【不思議】遊園地/HN:0.血苺

遊園地/HN:0.血苺

私の両親は、共に長子です(相性は良くないらしいですね)。その為、私はどちらの祖父母にとっても初孫で、随分可愛がって貰ったものでした。

やがて、後から生まれて来た従妹や弟に大人の関心が移ってしまうと、我儘な私はヤチモチを焼くようになりました。

子どもなんて貪欲なものです。それまで散々チヤホヤされて来た癖に、自分は世界で一番不幸だ…なんて考えてしまうのですから。いや、私が特別馬鹿だったんですかね^^;

あれは私が、来年小学校に上がるくらいの頃でした。母の実家に遊びに行った時、母の一番下の妹である叔母が

「明日、一緒に遊園地に行こうか?」

そう、誘ってくれたのです。

昭和の、バブル景気前…田舎の素朴な学生だった叔母は、合コンならぬ合ハイっていうんでしょうか…お弁当持ってピクニックみたいな、健全なグループ交際を楽しんでおりまして、そのグループで行く遊園地に私も連れて行ってくれると言うのです。

私は有頂天になりました。従妹はまだ赤ちゃんだから行けないんだ!久々に優越感に浸りました。

でも、その夜…何かの事で大人に叱られた私は、叔母から

「そんな事する子は明日連れてってやんないよ!」

と言われてしまったのです。

勿論、叔母は本気で言った訳ではなかったのですが、真に受けた私は大泣きし、そのままフテ寝してしまいました。

そうして、ふと夜中に目を覚ました時、不思議なものを見たのです。

枕の白いカバーの真ん中に、私の涙かヨダレのシミが出来ていたのですが、そのシミがモヤモヤと蠢きはじめたんです。じっと見つめていると、まるでテレビのように何かが映っているのが分かりました。

枕の中は、明るい昼間でした。どうやら、外の景色を俯瞰で捉えているようです。そこが何処なのか…分かった途端、私の胸が鈍く傷みました。遊園地です。ひょっとすると、明日連れて行って貰える筈だったTテックでしょうか…

最初上空から見下ろしていた映像は、やがて一組の母子に焦点を合わせたようでした。私の母よりはちょっと若そうな母親と、私と同い年くらいの娘の二人連れです。

仲睦まじく手を繋いで歩いていますが、何故この二人に焦点を合わせたのか、不思議でした。さして綺麗でもない母親と、愛らしくもない娘。もっと見栄えの良い人たちを映せばいいのに。

その母親は、娘と一緒にコーヒーカップに乗ったり、メリーゴーランドに乗った娘に手を振ったり、ソフトクリームを買ってやったりと、本当に娘を愛おしんでいるようでした。

見つめているうちに、私は無償にその娘が妬ましくなって来ました。私は本当に愚かです。自分だって両親や祖父母、多くの人たちから愛されているのに、知らない子のお母さんの愛情まで欲しがっているのですから…

その時、その母親が突然振り返りました。

「………」

向こうから私が見えるはずは無いと思うのですが、確かに彼女は私を見ています。彼女は戸惑いを浮かべながら、私に微笑み掛けてきました。

私が覚えているのはそこまでです。多分、微笑んで貰えた事で、満足したのかも知れません。

翌朝、お弁当を作っていた叔母に起こされ、私は予定通り遊園地に連れて行って貰いました。

叔母の友人たちから可愛がられ、中でも取り分け優しいお兄さんに巧みに甘えて、ぬいぐるみまで買って貰った私はすっかり上機嫌でした。夕べ見た、貧相な親子の事など、忘却の彼方です。

こうして、あの映像の事は、不思議な夢として、記憶の中に埋没してゆきました。

そして、これは今から6年ほど前の事です。私は友人親子と一緒に、ある遊園地に行きました。

友人の子どもは男の子で、うちの娘より歳上なので絶叫マシンに乗りたがります。娘は絶叫マシンは無理なので、友人親子がコースターの例に並んだところで別行動する事にしました。

娘でも大丈夫そうなものに幾つか乗り、ソフトクリームなど買ってやっていた時…

「?…」

視線を感じて振り返りました。

「……」

そこには、娘と同じくらいの女の子が一人、私たちを見つめています。

下唇を噛み締め、上目遣いにこちらを見るその表情は、不貞腐れて泣く寸前のうちの娘とそっくりだったので、私はその子に微笑みかけました。迷子だと思ったのです。

でも、話し掛ける前にその子は踵を返し、人混みの中に走り去ってしまいました。迷子な訳ではないらしい…ひとまず安心して、そのまま友人たちと落ち合いました。

その夜…実家で晩ご飯を呼ばれたのですが、そこで私は、言う事をきかない娘を叱りました。

「……」

あの女の子と同じ顔つきで私を睨む娘に、私は眉を吊り上げました。

「ほら、又すぐそんな貌して!」

それを見ていた母が吹き出しました。

「よくゆうよ!…ママだっていつもこんな貌してたクセに。ね~え」

「もう!バァバがすぐ、そんな事言うから付け上がるんじゃん!…あ…」

私はハッとしました。

あの子は、私だ!…唐突にその事に思い当たったのです。…どっちも、私だったんだ!と…

叔母に遊園地に連れて行って貰った前夜、枕の中に映っていたのは、私だったのです。

それにしても…私も一応“女”ですから、少しは自分の容貌にも自惚れを持っておりました。でも、幼い自分が客観視した自分が、ああもチンケな女だったとは…唯一の救いは、当時の母よりは若く見えた事(あの時の母は私より若かった筈)。

あの時から、自分に対する贔屓目が一切無くなった気がします。

おまけに、自分の娘にまでヤキモチを焼く、この業の深さ…マザーテレサやナイチンゲールの伝記でも読みますかね^^;

 
  • 0.血苺

    ありがとうございます。
    おばさんですよ^^;

    林真理子さんのエッセイに、
    “少女というものは、自分の事を不幸だと思っているからである”
    とゆうフレーズが出てきて、あ、私だ…と思ったのを覚えてます。

     
  • 匿名

    血苺さんって、独身の若いお姉さんかと勝手に想像してましたが、お母さんなんですね(^-^)

    とても面白かったです。

    幼い子供の妬みの感情は当たり前で、そこで妬みを感じても何かしら満たされていたら健常に成長すると聞いたことあります。

    なんだかんだ血苺さんは温かい愛情に包まれたから、今は子供に温かい気持ちを向けられるんでしょうね。

    いい話ありがとうございます。

     
  • 0.血苺

    てぃあらさま
    暖かいお言葉、ありがとうございます。こんな私の矮小な世界に、勿体無さすぎです(>_<)

    のののさま
    ありがとうございます。のののさんの表現、好きです。

    ロビンMさま
    あの唄は私のカラオケの定番です^^そういえば、まるで迷路に迷い込んだみたいな話でしたね!

    皆様、ありがとうございました!

     
  • ロビンM

    やあロビンミッシェルだ。

    曲名は忘れたが『 現在過去みらーいー♪♪』が頭の中でリピート再生してしまったよ…ひひ…
    チンケな女のくだりで「ぼほう!!」と吹いてしまった事は謝っておく!

    枕に映像が映る所や、戸惑いながら母親がこちらを見つめている所などなんとも不気味な世界観が出ていて良かった。

     
  • ののの

    不思議な話ですね。
    未来と現在、現在と過去の自分にそれぞれ気づかされたのですね。ちょっと考えさせられました。

     
  • てぃあら

    待ってました。

    いつもの0.血苺さんの作風ですね。どこか懐かしい優しさ、物悲しさ、ほのぼの感がある血苺WORLDが大好きです。
    癒される不思議さです。

     

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