鬼のお礼/HN:河上龍泉

鬼のお礼/HN:河上龍泉

この話を聞いたとき、私は鬼というものが本当にいるんだなあと思った。

本条さんはある夜、急に喉が乾いて目を覚ました。すると廊下の一番奥に誰かが座っているのが見えた。

大きな影があぐらをかいている。からだは人間の二倍くらい、頭には大きな角が二本見て取れた。

月明かりが差し込むと鬼だということがわかった。だが不思議と怖くはない。

鬼は「おじゃまさせていただいております」と言うようにお辞儀をした。

それから毎晩、鬼は夜目を覚ますたび廊下の鬼に座っている。ただその鬼に目をやると会釈をするを繰り返していた。

そしてある日の夜、いつものように目を覚ますと廊下の奥に鬼がいる。すると鬼はいつもとは違って、立っていた。

鬼は背が高くてそのまま立てば天井に頭がぶつかってしまうからか中腰でこう言った。

「今までありがとうございました。体が癒えるまでいるつもりでしたのにここは居心地がよくてずいぶん長居してしまいました。それではさようなら」

そう言ったあと霞のように消えた。

それから鬼は現れなくなったが、翌日鬼が座っていたあの廊下の突き当たりに葉っぱにくるまれた山菜や木の実がたくさん置かれていた。

私にしてみればべつにいいことをした気ではないのだが、たぶん鬼からしたら休み場所をもらったお礼のつもりなんだろうと思う。

夜、目を覚ましてあの廊下を見ても暗い廊下の壁しか見えないのを少し淋しく思うのは、私が幾ばくかでもあの鬼に何がしかの親近感に似たものを持っていたからかもしれない。

 

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