【怪異】餃子語り-ギョウザガタリ-/HN:こげ

餃子語り-ギョウザガタリ-/HN:こげ


栃木県の那須塩原市周辺に点在します心霊スポットを探検した帰り道での事です。
明け方まで心霊スポットをいろいろと見て回ったのですが…
収穫ゼロ…出ない出ない出なーい!!で終わりました。
まあ…そんな頻繁に大物が出るわけ無いし、仕方が無いねと諦めまして
早朝から開いてる温泉に入って、それから仮眠を取って、
起きたら『お菓子の城』と『千本松牧場』へ行って観光気分を味わい、
家族や友人へお土産を買ったら急いで東北道に乗って上り方向…東京方面へ向かいました。
午前十一時、豊臣秀吉の中国大返しもびっくりな大急ぎの強行軍です。
何故、こんな早い時間にジンギスカン1時間食べ放題もせずに
帰らなければならないのかと申しますと、
お昼は宇都宮で摂るからなのです!
「貴様等!宇都宮と言えばなんだ!?」
『餃子!餃子!餃子!!』×4
「貴様らが心から欲しているのもはなんだ!?」
『餃子!餃子!餃子!!』×4
「貴様等は餃子を愛しているか!?ゲロ吐くまでたらふく食ってみたいかぁ!?」
『絶対餃子!命を懸けて!ガンホー!ガンホー!ガンホー!!』×4
テンションパないです!大張り切りですよ私達!
この遠征が決まった時、心霊スポットの選定よりも餃子屋さんの方に力が入りましたもん!
宇都宮市内にあります中華料理店、ラーメン屋さん、餃子屋さんをネットで片っ端から検索…
そしてついに来ました餃子の聖地『宇都宮』!!
駅前の餃子の像を拝んで後、
まず向かうは昔から一番有名なあのお店!もちろん本店ですよ!
続けて美味しそうな気配が画面から溢れるあのお店へ!
返す刀で変った具材を使った餃子を饗するあのお店へ!
さすが餃子の街『宇都宮』です!
『鍋貼』『煎餃』から日本独特のものへと昇華した
昔ながらの焼き餃子に、韮や紫蘇、柚子、キムチ等が入った変わり餃子、
日本では主流じゃない水餃(茹で餃子)、湯餃(水餃子)、蒸し餃子に揚げ餃子とか、
目移りしちゃうくらいたくさんの餃子がありました。
「うぷ」
美味しくて…つい、食べ過ぎて…胃袋を越えて喉くらいまで餃子が詰まってます。
なんて言いうか…自分が餃子になっちゃったみたい…
変な脂汗出てますよ…先に席を立った皆の後を追いかけ
会計を抜けてお店の外へ出ますと
「お前、ここから運転しろ」
「はぁ!?」
顔を油でギタギタにした心霊スポット探検チームのリーダーA君が車の鍵を渡してきました。


「俺達は酒を飲んでしまった」
「俺も!」「俺も!」「俺も!」
A君はじめ男子全員が顔赤いし!B君もC君もD君も!!
これみよがしにぷはぁ~っと息を吹きかけてきました。
「お、お酒臭い!!」
い、いつの間にお酒を注文して飲んだのですか、あなた達!?
「いつまでも我等がノンアルコールビールを飲んでると思ったうぬが不覚よ!!」
「ぐぬぬぬぬぬ」
やられました!謀られました!騙されました!裏切られました!!
こ、この松永久秀!荒木村重!小早川秀秋!明智光秀!!
「奢ってやったのだから運転くらいしろ」
全員が私に向けて
カサンドラ監獄の牢内で浮かべたトキそっくりの微笑みをして見せたじゃありませんか!?
「ぐぬぬぬぬぬ!」
私だって悪いと思うから黄酒(老酒・紹興酒)も白酒(蒸留酒・焼酎)も果酒も薬酒も遠慮したのに!
怒りのあまり、カイオウさんみたいに魔闘気を会得しそうです!
「高速道路は使わなくて良いから運転しろ」
「ぐぬぬぬぬぬ…」
心霊スポット探検で私が運転することは無く…確かに心苦しく思ってました。
皆に酒気帯び運転なんてさせられませんし…
「仕方がありませんね」
キーを受け取って運転席へ乗り込みました。
皆は最初だけ、ハンドルを握る私をからかって笑ってたりしてたのですが…
国道4号バイパスに出た途端、
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」
「ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ」
「ヒュゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」
「ズビビビビビビビビビビビビビ」
男子全員が寝ましたよ!?それも、ジョジョの背景に現れる効果音みたいな大いびきかいて!!
私一人だけ起きさせといて、どういう了見ですか!?
あんたら全員鬼ですか!?
私にとってカーナビなど無いに等しい存在なのに後悔しますよ!?
そして、最悪なことに走り出していくらも経たない内に
暗雲がみるみる立ち込め空を覆って…ものすごい雷雨となりました。
そこで残念なお知らせがあります。
ええと、あの…国道四号バイパスに乗ったのは良いのですが…
上り方向を走っていると思ったら…
真逆でした。
現在…下り方向
黒磯、那須塩原方面へ向かって逆走中です。午前中にいたところへ向かってます。
「どうしよう?」
助手席で寝てるA君を起こそうと、何度も呼びかけたのですが…起きる気配ありません。
路肩にでも停まって皆を起こすか、地図で確認するしかないとは思ったのですが
車線が二車線以上あって、雷雨の中なのに他の車がすごいスピードで
目まぐるしく車線変更しながら追いつ追い越し走ってるし…追突されちゃうかもって…思うと
怖くて停まることが出来ませんでした。
だって、この雷雨の中…一生懸命に時速60kmを保持して走ってるのに
後ろからパッシングしたり蛇行して煽ったりするんですよ!?
栃木県民は鬼ですか!?それとも栃木県民は自動車教習所代わりに、
あの『東堂塾』へ入ってマニアックなドラテクを身につけているとでも言うんですか!?
私からすれば全員、命知らずのスピード狂だらけですよ!ワイルドスピードですよ!
そんなことしてる間に、鬼怒川渡っちゃったじゃないですか!?
高根沢町に入っちゃいましたよ!?
あの、赤ちゃんの夜泣き、かんのむしに効果がある宇津救命丸で有名な高根沢です。
あと御料牧場があります。中の人が全て公務員とか言われている…
正直、こんな車線がたくさんの道路をたくさんの車が走ってる中、私にUターンなんて無理です。
どこかでバイパスを下りて…あ、下り口発見!下りちゃえ!!
下りたのは良いのですが…
「ここはどこですか?」
全然、知らない地名ばっかりが案内標識に載ってます…
カーナビは何か言ってますけど私には判らない言語で喋ってます。
「ぐぬぬぬぬぬ」
川沿いに進んで再び宇都宮市に戻れる道を探して…再び4号バイパスに乗る…
それしか無いでしょう!
私、御英断ですよ!
「てことで右折!!」
その選択が正しいのかどうか分かりませんが…今の私にはそれが最善と思える策でした。
右折してから雷雨はますます激しさを増したみたいです。
辺りはいよいよ夕方よりも暗くなって視界が悪くなり稲光と雷鳴が止むこと無しですよ。
怖くて泣いちゃいそうです。
皆は寝てるし…怖いの誤魔化す為に…歌っちゃお♪
「らんららららん らんららららん らんららららんら~ん♪」
 あなたが ほほえみぃを 少し分けってくれて♪
 私が ひとっつぶ~のぉ 涙をぉかえしたぁら♪
 そのとっきぃがふったり~のぉ たっびのはじっまり~♪」
すぐ真上でピカッって光った途端にドッシャンガラガラ!ドッシャンガラガラ…
「ひぃぃいいいいいいいいいいい!!」
さすが『雷都』…宇都宮市は別名『雷都』と呼ばれてとても雷雨が多い場所なんです。
「ひっとりっじゃないって~ららららららっらぁ~♪
 すってきなことっね~ららららららっらぁ~♪
 あなたのかたごしぃにぃ 草原もかがやぁく~♪
 ふたりで行くって~ららららららっらぁ~♪
 すってきなことっね~ららららららっらぁ~♪
 いぃつぅまでぇ~もぉ どぉこぉまでぇ~も~♪」
私が住んでるところの三倍激しいですよ雷雨…明日から赤く塗って角付けてヨシ!
「怖いよ…車に雷が落ちたりしないかな?」
涙目になっても歌う事は止めずに堤防の上を走らせてますと
雨の激しさにワイパーを最速にしても全然雨水を掻き出してくれないし…
滝の様にフロントガラスを雨水が流れていきます。
う~全然ダメじゃん…
「あなたが 雨のまぁちぃ ふりかえってくれぇて~♪
 私がこばっしりぃにぃ 傘を差しかけたぁら♪
 そのとっきぃがふったり~のぉ たぁびのはじっまり~♪」
高速道路以外にも怖いところがたくさんあるんですね道路って…
ライトを点灯していても雨が激しくてあんまり役に立ってないです。
仕方なく、もっとスピードを落として走ることにしました。
時速20Km前後…自転車並みに…幾分、前が見やすくなった気がします。
「ひっとりっじゃないって~ららららららっらぁ~♪
 すってきなことっね~ららららららっらぁ~♪
 あなたの濡れたほぉほ 私の燃えるほぉほぉ~♪
 ふたりで行くって~ららららららっらぁ~♪
 すってきなことっね~ららららららっらぁ~♪
 いぃつぅまでぇ~もぉ どぉこぉまでぇ~も~♪」
雷雨は弱まる気配無し…対向車も暫く見てません…
この道路を走っているのは私達の車だけみたいです。
あ、
堤防の上から道が左に逸れて下り坂になっているのが見えてきました。
それと…道の左側を傘も差さずに雨の中、坂道をこちらへ向かって歩いてくる
人影があるじゃないですか…
急の夕立で、逃げてきた農家の方でしょうか?
よく見れば二人連れ…小さな子供と手を繋いでる…母子の様です。
こんな木立も民家も無い場所を歩いてくるなんて…
まさに自殺行為じゃないですか!?
落雷にでも遭ったら死んじゃいますよ!
私は二人の真横まで行って車を停めました。
あと二人くらい…お子さんはお母さんの膝に乗ってもらうことにすれば
うん、絶対に乗れるよ!!
二人は目の前で停まった車を何事かという表情で見てます。
手拭を姉さん被りにしてもんぺを穿いたご婦人と、例えようも無いくらい粗末な服を着た女の子…
この辺りでは当たり前な農作業の服なのでしょうか。
傘すら差してないので二人ともずぶ濡れもいいところです。
女性は前髪が顔の左半分を隠すみたいに垂れてて
ぎょろりとした大きな右目、猛禽の嘴みたいに細く高い鼻梁…頬骨が張って…薄い唇…。
もしかするとお母さんではなくって、お祖母ちゃんかも…
そのご婦人が助手席側のサイドウインドウに顔を押し付けるようにして迫ってきました。
「?」
ぐーすか鼾をかいて寝てるA君…濡れちゃうけどごめんなさい。
「今、窓開けますね」
私はずぶ濡れの中年女性と話をしようと助手席側のガラスを下げるべく、
ドアの操作ボタンに手を伸ばしたその時でした。
「窓を開けるな!」
後部座席からB君の怒声が浴びせかけられたじゃないですか!?
「え、なんでですか!?」
慌てて後ろを振り返ると、いつの間に目を醒ましたのかB君が起き上がっていて
顔が引き攣ってます。激しく怒ってらっしゃいます?
私は窓の開閉ボタンから慌てて指を放しました。
「天地真理の『ひとりじゃないの』を歌ってるヤツがいるから起きてみればこのザマか…
 そいつは生きてねぇから!絶対に中へ入れるんじゃ無いぞ!!」
天地真理さん?これってエ●ァQでマリちゃんが歌ってた…
「は、はわわわわわわ!?」
B君の大声で他のみんなが起きてきました。
『な、なんだ!?どうした!?』
私を見て、B君を見て、窓の外を見て、瞬時に事情を察したA君達…声を揃えて私に命令します。
『車を出せ!急いで車を出せ!!』×3
私、大パニック!
親子がずぶ濡れだから乗せてあげようとしたら生きてなくて窓開けないで車出せ!?
「え、ええと…」
「見ろ!中に入ってこようとしてるぞ!急いで車を出せ!!」
それで助手席の窓側を見直すと…シートを一番後ろまでずらした上に
背もたれまで倒して逃れようとするA君の向こうで
姉さん被りの中年女性が…ガラスなんて無いかのように
鼻先から目…ガラスを通り越して車内へ侵入を図ってるところでした。
「T-1000!?ロバート・パトリックさん!?」
本当に生きてる人じゃありませんでした…脱出王ハリー・フーディーニだってあんなの無理!
「来ちゃだめ!来ちゃだめ!来ちゃだめ!来ちゃだめえ!!」
こめかみの辺りまで顔が窓を透過してこっち側へ…
でも、そこから先には進めないみたい…
大きな目をギョロギョロさせて…
「なぜ?」
中年女性は凄い怒りの表情をして…めくれあがった唇…剥き出しになった乱杭歯…
い、威嚇されちゃってます私…こわ…
「ダメダメダメダメダメダメダメダメ!!」
『叫んでないでアクセル踏め!』×4
「ごめんなさい!」
皆に怒鳴られて私はアクセルを目一杯踏み込みました!
男性四人も乗っててあんまり加速良くないけど…
それでも女性は助手席の窓から弾き飛ばされて、私からは見えなくなりました。
「子供と手を繋いだまま飛ばされていったぞ!」
「追いかけてくるかも知れん!このまま突っ走れ!」
「ガッテン承知!!」
ああいう手合いは油断できません。
気がつけば隣にとかざらですもん、安心なんて出来ないです!
ハンドルを強く握りしめアクセルを踏んで加速加速加速!!
夢中で車を走らせました。ワイパーなんか利かなくたって!!
「いったい何考えてるんだ!?あんな戦中の古い悪霊を車に乗せようだなんて!?」
B君が後部座席から怒鳴ってます。
「全然、分かんなかったよ!
 もんぺなんて栃木じゃ現役で標準の農作業着として使われてるのかと思ったし!」
「あいつらの背中を見ていないのか!?肉がごっそり無くなって骨だけになってたのを!!」
「見てない!そんなの見てないよ!!」
そんな怖いの見てたら車を置いて雨の中一人で逃げましたよ絶対!
「まったく…あの憎しみと怨念の塊だけになった存在に気がつかないなんて…」
「久しぶりに大物見たな~いやぁ、ヤバかった」
「凡百の人間が生ったもんじゃないなアレ…俺は見た瞬間に分かったけどな!」
自慢!?それって今、私に自慢してる訳!?
「あんだけヤヴァいのにまるで気付かないって…なんかおかしくね!?」
交差点の信号が赤で停まるまでの間中、私はずっとA君達の文句を後頭部に受け続けました。
言い返せないし…言い返せる余地全然ないし…
でも…だって私、生きてる人だと思ったんだもん!
雨に濡れてて可愛そうだって思ったんだもん!
栃木の農家の方はいまだにもんぺ着用で農作業に励んでいると思ったんだもん!

幸い、母子の悪霊は…
お昼に食べた餃子の大蒜成分…
大蒜には悪魔や悪霊を退ける力があると昔から言われてて…
車内に充満していたほとんど結界と呼べるくらい濃厚な大蒜臭のお陰で
あの悪霊…死霊は中へ入り込むことが出来なかったみたいです。
この事件があってから、
心霊スポット探検で遠出する際、
私が運転を強いられる事は一切、無くなりました。

(おしまい)

2013年10月30日(水) 01:14
こげ ◆.s16F9bY
投稿広場より掲載

 
  • にゃんこ

    **こげさん**

    本採用おめでとうございますぅ(*^▽^)/

    餃子に触発されて、昨日は餃子皮にアップル甘煮包んで揚げてみました(笑)なんちゃってアップルパイです。ではおかずシリーズまた楽しみにしてますね。

     

世にも奇妙な怖い話や都市伝説から不思議体験スピリチュアルまで…オカルト小説投稿/2chまとめサイト。1万3千話超えの厳選物語を貴方に★