消えない傷/HN:禍刻

消えない傷/HN:禍刻

目を開くと、視界の大半を天井が占める。俺はベッドに仰向けになっている、もう朝だ。

ふと、視界の右端に何か映り、顔をそちらに向けた。

(…は?)

そこには何と言えばよいか、【何か】がいた。

身長は成人の膝丈程しかなく、顔は真っ黒と言うより、何故か自分でも解らないが「色が無い」と、そう感じた。

とにかくこの世のものでは決してない。目があるだろう場所には白く光る二つの小さな点のみ。頭にはそいつの身長の半分程もある大きな三角帽を深々と被っている。

白い手袋を嵌めた手には、2mはあろうかという包丁のような巨大な刃物が握られていた。

“奴“を認識して数秒も経たないうちに、そいつはその巨大な刃物を俺の腹に宛がい、前後に動かし始めた。

痛い…重い…苦しい…

抵抗しようとするが、金縛りのように体が全く動かない。しかし声はなんとか出るようだ。

「やめろ…っ」

俺は必死に声を絞り出した。そんな事はお構い無しに、奴は尚も俺の腹をかっ捌こうとしている。

巨大な重い刃が前後する度に、腹の皮膚や肉は面白いくらいにスッと裂けて、傷口に刃が減り込む。

痛てぇ痛てぇ痛てぇ痛てぇ!!!!

「やめろっ…」

何度か訴えてもぴくりとも反応を示さない奴に、俺は恐怖より怒りを覚えた。

「…やめろ…っつってんだろぉがぁあ!!!」

思い切り奴に向かって蹴りを入れた。右足を出した反動で上体が勢いよく起き上がる。

…と思った瞬間、俺の視界に映ったのは、ベッドから蹴り飛ばされ勢いよく飛んでいく掛け布団。もう奴は居なかった。

(…夢?)

いやしかし…、あのリアルな刃物の重み、刃が肉に食い込むあの何とも言えない異物感、何より腹に走ったあの激痛は、とても夢だとは信じ難い。

俺はシャツをめくって腹を見てみた。はっきり覚えている。丁度、刃を当てられていたその部分に、6cm程の切り傷がケロイド状になったようなミミズ腫れがあった。

その出来事から、もう既に十数年。未だ腹に残されたミミズ腫れは消えていない。

 

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