた話になりそうなので、深く追求はしない事にした。

◇ 暗い道

夜とはいえ、いつもより、なんか暗いな、って思ったんだよ。いや、ウチの近くの遊歩道なんだけどね。

なんだろう、って見回したら、街灯の電気が消えてる。要するに球切れだな。珍しい事もあるよな。街灯は誰かがメンテナンスしてくれるもの、滅多に消えたりしない、って思い込んでたよ。

同時期に中を変えたんだと思うんだよ。だから3か所ほど切れてる。ただでさえ、暗い道なのに、心底暗い。

この道、ウオーキングやジョギングの人が夜に結構いるんだよな。普段から寂しいのに。女性なんかは怖くないのかな。

でも、その日は珍しく、誰ともすれ違わなかったんだ。だから余計に心細いんだ。

そうしたら、向こうに自転車のライトが見えた。ああ、人が来た、って安心したよ。

ぐんぐんぐんぐん、細い道とは思えない速度で自転車は来る。何を急いでるんだろう、って見てた。

すれ違ったよ、光と。自転車じゃなかった。ただの光の玉だ。それと同時に腐臭を伴う風が、自分の横を駆け抜けた。

後の事はよく覚えてないよ。ただ闇雲に叫びながら、明るい通りを目指して走ったんだ。はたから見ると危ない人だったろうけど、構うもんか。

そんなだから、あの道はあんまり通りたくない。だからさ、夜道を行く時は、なるべく明るい方を通った方がいいよ。

そう言って、その人は、飲みかけの酒を、ぐっ、と干した。

◇ 夜歩く

もうひとつ夜道の話。

とある人が夜道を歩いていたら、向こうから、長い髪とスカートからみて、女性とおぼしきシルエットが近付いてきた。

随分と小柄だ、夜更けなのに子供だろうか。

そう思っているところで、段々と違和感を感じてきた。

小さな人間だ、大人の縮尺を変えた、精巧な人形のような。

それが、近付いてきて、すれ違いざまにこちらを見て、にや、と笑った。

思わず立ちすくんだ横を、彼女は通り過ぎていった。

恐る恐る振り返ると、背後はただの闇。

後の事はただ恐ろしくて、覚えていない。

もう、あの道は夜、通らない。

そんな話をする人がいた。

「人形だったりして」

話の後に冗談めいて返したら、

「今思えば、そうかもしれない、あの肌、陶器のように無機質だったよ」

その人は、嫌そうに、そう呟いた。

◇ 真夜中の祭り

真夜中に微かな音が聞こえる。なんだろう、と窓の遠くに耳を澄ます。

太鼓、民謡、人のざわめき……祭り囃子か。要するに『踊りの音』だ。

しかし、今は真夜中。踊る人間などいないはず。祭りなどの予定も無いので、踊りの練習とも考えがたい。田舎町なので夜が早い、辺りはしんと寝静まっている。

つまりは、そっとしとけ、って事だろう。仕方ない、私も眠ろう。

夜の闇の中、踊りは続く。このまま、朝まで終わらないのだろうか。

そう思いながら、布団に潜り込んだ。彼岸の入りの、夜中の事だ。

 

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