【怪異】寒天語-カンテンガタリ-①/HN:こげ

寒天語-カンテンガタリ-/HN:こげ

『ゆっきぃ~の しーんぐーん こぉりぃを踏んで♪
 どぉれがかぁ~わやら 道さえ知れずぅうん♪』

私達は幽霊が出ると噂されている…所謂、心霊スポットと呼ばれる場所を
休日を利用して訪ねて廻ることを趣味としています。

『ウマァー(゚Д゚)は斃れる 捨ててはおけず♪
 こぉこは何処ぞ 皆敵の国ぃ♪」

ネットで知り合ったA君に
心霊スポット探検を数人の仲間とチームを組んでやっているから一緒にどう?
と誘われたのがきっかけでした。

『ママーよだいたぁん 一服やれば♪
 たぁのみすーくなや たーばこが二本♪』

深夜の山、海、湖、河川、廃墟、廃坑等…
怪異を求めて訪ね歩く…
遊園地などのアトラクションでは味わうことができない
保障も保険も安全装置もまるでない
全ては自己責任でギリギリのスリルを楽しむ
心霊スポット探検…
私は完全にはまっていました。

『やかーぬひぃものに 半煮え飯に♪
 な-まじいーのちのあるそのうちはぁ~あ♪』

今回は日本を代表する河川のひとつで、
その下流にある広大な河川敷の中に生えています一本の木を見ることが私達の目的です。

『こらえ切れない 寒さの焚火♪
 煙いはずだよ 生木が燻る♪』

川原を車で進めるだけ進んで、
そこからは懐中電灯を手に持ち徒歩で向かったのですが…

『しぶーい顔して 功名話♪
 すーいと言うのは梅干ひとつぅ♪』

どこの河川敷にもいるはずの雑霊が…まるで姿がありません。
燦々と輝く星達…
黒々とした穏やかな水面
深夜、空気すら凍りつきそうな極寒の川べりを進む私達…
A君B君C君D君は一列縦隊で
明治二十八年に永井建子によって作詞作曲された軍歌『雪の進軍』を歌ってます。

『着の身 着のまま 気楽な臥♪
 背嚢枕に 外套被りゃ~あ♪
 背の温みで雪解けかかる 夜具の黍殻しっぽり濡れて♪
 結びかねたる 露営の夢を 月は冷たく顔覗き込む♪』

この歌って将兵に愛されてたり陸軍大将大山巌が大変気に入っていて
病床についてもなお臨終の最後までこの歌を聴いていた…なんて逸話があったりするのですが…

『命捧げて 出てきた身ゆえ 死ぬる覚悟で 吶喊すれど~お♪
 武運拙く 討死にせねば 義理にからめた恤兵真綿♪
 そろ~りそろりと 頚絞めかかる どうせ生~かして還さぬ積りぃ♪』

『勇壮でない』という理由から支那事変の頃には
歌の最後を「どうせ生きては還らぬ積もり」に改訂させられ…
大東亜戦争突入後は歌唱禁止となってたりします。
蛇足ですが…アニメ『ガールズ&パンツァー』の9話、
プラウダ高校戦でユカリンとエルヴィンが偵察中に口ずさんでいたのは改訂後の方です。
薀蓄おしまーい♪

「それにしてもぉ~全然っ!出ないですね~A君?」

「ギクッ!」

漫画的な大げさな表現で肩をぴくりと揺するA君…そして何事も無かったかのように行進続けますA君。

「幽霊さんの一人も姿を見せませんねぇ、お留守かしらB君?」

「…………」

聞いちゃいねーですよ!完全に聞こえないふりしてますよ!無視ですよ!
A君の後ろで飄々と…駄目ですこの人…

「レナウン娘の唄みたいにわんさかわんさか無数の霊が押し寄せてくるとか言ってたよねC君?」

「何だこの器はっ!よくもこんな器をこの海原雄山の前に出したな!こんな器で食えるか不愉快だ!」

だめですこの人も…なんかうわ言ほざいちゃってますよ…
次、行ってみます…

「前回、来た時にはもう尋常ではない数の霊が湧いてきて逃げるだけで精一杯だったですよねD君?」

「王大人(ワンターレン)死亡確認!!」

「なんですかそれ?」

聞いてください!ひどいんですよ四人とも!!
こちらへ来ると決まった時、その打ち合わせでですよ?
四人はどこかの米軍海兵隊先任軍曹みたいな口調で
今回向かう心霊スポットは日本でも有数と呼べる大量の霊が犇く場所で
粗塩も御札も消費量が半端じゃない、最高レベルに気を引き締めていかないと
一瞬のミスで全員の命が危機にさらされることとなる!
いつものようなボケかましたら本気で見捨てるから覚悟しろーと曰ったのですよ!
そして、私に二百数十字からなる『般若波羅蜜多心経』を諳んじられるまでになれと猛特訓を課したのです。
如何なる状況下でも唱えられるようにと…
卑猥な英語の歌詞の俺によし!お前によし!なのを歌いながらマラソンさせられたり
フィールドアスレチックみたいな障害物を登り降りさせられたり…
エアガンのM14持たせられて気をつけ!休め!捧げ筒!とか軍隊みたいな規律訓練させられたり
ジェリードーナツが無かったのでミ●ドのフレンチクルーラーを食べさせられたり…
疲れて寝ちゃったところ…石鹸をタオルで包んだモノでポカポカ殴られたり…
この日の為に…
今月今夜…この日の為に…
それがどうですか!?
着いてみれば幽霊様の一欠片もございません!
なんですかあの特訓…
あんまり酷いしごきに耐えかねた私はA君をトイレに呼び出して射殺し
自分も死のうかとまで思い詰めたあの特訓は!?

「幽霊いなくてマジすいませんしたー」

『さーせーんしたー』×3

私の怒りを察しきれてない四名様
振り返りもせず謝罪してきました…
しかも、棒読みで…
誠意がまるで感じられません!!
むかむかむかむかむかむかむかむかむかむかむか

「わ、私もう帰ります!帰らせていただきます!!」

「まぁ、落ち着けって」

私の前を行くD君だけが立ち止まり…回れ右…
にやにやしてるし!怒った!激おこ!

「わーん!
 ゆーれーいっぱいでるっていったのに…A君もB君もC君もD君もみんなうそつき!
 しんじゃえ!ぱるぷふぃくしょんのまーせるすみたいにおかまほられちゃえ!
 れざぼあどっぐすみたいにおかまほられちゃえ!
 しょーしゃんくのそらみたくおかまほられちゃえ!
 すりーぱーずみたいにおかまほられちゃえ!
 あめりかんひすとりーXみたいにおかまほられちゃえ!
 びょうしゃはないけどばっどぼーいずみたいにおかまほられちゃえー!!
 だっしゅつみたいにへんたいほもふたりにおかまほられちゃえー!!」

「お前…さすがと言うか…なんと言うか…
 よくそんなにノン気が変態ホ●野郎に犯されるシーンがある映画知ってるなぁ…
 脱出なんて1972年公開作品だろ?監督がジョン・プアマンで主演がジョン・ボイド…」

なんて、途中で険悪になったりと色々ありましたが
ごろごろ石の転がる河原を踏破し…
そそり立つ一本の木の前までやってきました。

「機嫌を直せ…俺達四人…冬コミの三日間、
 大手並んだり荷物持ちとか付き合ってやるから」

「わーい!みんな大好き!ありがとう♪」

私達はチームです!
ひとりはみんなのために
みんなはひとりのために♪
どんな困難にだってチームワークで乗り切っちゃいますよ♪
仲良きことは美しき哉 アレクサンドル・デュマですよ♪武者小路実篤ですよ♪
もう、すぐに仲直りです♪
これで今年の冬コミ攻略は万全の体制で望めますよ♪

それにしても…見上げる一本の木…
河川敷に生えてる中ではかなりの大木と言える部類じゃないでしょうか…
横に張り出した枝…その下…その地面…
黒々とした焦げ痕が…懐中電灯に照らされ…私達の目に入りました。
木を中心に直径約10m程、下草が無くなってます。
こうなって…それほど時間が経っていない…みたいな…これが…ここで…

「新聞に載ってた焼身自殺の痕跡ってやつか…」

ノイローゼ気味だったサラリーマンがガソリン?灯油?を自ら被って火を放ち…
地面の焦げ具合…焼けた範囲から察しますと…
焼かれ…息絶えるまで…かなり…もがき苦しんだのでしょう…
その様をこの木は…静かに見ていたら…

「木にまで燃え移っちゃったんですね…」

「この木…この数年間で十数人…首を吊って死んでいるんだよな」

関東でも有名な自殺スポットと言われる『●●市の首吊りの木』『●●市自殺の木』…
もしくは『●●市の首ツリー』…
命を絶つのに使ったロープとかは残ってませんでしたが
懐中電灯で上の方を照らしますと…
太目の枝には皮が剥けた…ロープを巻きつけたのであろう痕跡がいくつも確認できました。

「誰か、なんか分かるか?」

ここで果てた人間の未練や無念の残滓を感じ取った者はいるか?ということですねA君。

「私にはわからないけど…B君は?」

まるで何も…感じられません…ここって本当に心霊スポットなの?というくらい…何も…

「おかしな事に…まったく何も感じられん…あるはずの…
 一番新しい焼身自殺したヤツの怨みや未練…狂気の痕跡すら分からない…」

「追い詰められて他の方法が見つからず…止むを得なく死んだ人間が
 何の感情も残さず逝けるものなのか?」

C君もD君も…この木に残ってるはずの…ここで自殺を遂げた人の
生前情報を感じ取る事ができないと口を揃えました。
この川って不思議です…現在、私達に感じ取れる霊の気配…皆無…なんて…
不自然…あきらかに不自然です。
異常です。
あり得ません
その辺の小川だって呼びもしないのに…普通に雑霊とか集まってくるものなのに…
こんな大河であるなら…数十から数百いてもおかしくない筈…
それが皆無…絶対、ここには何かある…と思います。

「少し様子を見ていこう…物好きな霊能者が慈善事業で消したとしても数が知れている。
 なぜ、ここまで霊の気配が無いのかが分かるかもしれない」

しばらく、私達は『首吊りの木』をメインに周囲で何か変化が起こらないかと
見守っていたのですが…20分経過しても何も変化が見られず

「だめだ!これ以上留まったら凍死しちまう!」

「うん!寒いから車に戻りましょ!」

全員一致、収穫無しということで諦めて帰ることにしました。
楽しみにしてたのに…雑霊がわんさか…

「じゃあ、走って行くぞ!」

「え~!走るの!?」

「Mama & Papa were Laing in bed♪」

『Mama & Papa were Laing in bed ♪』×3

「またそれ歌うの!?」

「Mama rolled over and this is what’s she said♪」

『Mama rolled over and this is what’s she said ♪』×3

「やだもー!!」

「俺達はファミ●ンウォーズのCMソングを歌ってるだけだが?」

「ちがうよ!絶対違うもん!!」

「Oh, Give me some Oh, Give me some♪」

『Oh, Give me some Oh, Give me some ♪』×3

「PT♪」

『PT♪』×3

「PT♪」

『PT♪』×3

「Good for you♪」

『Good for you♪』×3

「Good for me♪」

『Good for me♪』×3

日本語訳は絶対しませんからね!
それで首吊りの木から背を向けて100mほど進んだ時でしょうか…
背後から…メキメキ…バキバキという生木の裂けるような音…
それから…ちょっと遅れて…ビルとかの工事で使う
地中に杭を打ち込む機械の出す地響きみたいな…
強い縦揺れが脚を伝わり全身を震わせました。

「え…な、何!?」

驚いて全員立ち止まったところへまた地響き…

「真後ろからだな」

水鳥や川辺の生き物が立てられる音じゃありません。
振り返って懐中電灯で照らしてみましたが
真っ暗…何も見えません。
今度は先ほどより私達に近い場所で
ススキや葦の枯れ草をまとめて何百もなぎ払うような押しつぶすような…
それは規則的に…
地響きを伴って…

「もしかして………」

確実に近づいてきて…最初の時と比べて地響きだって大きくなって…

「これって…」

「おい!後ろばかり気にしてるな!」

先頭を歩くA君が鋭い声をあげました。

「どーしたの?」

「前を見ろ!
 おいでなすった!雑霊の団体様が今頃お着きだ!!」

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  • やまっち妻

    文体に。けれども、うんざり歩く心霊スポット探検軍の雰囲気は満々で、つい何度も読みました。面白かったです。

     
  • 匿名

    ママースパゲッティを大胆に茹でこぼしているママの姿だと思った…(笑)

     
  • カイジ

    著作権が消滅している歌詞の表記について論じても意味は無いと思う。

    別に内容を改竄したわけでもなし、あれくらいは『表現の自由』の範囲内かと。

     
  • 匿名

    この歌は曲も歌い方も勇壮なんだが、詩の内容がだんだん暗くなっていくんだよな。
    改訂前はどうせ還さぬつもりでな。
    出だしは足場が悪くても進むし、馬にも気を使うことができる意気軒昂。
    作中の会話文は歌い方だとおもう。
    侭よ大胆から、嗜好品の煙草が残り少ないことを気にしだし、糧食について不満がでる。
    野営もつらくなりと最後は内面について迫る。
    生きて祖国へ還らせてもらえない。
    作中は歌が進むごとに会話文の文字数が増して重苦しさを醸していく。
    最初の能天気と最後はまるで違っている
    詩の正確さではなく会話文ならではのキャラの歌い方を表しているのだと思う。

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