【怪異】恋痕語りーレンコンガタリー②/HN:こげ

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ア・バオア・クーから脱出してきて『僕には帰れるところがあるんだ』
なんてアムロみたいに悠長なこと言ってる暇はありませんでした。
本日の運転手A君が
運転席に飛び込みキーを回してエンジンに火を入れます。
私は後部座席のドアを開けたB君によって
小包みたいに持たれたかと思うと中へ放り込まれました。

「むぎゅ!」

続いてD君とB君が乗り込んできます。

「全員乗ったか!?後ろなんか見てる暇なんかない!
 どこかにぶつける可能性有り!
 全員、対ショック態勢!!」

「全員乗った!さらに対ショック完了!!」

「行くぞ!!」

「バッチコイ!!」

A君は最初からアクセル踏みっぱみたいで恐怖を覚える無茶な加速で発進
ワイルドスピードかデスレースみたいな勢いで廃アパートから離れていきました。
しばらく走っても
A君はスピードを緩める様子はなく…

「やばい…振り切れてない…かも…」

頻繁にルームミラーとドアミラーを確認しながら
呟きました。

「ねぇ!ウエディングドレスの女ってなに!?」

B君とD君に挟まれて後部座席に押し込められてた私…
小包状態から居住まいを正してちゃんとお座りになったところで皆に訊ねました。

「あそこで自殺した女だよ!
 長年付き合って結婚目前だった彼氏に親友を遭わせたところ
 親友と彼氏が出来てしまいトントン拍子に結婚まで進んじまった。
 それで、二人の結婚式当日に彼氏のアパートに行って
 ウエディングドレス着て首吊った…って話だ…
 残念な事に…自殺した部屋な…
 彼氏、引っ越した後だったとか…転居先とか何も…教えて貰えなかったんだな…」

「それ…私、聞いていませんけど?」

「ああ、だってあそこテレビに出るくらい有名な某霊能者が
 除霊済みだから安心って言われていたからな
 教える必要もないかと…」

A君…出ないと分かってるところに連れていったのね私を…

「今、ちらりとリアウインドウに見えた…な」

「やっぱり…持ち帰り…か」

Hさんに相談だな…と、
A君は片手ハンドルで…ため息をつき、ポケットから携帯を取り出しました。
私は一度も会った事ないですけど…
Hさんとは
霊能者や祈祷師という職業を持っている方ではなく
A君の知り合いで老舗呉服屋の若主人…
当主となる者は代々、
修験道を修めることになってまして
Hさんも例に漏れず、
子供の頃から修行を積んでいるんだそうです。
ただ、彼のお爺さんの代からは修験道だけではなく
仙道にも足を踏み入れており
大陸の巫術、仙術に造詣深く、
さらに武術の達人と言う
まさに人間兵器!!
そして、超がつくほどの美形!美男子!(A君談)
もう!ハガレンのロイ・マスタング大佐イメージそのものですよ!
ていうか私の脳内ではHさんはもろマスタング大佐です。

「あ、夜分に恐れ入ります」

腰を低くしてペコペコと電話の向こうにいるHさんと話すA君です。
今夜はこんな時間だというのに
あっさりと電話に出てくれたな、Hさん…

「あ、はい…分かりました…彼女と代わります」

A君は携帯を耳から離すと、
Hさんと話すように私へ差し出しました。
わ、私が…Hさんと!?
携帯を受け取り耳の横に持っていくと
私がはじめましての挨拶を1オクターブ高く言うより早く

「お前、一体何をした?」

ですよ!物凄い錆びた無愛想な声!格好良いです!
絶対美形です!

「ああ、ロイ様…」

「馬鹿かお前は?」

本物よりも鋭い…日本刀並みの切れ味ですよ!

「お前…プロが寝かしつけた奴をどうやったら起こせるんだ?
 あの女の怒りは相当のものだ…
 何か心当たりは無いのか?
 怨霊を鬼に変えるような…いつもと違うことを何かしていないか?」

感情が一切ない口調で用件のみ…
何か…彼女を怒らせる…
何か…って
何かした
ひとりでアパートに入ったくらい…
ああ、ええと

「杏里の『悲しみがとまらない』を歌ったくらいだけですけど?」

「………………」

あれ?Hさんが黙り込んじゃいました。

「もしもし?」

「罰として1週間憑けてろ
 来週、対策打ってやるから」

ぷつん……

「あ…」

Hさん通話を切っちゃいました。

「Hさん…なんだって?」

「…1週間つけてろ…だって」

全員、愕然となりました。

「ど、どどどどういう!?」

運転席のA君に携帯を返して、私は背もたれに深く寄りかかります。
だって初Hさんですもん!
余韻が…錆びた美しい声でした…無愛想だったけど…
会話しちゃった♪
対策打ってくれるって…もしかしてHさんと会えるってことですか!?

「罰として1週間付けてろだって
 なにを付けてればいいんだろうね?」

質実剛健とか文武両道とか四字熟語が似合うような声でしたHさん♪
冷たいけど冷酷じゃない…

「あれに決まっているだろう?
 車の外でヒラヒラしてる白い奴」

「え!?」

ナビシートのC君が親指で窓の外を指します。
後部座席に座る面々がそちらを凝視…

「……………」

「……………」

「……………」

いました。
こんな深夜に、すぐ…車の窓の…向こうに
ウエディングドレスに身を包んだ
非常識なのが…
私達の乗ってる車と平行して浮遊しているじゃないですか!?

「つかぬ事をお聞きしますが…」

真顔でB君が私に尋ねてきました。

「あの部屋でどんな事をしてくれちゃった訳!?」

どんなって…

「杏里の『悲しみがとまらない』を歌っただけですけど…」

さっきもHさんが黙り込んじゃったんだよね…
車内に嫌な沈黙が降りました。
なに?この機が熟すのを待っているような…間は…

『お前!
 何でまた死んだ理由に!
 直撃するような歌をうたってくれるんだよ!?』×4

これが、シンクロ率400%オーバーの総ツッコミ…

「私!?私のせいなの!?」

「当たり前だろうが!霊能者が祓ったとか噂があってから
 ずっと鳴りを潜めていたのを起こしやがって!!」

「霊を起こすなんてジャ●アンだって出来ない芸当だよ!!」

「ジャ、ジャ●アン!?」

ああ!寄ってたかって私を…
そして私を…
選りにも選ってジャ●アンですって!?
友達から田村ゆ●りに似た可愛い声って言われている
私のことをジ●イアンですって!?
むかつく!お、おまいらだって…おまいらだって!!

「あんた達だってどんな幽霊が出るのか教えなかったくせに!
 先にここで亡くなった方の事を教えてくれてれば
 あんな歌うたわなかったよ!自分達だって同罪だよバーカ!!」

「有名な霊能者が除霊したって聞いてたから…」

「いや!出る出ない別として
 心霊スポットで歌うなんざ非常識にも程がある!!」

「へぇ!?じゃあ、死者に捧げる鎮魂歌ってなんなんですかぁ!?」

外のひらひらそっちのけで
私達、口喧嘩をはじめてしまいました。

私 vs.A,B,C,D ですよ!
なんかズルくないですか!?
それでも負けるもんかと県境を越えるまでずっと戦っていました。

「今後…お前は一生!二度と!『杏里』は歌うな!!」

別にカラオケとかで『悲しみがとまらない』は持ち歌じゃないから…

「いいですよぉだ!
 今度は『テネシーワルツ』歌っちゃうもんね♪」

『同じだバァカ!!』×4

結局、ウエディングドレスの彼女…
私がお目当てだったらしく
しつこく、私の家まで憑いてきて
一週間ほど滞在していきました。

毎晩毎晩、寝ている私を金縛りにして
ベッドの横にウエディングドレス姿で見下ろしてくださいました。
とても凄い形相で…
私も負けてなるものかと
友人知人から失恋ソングを集めてきて編集し
それを夜中ずっとかけて
金縛りになりながら…起きている…意識がある間はずっと歌いまくり…

週末…金曜日…

私を金縛りには遭わせず
彼女はベッドの横で嗚咽を漏らし
しばらく泣いたあと
すぅっと闇に溶け込むよう
消えていきました。
それから
彼女は二度と私の前に出てこなくなりました。

私の自宅で起きた
ウエディングドレスの幽霊との戦いの一部始終を聞いたA君達…
『霊泣かせの鬼女』とか『音響人型対霊兵器』とか…
好き勝手なことを…

そして…あろうことか…

『ジャ●アン』…

『ジャ●アン』という!

私を…そんな不本意なあだ名で呼ぶようになりました。

(おしまい)ic

2014年04月05日(土) 13:50
こげ ◆.s16F9bY
投稿広場より掲載

 
  • 紫姫

    こげさんの話し&作品を 何回も 読みたくて♪ 心の癒し求め 名付けて「こげさんファン好き心元気にするサプリメント」 素敵な個性豊かな心霊スポット探険チーム主要メンバー ABCD君&こげさんの 楽しい時&ドキドキの時&ワクワクの時& ごげさんvsABCD君の口喧嘩等の 会話している 光景が、毎回眼に 浮かび 例えピンチ&危険な時でも 私は、側で一緒に その場で 生な会話を楽しみたい。こげさんの作品のキャスト達の テンポ&ノリノリの 会話が、こげさん作品の魅力&特徴の素敵な甘美な極上のスパイス! 隠し味的な うんちく&●モ&コミ●会場(夏・冬)&料理ネタ&メイちゃん・太郎ちゃんネタ&高校生時代ネタ&映画ネタ等(未々 沢山の面白笑いのツボにハマるネタ)どれが、欠けたら… ごげさんの作品ファンを名乗る 紫姫に とって! 料理と同じで… 何かの味付け&スパイスを 入れ忘れ&無くしたら… その料理は、台無しになってしまう。 その場しのぎに 味付けを 誤魔化そうとしたら… その料理を 大好物の人は、直ぐに解りますよね。 投稿者様は、料理人 投稿作品は、料理 作品のキャスト&ストーリーは、材料& 味付け& レシピ等 読者&リピーター &マニア好きは、食する人& 大好物& ファン◎ そして… 同じ&似た料理&食材&味付け でも 作り方&作る人& 隠し味&等 で 無限に沢山の料理&お店が、存在する。 家庭料理&隠し味は、投稿者様の 家庭環境&感性&経験。

     

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