【不思議】細腕の助け/HN:やまっち妻

細腕の助け/HN:やまっち妻

私は実家で、母・姉と三人暮らしでした。人は三人いると政党ができるといいますが、私は野党でした。

与党二人は、K式塾経営の母と、「就職にドクターストップがかかってる」割にしょっちゅう私をボコにする、えらく元気のいい病人の姉(美人)。

私はその頃七年近く勤めた会社を訳あって辞め、次がなかなか決まらず、母からは三時間説教、姉からは「ごくつぶし!」と殴る蹴るの暴行をうける日々。

そんな与党側は、神社仏閣占いに霊能者マニアでした。私は見ちゃう方なので、こんな気味ワル体質欲しけりゃやるよ、と心の中で思っていました。

ある日母達が「今日は神主の山地先生(仮名)のところに行くのでアンタも来なさい」「すごい能力なの」…へーへ、また変なの見つけたのね。「S大社のパーティーで同席で」…優雅ね。

「アンタみたいな家族がいると恥だから黙ってたのに」…悪かったね。「『もう1人下にいるでしょ。長い髪でエキゾチックな顔で、半パンはいて自転車乗り回してる妹さん』っていうの」………絶句←あんたらが教えたんちゃうか? なんやかやで行くことに。

山地先生と初めて会った時。先生によると、姉は「どうしようもないクズ妹なんですよ」と、私をビンタして自慢気に笑い、山地先生は「妹さんに暴力を振るうのは言語道断です!」と姉を叱りつけたそうです。その時の記憶はさっぱりありません。姉の暴力は日常のヒトコマでしたから。

とりあえず御神前に通されたので、二礼二拍手一拝をし、その後はどういうわけか妖怪や爬虫類の話で先生と私は盛り上がりました。帰りには母と姉にえらく嫌味を言われましたが…曰く霊的な話や人生相談を全然していなかったとか。

その数日後、先生から電話。私を弟子にしたいと。暴力と説教の中(さすがに止まったけど)で小さくなっていた私になんで? 訊くと

「あなたは来てまっすぐ拝礼しました。そういう人は少ない。それから姿勢がいい。声も童女みたいやし。かむながらの道が向きます」

…私は泣いていたと思います。そういう風に認めてくださる人がいたことに。

そこからO府から隣県のH県まで週に一、二回、片道三時間懸けて通いましたよ。で、神式の勉強はほんの少し、大抵居酒屋で妖怪や日本神話の話をして、そうして何度か会う内、家で眠っていると山地先生の夢ばかり見るように。

先生は決して美男子でなく、色黒でインド人顔で、183cm130kgで、ハクション大○王激似なのですが、私はなぜだか、こんな可愛い人がいるだろうか、と感じるようになっていたのです。

ある日神式講義のあとタコヤキ屋で、先生が言いました。

「ねえ。僕はあなたが大好きなんです。そして、僕は…精力が強いんですっ!」

嬉しさと、「何考えてるんや、このジジイ」という気持ちがどっちも来ました。

「それ、母にも言ってくださいます?」

数日後山地先生は「お嬢さんをください」と母に言いました。母は「先生が?!百人力ですわ!」と大喜び。私も三十路も半ばで、大好きな人の妻になれる幸せに舞い上がりそうでした。

ところがそれから3日くらいして母が急に「山地との結婚はありえません!」と言いたれ始めました。「え?なんで」困惑して訊くと、「あの人はバツイチよ」

「知ってるよ、お母さんにもいうとったやないけ。元妻さんも、とっくに再婚してるし」

「せやけど前の奥様と山地は男と女の関係やったんやで」

「あの年でそんな話の一つもない方がキモいわ。それに男と男やった方がもっとヤバイわ」

そこに姉が「あんた、まだまだ高く売れるわよ。もっといい品見つけなさい」。直感で「犯人はコイツか」と、思いました。

…逃げよう!夜カバンを持つと、ヘンに軽い。開けると財布、免許証(ペーパーだけど身分証に便利)、保険証、家の鍵、携帯電話の抜き取られた骨抜きカバン。

その後私は四六時中監視下に置かれました。「お金ちょーだい」と言っても駄目。愚かなことに私はOL時代の給料を、交通費と僅かな小遣いを除き、全て母に預けていたのです。私のなのに当然くれない。財布もない、一文無し。

けれど蛇の道は蛇。私は時折、寝起きの遅い母と姉を見計らい彼女らの財布からバレない程度のお金(三百円くらい)、を抜き、山地先生に、公衆電話で連絡を取っていました。

そして、ある日ついに来るべき日が来ました。姉がお出かけ。母は婦人会の文書を届けにA婦人の家に。母曰く「すぐ帰ってくるから!」…それ無理。あのお喋りオバサンは、人を帰らせませんよ。

大急ぎで、置き去りの母のカバンを物色、二万get。損失は私の貯金で補填してネ!時間ギリギリ、バス停へ!やがて最寄りの快速も停まる駅に着きましたが、所詮は田舎、人目に着く可能性も。私は一つ先の駅に小走りで裏道を選んで向かいました。

さて、着いたその場所。我が市随一の有名人、平安京の陰陽師A氏(母親がキツネとか、ものすげえ人物)を、輩出したり、自衛隊と遊廓で有名(←合理的)だったり、なかなか香ばしい町です。

さて、一旦逃走に成功すると急に守りとか精神的チキンエキスが。

「大丈夫かなー、先生が受け入れてくれなかったら?」

すると、急にふんわりと優しい女性の空気に包まれました。…だめねえ、…これじゃムリ、そんなに臆病じゃ…。そんな声が聞こえるような。けれども嫌がらせではなく、かえって決意を促すような。

行かなきゃ!励まされてる。と、券売機に向かうと、あの空気が。待って、祈ってちょうだい。私の足は勝手にある道を選んで進みます。まだ進もうとすると、それ以上行ってはだめ、と。

数十m先には、遊廓でした。手を合わせて、覚えたての祓詞を優しい女性達に捧げ、踵を返し、振り向かず、再び券売機の前に立った時…早く切符買いなさい、といくつもの細い、目に見えない腕に背中を押されました。

私はまっすぐH県に行きました。それから家に帰っていません。

沢山の思い出と持っていきたいものは山程実家にありました。母も姉も、なんやかや言っても大好き。愛してる! でも、多分もう一生実家に足を踏み入れることは出来ないのでしょう。

 
  • やまっち妻

    ↓よく、昔のロックバンドが♪オレはぶち壊したい オレは飛び出したい♪みたいな歌を歌っていて、「あーそう、勝手にすれば?」と、思っていたのですが、いざ自分の事となれば、雨風しのげて、メシの食える場所、それなりにmy宝も置いてる場所は棄てられないものです。そういう歌の気持ちが、30半ばで初めて身を切るように解り、飛び出し。正直、家のことが気にならないと言うと嘘になります。姉なんて、母に、荒い口調でアンタ呼ばわりするようになっていたし、まさか母に暴力は…ない、かも。それに物欲、今なら半端にプレミア付きそうな蔵書・漫画が気になる。また読みたいけど。でも一番幸せなのは、夫と暮らして、笑い合ったり、愚痴り合ったり、それなんです。ひよこでも、殻を自ら割ったら、新しく生きるしかないから。

     
  • 匿名

    そっか、やまっち妻さん幸せならOK(⌒~⌒)

     
  • やまっち妻

    あれで一皮剥けましたよ。私が突然の婚約破棄にショックを受けている時「あなたは悪くない。全部山地のせいよ」と機嫌取ってくるんです、姉達が。てめえら…。私、その時ばかりは、高慢ちきの令嬢のように我が儘放題しましたが、…こんな生活じゃ自分が腐る、と思い、逃げました。後から聞くとやまっちも、私を連れ出す計画を立てていたそうです。「痣だらけで酷く怯えていたけど、喋ると陽気な女性で、こんな家族の中に置いておけない」と、姉達に釘をさした後、私をスカウトしたという。後は、いつのまにか。今はとても幸せです。

     
  • 匿名

    なんかなぇ、内容よりも、お姉さん達の暴力に無感覚になってるのが怖い気するよ…。

    ほんとうに、占いの先生と一緒になって良かったの?
    ツライから逃げただけじゃなきゃいいけど

     
  • やまっち妻

    ↓無感覚になるんですよ。ばしばし頬を叩かれながら、「この感じならあと一分くらい。ろーくじゅう、ごじゅーきゅ…」とカウントダウン。姉は小学生くらいの頃、勉強が出来ない言われで、父から、いつも殴られていました。ので「わたしがマトモなのは殴られたから」という不思議な哲学を持っていました。私、子供ができるのがコワイ。

     
  • 匿名

    お姉さんは、そんなに暴力的なんですか?

    文章通りだとしたら、酷く寝?

     
  • 匿名

    お母さんとお姉さんがそんなだから、先生のもとへ行ったのだろうけど、
    良かったのかなぁと…。

    なんか心配してますが。

     
  • やまっち妻

    自分のことを書くときは、真実でも、ちょっとナル入ることって誰でも多かれ少なかれあると思うけど。酷い言葉が印象に残るみたいに、ちょっぴりのホメは、ちょっぴりの砂金のように残るもんです。…と、経験者は語る。

     
  • やまっち妻

    HNでいいので本当のことを書いただけなのですが。ま、誰が見ても姉と母はコワイです。私が変な人なのも本当、かもしれないです。読み返すと。自分が危険人物に思えました。御指摘多謝。

     
  • 匿名

    やまっち妻…

    …変な人(笑)

     

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