【怪異】終間遺語りーシュウマイガタリー①/HN:こげ

終間遺語りーシュウマイガタリー/HN:こげ

今まで気がつかなかったのですが
私達心霊スポット探検チームメンバーが足繁く通うおもちゃ屋さんから
そう遠く離れていない絶賛営業中の小学校が心霊スポットとして近隣で有名だったのです。
いやもうびっくりですよ
校庭のバスケットコートを使って3on3したり、プールで遊んだりしたことあるのですから。

「これは是非、探検せねばならんのである!!」

どこかの公国の眉無し総帥みたいなセリフを
チームリーダーのA君がのたまいました。

『のである!』×3

「のである?」

心霊スポット探検を趣味にしている私達が、
心霊スポットにいながら、そこが心霊スポットということに気が付かなかったなんて…
名誉とか存在意義とか沽券とかプライドに係わる、
由々しき問題…
早速、私達は手分けして小学校に関する情報収集をすることにしました。

「ええと…」

調べるまでも無く…
おもちゃ屋さんに来る常連のお客さん、小学校の近くにある中華料理店のおかみさんと店員さん…
知り合いの方々…小学校に起きる怪異のこと…ご存知だったみたいです。
あっさりとお話を聞くことができました。
それによりますと

・校舎と校舎の間にある中庭で、頻繁に火の玉が目撃される
・近所に住む人が道路側に面した校舎の一階廊下をあるく人影をよく見かける
・校舎からプールに向かう渡り廊下をふらふらと歩く半分透けた男性がいる
・校舎の屋上から見下ろす人影
・真っ黒い人間のシルエットみたいなものに追いかけられた
・バスケットコートで人の笑い声や激しく動きまわる人影、ボールをつく音が聞こえる
・夏の深夜にプールで激しい水音や嬌声が聞こえる

小学校の敷地全域に渡って目撃されてるみたいですね。
最後のふたつは…ご、ごめんなさい…それ…たぶん、私達です…

「こんなところでぐだぐだ駄べっているくらいなら
 今から行ってきたらどうだ?」

週末のおもちゃ屋さんの作業場を借りて小学校探検の打ち合わせをしているところへ、
電動ガンのメンテを終えた店長が話に加わってきました。
 
「あんまり慣れた場所の割りに、俺達が全然気が付かなかったので
 慎重にならざるを得ないと思いましてね」

「幽霊程度ならいいのですが…気配の消し方が上手い物の怪相手となると…」

「場所が街中ですからね、以前みたいな大物相手に総力戦やらかして大騒ぎになり
 付近の住人に通報されるのもまた、厄介」

そうなんですよね。藪つついて大蛇を出し…始末に困って放置したまま逃走という…
心がずきずき痛む過去の記憶が…あんまり遠くない過去の記憶が…
火の玉や人影くらい密度が薄そうなのなら…今まで気がついてもおかしくないのに
私達の前には一度も姿を現さないというのは…どうも腑に落ちません。

「それなら下見って言うことで行ってきたらどうかしら?」

私の背後から艶のある女性の声…
コーヒーの入ったマグカップをトレイに乗せ、現れたのは店長の奥さんでした。
三十代半ばのすっごい美人さんです♪

「下見…ですか」

「中まで入らないで出るという場所を遠巻きに観察してくるとか?」

「ああ、そういうの良いかもな」

私がチームに入る以前、A君のホームページで最凶ランクの心霊スポットを
ファンの人達と下見会と称して廻るというOFF会企画がありましたね。
敷地の外からサイトのファンに見てもらって探検の片鱗を味わってもらうという…
私が初めてOFF会へ参加したのは…まずは危険の少ない心霊スポット同行探検でした。
懐かしいな。

「俺も一緒に行くから」

「え!?」

「私もいいかしら?心霊スポット探検なんて行ったことないから」

店長がやけに乗り気で参加表明です。
そして、マグカップをそれそれの席へ置きながら
奥さんまでもが同行したいと仰いました。
もう、行くしかないみたいです…
そんな訳で…
いつもの心霊スポット探検メンバー五人に加え、店長と店長の奥さんの計七人…
車に二台に分乗して件の小学校へ向かうことになりました。

「なんかいつもと感じが違くない?」

「ああ、心霊スポットだって分かると…脚を踏み入れるのに躊躇するな…」

なんて言いますか
気の持ち方次第なんでしょうけど…
雰囲気がまるで違って…物凄く怖く見えてくるんです。
路肩へ車を停め、校門前に降り立った私達…
我々の侵入を拒むような…
黒々とした校舎が私達にのしかかって来るような迫力…
目の前がくらくらして足が竦んでしまいます。

それで、なかなか校門より先へ進まない私達に
業を煮やした店長が

「俺が先頭で行くからついてこい!」

勇気ある先駆けを申し出たのです。
店長、店長の奥さん、B君、私、C君、D君、A君の順…
まるで、トルネコを先頭にしたドラクエのパーティみたいな按配ですよ
経験値もないレベルも低い商人なんて職業の人を先頭に
百戦錬磨の私達が後塵を拝する情けなさです。
淀みの無い足取り…
店長はずんずん、先へ先へと進んでいきます
二つの校舎を回り、
プールへ向かい…それから運動場へ…
もう、これは下見とは言えないんじゃ…
本格的な探検とか検証です。
前回の探検で残ったお札や粗塩を手にして
おっかなびっくり…店長の後に続いて見回った訳ですが…
結局、ビビリまくった割りに
異変はひとつも起こらず
下見とは名ばかりの探検は終了となりました。

それで、
近くにあった自販機から飲み物を購入してきて
道路側に面した校舎の壁に寄りかかり、
休憩を兼ねた反省会…
最後まで誰一人、店長の前…列の先頭に立てなかった私達は

『臆病者よ、徳川慶喜よ、中隊長ザクよ』と、

店長ご夫妻に笑われてしまいました。
いやもう面目丸潰れですよ。

一言も言い返すことの出来ない私達…
私は…あーやだやだと、あらぬ方向に目を…
窓から校舎の中へ目をやりました。
背が低いので天井くらいしか見えませんが…

「あれ?」

廊下の一番奥が、ほのかに明るくなっていることに違和感を覚えました。
一番奥と言えば階段があるから…非常灯かな?
でもなんか…動いてるような…
爪先立ちになり、もっと中をよく見ようと一生懸命に背伸びします。

「じぃ……」

青白い光が揺れながら…真っ暗な中を降りてきます。
懐中電灯でしょうか?
警備の人が見回りにきているのかな? でも…なんか違うような…
懐中電灯にしては…弱々しく
なんか…ふわっとした燐光みたいな…
階段を完全に下り…
あ、こっちに来る…

「あ、あの…ちょっと皆?
 窓から廊下の一番奥を見てくれるかな?」

押し付けた顔を窓ガラスから離して皆の方へ振り返りますと…

「ああ?」

探検メンバーの男子が…まるで、私を親の仇をみるみたいな目で…
特攻の拓に出てくるモブ不良みたいな目で…
じろりと私を見ましたよ全員が…
どんだけ不貞腐れているんですかあなた達は!?

「校舎の中、誰かがこっちに来る…みたいなんだけど…」

青白い光は立ち止まることなく
こちらへふわふわと向かってきてます。
物悲しげな…頼りなげな…
見ていると切なくなってくる仄かな光りかた…

「警備員だったら面倒なことになるから撤収しないと!」

「ええと、警備員さんとはちょっと違うみたい…なんていうか…
 お待たせしましたな…アレな…」
 
「なに!?」

A君達はバッと窓に貼り付き中のを真剣に覗き込みました。
反対に、後退りしたのは店長夫婦…

「脅かすなよ!単に見廻りの警備員じゃないのか?」

でも…警備員さんが建物内を見て廻るならツーマンセルシフト(二人一組)とかじゃ
ないでしょうか?
あれが懐中電灯だったとして…光源はひとつしかないです。
安全そうなところは一人で良いとか…なのかな…
でも、それならもっと輝度が高い懐中電灯を使うはずですよね…

「違う!あれは爺さんだ!頭の禿げた爺さんだ!透けてる!!」

B君が鋭く叫びました。

「作務衣か!?軽衫に上っ張りみたいなのを着ているぞ!?」

C君も見えたみたいです。

「廊下をお爺さんが懐中電灯もって歩いているの?」

私も窓ガラスに頬っぺたを押し付けて確認しますが…
青白い光しか見えてません。

「あ?暗い廊下を老人がひとり歩いてくるだけだぞ?」

「って、あれ物凄くヤヴァい!!」

B君が貼り付いていた壁から慌てて飛び退きました。

「げ!?」

C君まで…なんなの?

「選りにも選って…なんつう…」

「あれは坊さんの霊だ!!店長に奥さん、早く逃げろ!!」

ぼ、坊さん!?お坊さん!?僧侶の!?
あああああああの七代祟る猫の霊よりも、狐狸妖怪の類よりもたちの悪い…
無駄に修行している分、こちら側にはなんの対抗手段も持ち得ないとされる…
最強にして最悪!
未練を残して亡くなった宗教関係者!
それも内陣結社に属する達人の幽霊!!
に、にににににに逃げないと!!
窓から早く離れようとは思うのですが、頭はパニックになってるし
手足がまるでレジンか石膏ででも固められたかのように
動きません!!
A君とD君は廊下の一番手前にあるサッシの引き戸越し…
一番遠くから見てるから見てるからいいけど
あの光が…
あ、あの光がお坊さんの霊なの!?
廊下をふわふわと…
も、もう近くまで…
3m…2m…1…
その時、後ろから凄い力で私は羽交い絞めにされ引っ張られました。

「いやぁあああああ!!
 これって夙流忍法『飯綱落とし』!?」

「違うわよ!?私よ私!!」

店長の奥さんでした。
『お坊さんの霊』というキーワードの
あまりの怖さに金縛り状態となった私を
奥さんは校門までずるずると引っ張り連れてってくれたのです。

「まったく、どこでそんなカムイ伝なんて古い漫画のネタを仕入れてくるの!?」

一緒に心霊スポット探検してるあの四人からです。

「危ないからここにいなさい!」

私は小さな子供ですか!?
店長の奥さんに抱きかかえられたまま…

「こ、こんなチャンスは滅多に無いぞ!坊さんの霊が見られるなんて!
 ヤヴァくなるキリギリまで撮影するぞ!!」

廊下を歩いてやってくるお坊さんの霊を正面のサッシ戸越しに
カメラを構え撮影しはじめましたよA君とD君…
夢中でシャッターを切っている二人…
持参したデジカメと携帯を使っての撮影です。

「なんで、あいつ等は
 幽霊のいない時はびびって前を歩けなかったのに
 幽霊が出たとなれば
 正面から対峙して、撮影するだけの余裕が生まれるんだ!?
 普通、逆じゃねえか!?」

店長が誰に言うでもなく問いかけました。
出るまでは脅威で出たら獲物…
心霊スポットを嬉々として征く者はそうなんですよ。
出たら勝ち
怖いもの知らずで進める者と、怖いものを前にして留まれる者との
違いがここであきらかになりました。
問題は…逃げ時の見切り…です。
皆がお坊さんに見える青白い光は
ついにA君D君の直前へと迫りました。

「限界だ!D逃げるぞ!?」

A君にはここが生死を分ける分水嶺と判断したみたいです。
カメラを大事にポケットへしまい
私達のいる校門目指して駆け出しました。

一方、D君…

踏み出した足に、もう片方の足を引っ掛け
見事に転んでました。
デジカメがアスファルトの上を転がっていきます。

『そーきたか!!』×4

D君を除いたメンバー全員の叫びが
夜のしじまを破って辺りに響き渡りました。
『ホラー映画に登場する人物の殺される直前の行動』ベスト10に入る
死にたくなければやってはいけないことをD君はしてしまったのです。

「A…Hさんに連絡を頼む…
 俺等はDのところへ助けに行く…」

B君とC君は、校門に着いたばかりのA君にそう告げると
映画『ワイルドバンチ』のクライマックスみたいに
絶望的な戦場に向けて歩き出すのでした。

「わ、私も行く!」

何も出来ないですけど…友達の大ピンチですもん!
しかし、
店長の奥さんが私を力いっぱい抱きしめて
危ないから行っちゃダメ!と一点張り
二人の後姿を見送る以外…

「最悪の事態だ!Hさん頼む!でてくれよ!!」

私の横に来て
携帯をポケットから取りだし操作するA君
焦っているから上手くボタンを押すことができない様子…
あ、耳に携帯を当てました。

「……………………」

呼び出している時間がとても長く…
いらいらいらいらいらいらいらいら
あ、D君をC君が助け起こして、B君がデジカメを拾い…
校舎からガラスを透過して出てきた青白い発光体と対峙しました!
他のみんなはお坊さんと言っていましたが
私には終始、直径1mほどの発光体が
宙にふわふわと浮いているだけにしか見えませんでした。
それでは描写的になんだかなぁなので、
ここからは後に聞いたお坊さんの姿で語らせていただきます。

後頭部が大きく後ろへ突き出た才槌頭には
髪の毛は一本も無くつるっと禿げ上がり
二重瞼…半眼に開かれた目には表情が無く遥か彼岸を見つめている風情
鼻は低くつぶれた感じで唇は上下とも無いかのように薄い…
全体的にのっぺりとした顔立ち
背は身長165cm程度で痩せぎす
足には雪駄、藍の作務衣みたいなものを纏っている…
それが…三人の目の前にひっそりと立っています。
ただ、立つのみ…

「すみません夜遅くに!Aです!超緊急事態です!
 大至急連絡お願いします!失礼します!!」

Hさん…電話に出てくれなかったみたいです…
A君…留守電に伝言入れてますよ…
ああ、もう!
何やってるんだかあの人!!
私は一度も会った事ないですけど…

Hさんとは
霊能者や祈祷師という職業を持っている方ではなく
A君の知り合いで老舗呉服屋の若主人…
当主となる者は代々、
修験道を修めることになってまして
Hさんも例に漏れず、
子供の頃から修行を積んでいるんだそうです。
ただ、彼のお爺さんの代からは修験道だけではなく
仙道にも足を踏み入れており…大陸の巫術、仙術に造詣深く、
さらに武術の達人と言う
まさに人間兵器!!
そして、超が付くほどの美形なんだとか!(A君談)
もう!『鋼の錬金術師』に登場するロイ・マスタング大佐そのものなのだそうです。
冷静沈着、傲岸不遜の傍若無人で無愛想で取っ付きづらいけど
A君は昔から頼りにしている御仁なんだそうです。
閑話休題!

目を発展場の方へ戻すと
Hさんに連絡がつかず
自らの手でこの窮地を切り開かねばならない…
眼前に立つ修行を積んだ僧侶の霊…
鬼にも竜にも変じ、気象にすら干渉し、
縮地によって如何なる場所へ逃げる事も敵わぬ
人から生った異形中の異形…の前に…
B君とC君、D君の
悲壮なる姿がありました。

しばしの対峙…
そしてついに
心霊スポット探検メンバー三人対お坊さんの霊の想像を絶する
無制限一本勝負の戦いの幕が
切って落とされたのでした。

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  • 紫姫

    まさか、私(紫姫)の コメに お返事して頂き嬉しいです。有難うございました。 なるほど お坊さんの本体でなくて、助かったわけですね (o^-^o) Hさんは、毎回アドバイスをして、夜おそくても、電話に 出られ、優しいく 頼もしい方ですね。 ツンデレや 屁理屈(学校の依頼で お坊さんを除霊して 他の霊は、依頼されてないから ほっとく。)等 こげさんの 周りには、個性的な方が、いらして 楽しいですね。 羨ましいです(=^ェ^=) また 楽しい投稿 お待ちして おります。[s:17723]

     
  • こげ

    天通の七不思議さん様

    夢枕獏先生の陰陽師で、徳の高いお坊さんが亡くなられる時、目に入ったたんすの上の
    水あめが入った瓶に未練というかほんのちょっとの気を向けてしまい、それが蛇の物怪
    という形をとって現れるようになった話がありました。
    幽霊というより、ほんのちょっとの思いが修行を積んだために形として表れてしまった
    とか…
    修行を積むということでその弊害というかなんかあるのでしょうかね♪
    ありがとうございます♪

    紫姫様

    今回はお坊さんの幽霊本体ではなかった為に助かったみたいです。うしおととらに登場する
    白面のものの分身みたいな…それでも圧倒的な感じがw
    対抗策がそれ以上の力で押しつぶすしかないらしいですね。
    修行を積まれたお坊さんを論破するのは至難の業ですし、術比べならあちらが上ですし
    (T_T)
    ありがとうございました♪

     
  • 紫姫

    さすがに お坊さんには、どんな呪文も効かないですね[s:20516] いざ 敵になったら 対処 難しい、相手で 苦戦して 皆さん かなりヤバかったと思う。 探険隊は、幽霊が、現れたら 勝ちは、 面白い。(o^-^o)

     
  • 匿名

    お坊さん……
    成仏しろよー

     

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