【不思議】雪/HN:0.血苺

雪/HN:0.血苺

この季節になると思い出します。もう、10年近い前の旅行の事を。

当時、私はまだ独身でした。バツ一の友人が居るのですが、彼女と、その息子と三人で、良く出掛けたものでした。

4歳だった彼女の息子の惇が「雪が見たい」と言ったので、私たちは東北新幹線に乗り、F県に行きました。

着いたK市の駅前は、拍子抜けするほど雪がありません。惇もがっかりしています。

取り敢えずホテルにチェックインして、私たちは在来線に乗って『A駅』を目指しました。

旅行が好きな割りには無計画な私たち…ガイドブックなんか絶対目を通しません。『A駅』に向かったのも、以前読んだ本か漫画で“Aの湖には、毎冬白鳥が飛来する”なる文章を読んだ(気がした)からです。

A駅はK市から、確か4,5駅しか離れていなかったと記憶しています。でも…私たちは無知な旅行者でした。4,5駅を、東京の在来線の感覚で考えていたのです。駅と駅の間隔の長い事!…しかも、どんどん山奥に入って行きました。

駅に着いて、外に出た惇は歓声を上げました。一面の銀世界!

私たちは上手いことタクシーを拾いました。が、それと同時に降り始めた雪に絶句…これって、ひょっとして…吹雪?!

「どちらまで?」

訊かれてはっとしました。

「あの…◯◯湖で白鳥が見られるんですよね?」

運転手は失笑しました。

「こんな雪じゃ白鳥は見れないべさ」

「…そうですか…」

結局、有名な偉人の記念館と世界のガラス館が有る場所まで、連れて行って貰いました。

偉人の記念館の前でタクシーを降りましたが、誰も興味を示さなかったので(すみません、千円札の方)ガラス館の方に行く事にしました。でも、それが大変だったのでした。

ガラス館は大きな通りを渡ったところに、朧に見えています。が、吹雪で目の前は真っ白!信号が有るのでしょうけど、全然分からないのです。

私と惇はコートのフードを被り、傘をホテルに置いてきた友人に、私は折り畳み傘を貸しました(友人はその時、傘のカバーを無くしました(-_-#))。

時折、通りをトラックが走って行きます。見通しが悪いこの道を勘で横断するのは、非常に危険な事でしょう。でも、私たちは無謀にも決行しました。

友人が惇を抱きかかえ、私たちは頷き合って通りに飛び出しました。その時!

「!!!」

吹雪が、一瞬人の形になって私たちに襲い掛かりました。

棒立ちになった私たちの鼻先を、トラックが走り過ぎました。

「……」

「今の、何?」

惇が泣きそうな声で訊きましたが、分かる訳がありません。

一瞬、雪が弱まり、私たちは何とか通りを渡り切りました。ガラス館に入り、綺麗なベネチアングラスを見ても、全く気持ちは弾みませんでした。

「ママ、僕もう雪は厭だ」

「ああ?…折角来たんだから表行って遊んで来なよ」

友人親子も殺伐とした会話を交わしています。

お昼ご飯を食べて、タクシーを呼んで貰うと、私たちはそそくさとガラス館を後にしました(何しに行ったんでしょうね)。

A駅に戻り、電車が来る時間まで、私たちは待合室でぐったりしていました。そして、無事に電車に乗った時…私は友人が身軽すぎるのに気付きました。

「あんた、カバンは?」

私は友人に訊ねました。

「!!」

友人は男性的な質で、普段バッグを持ち歩きません。それで、待合室で下ろしたリュックをそのまま置いてきてしまったようです。

友人は狼狽えて

「取りに戻る!」

と言いましたが、私は止めました。

もう一度A駅に戻ったら、ホテルに帰るのはだいぶ遅くなるし、その間惇と二人で待っているのも心細かったのです。それに…最悪、リュックが無くなっている可能性もありましたし。

幸い、財布もケータイもポケットに入っていたそうなので、私たちは惇を座席に残し、乗降口に移動しました。私は知りませんでしたが、北国の在来線は、新幹線みたいに乗降口と座席の間にドアが有るんですね。

まずは私が、ケータイで104にかけてA駅の番号を調べ、友人がA駅に問い合わせました。

「あ、すみませんA駅さんですか?…あの、そちらの待合室に、リュックが忘れてありませんでしたか?…中身は子どものゲーム機と漫画…あの、ドラえもんの漫画…ありますか?そうです!それです~!」

どうやら、無事だったようでした。私はホッとして、心細そうに待っている惇の元に戻りました。

友人は更に、リュックをホテルに送ってくれるように頼んでいます。

「……」

私は顔が引き攣りました。友人のテンション高めの声が、座席側に筒抜けだったからです。

疎らな乗客が微妙な表情を浮かべる中、友人が伝える、私たちが宿泊するホテル名と部屋番号、更に友人の名前とケータイ番号が響き渡りました…

その夜、ホテルで酒盛りしていた私たちの横で、惇がゲームをやりたがって駄々をこねましたが、友人は

「うるさいよ!しつこいと、ほら…さっきの白いオバケが捕まえに来るからね!」

と、脅しています。

昼間の白いオバケは多分私たちを助けてくれたのに、酷いオンナだなあ…と、私は非難を込めた目で友人を見つめました。

白いオバケさん、祟るんなら、こいつだけにしてね。

 
  • 0.血苺

    東京も良く降りました^^;
    F県はあの後、深い傷を負ってしまいましたが、白おばけはいい奴なので元気でいて欲しいです。

     
  • 匿名

    今日は雪がすごいですね(>_<)
    0,血苺さんの見た白いオバケが現れそうな天気です。
    絵本に出てくるスノーマンだったらロマンチックだなぁ(*^^*)

     

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