【心霊】老婆/HN:0.血苺

老婆/HN:0.血苺

暑さが去り、涼しくなってくる今頃の季節になると、私は銭湯に良く行きます。

ずっと贔屓にして来た所は、どうも常連のおばさま方が傍若無人に振る舞い、感じが悪いので、先日はちょっと離れた銭湯に行きました。

そこは私が子どもの頃に良く行っていた銭湯で、数年前に内装工事をしていて綺麗な上に、割とすいているのが魅力でした。

その日も遅めの時間だった為か、入浴しているうちに私一人になったのです。一人になってしまうと落ち着かないという人も居ますが、私は寧ろ“貸切気分”で、のんびりと寛いでいました。

その銭湯は、奥に湯船が有るので、湯に浸かっていると、洗い場やガラス越しに脱衣所が見渡せます。私はその時、ジェットバスの激しい水流に身を任せていました。

ふと、中央の洗い場の鏡に目が止まりました。何かが動いたからです。

「!!」

私はぞくっとしました。いつの間にか一人の老婆が、壁際の洗い場に座り、身体を洗っていたのです。

視力が弱いため、はっきりは見えませんが、やせ細った白髪の老婆であるのは分かりました。

一体、いつ入って来たのだろう…私は訝しみました。ずっと脱衣所の方を向いていたのに、老婆が服を脱いでいるのは見えませんでした。勿論、ガラス戸が開いた気配も無かったのです。

湯船から出るのは、ちょっと勇気が入りました。私が陣取っていた洗い場は、老婆の並びだったからです。

でも、洗い場に戻って横顔を見たら気が付きました。その老婆は、銭湯の主人の母親だったのです。

湯船の陰にある、裏方に通じるドアから入って来たのでしょう。そういえば私が子どもの頃に来ていた時も、彼女は良く大浴場に浸かりに来ていました。

私はホッとして、挨拶をしようと思い老婆の方を向きました。でも彼女は一心に身体を洗っていて、見向きもしません。

躊躇いながら彼女を見るうち、何だか又、薄ら寒くなって来ました。失礼ながら、彼女の皮膚がゾッとするほど色が悪いのです。

どす黒い…というより、紫がかっているみたいな…何だか、死体のようだと思ってしまいました。

まあ、彼女も相当のお歳の筈だし、ひょっとしたら病気でもされていたのかもしれない…いずれにしても、きっと私の事なんか覚えてないだろう!…そう思い、声は掛けませんでした。

そうして私は、慌ただしく身体を洗ってさっさと出てきてしまいました。私が帰るまで、新しい客は一人も来ませんでした。

後日、母と電話で話していた時、私はふと、あの老婆の事を思い出して言いました。

「あのさ、○○湯のお婆ちゃん、覚えてる?」

すると、母は言いました。

「覚えてるよ。お葬式に行ったもん…もう、5年は経つっけねえ…」

 
  • 道化師

    おばあさんお風呂が好きだったんだろうな~

    それともお客さんの入りが気になって仕方無かったのかな?

     
  • 0.血苺

    奇妙さんの方に投稿したものだったのですが、こちらにも載せていただき
    更に温かな感想までいただいて、とても嬉しく思いました。

    本当にありがとうございます。

     
  • 河上龍泉

    血苺さんにも大変なご迷惑をかけました。
    すみません、謝ります。

    河上龍泉

     
  • 河上龍泉

    面白さはないが、
    いい流れではある。

    ただ、何回も言うが、臨場感の必要なところにはゾクッとさせる臨場感を持たせる。

    輪郭だけが私の中であるだけではっきり怖さはなかったし、怪談というところのおぞましさもなかった。

    何かちょっとでもバアッと読者を引きつけるような箇所があるとグッド。
    頑張って下さい。

     
  • ピスタチオ

    臨場感にも何も、筆者さんが、のんびりまったり、入浴中に、なんとなく目に入った光景なのですから。そして、そのときは、老婆が亡くなっている人だとは知らなかった訳だから、鬼気迫る表現をすれば、逆に変でしょ。

    河上さん、自分の作品がよく、リアリティーに欠けると批判されるからって、全てにおいてそれが当てはまる訳ではありませんよ。

    この作品は、突然気配もなく現れた老婆に戸惑いながらも、相手の方の肌の色や所作などに違和感を覚えながらも、ご高齢だし、病気かもしれない、と配慮し声をかけなかった…という筆者さんの優しさが伺え、余韻を残した終わり方に、しみじみとしたものを感じました。老婆は、成仏できずに現世をさまよっているのではなく、そっと大好きなお風呂に入りに来ているんだな…と目頭が熱くなるものを感じました。

     
  • りんごあめ

    温泉なんかでも1人になると怖いですね。
    背中がゾクッとします(>_<)

    私はこの話、ちょっとせつない感じもしました…

     
  • おに

    ほのぼの系かと安心したところをやられた。
    落ちも良かった。これはポチだな

     

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