【怪談】父の話/HN:愁

父の話/HN:愁

今年で65歳になる父の話。私の父は実名は控えるが、約30年前までTVにも紹介された事のある有名な坊さん、所謂霊能力者だった。

この先に記載する内容は、当時父から聞いていた内容、取材に同行していた関係者から聞かされた話をまとめたもの。

予め断っておくが、父はその際に何かがあり、精神的に狂しくなってしまった。そんな父を知って欲しい私のエゴで投稿する。勿論この先を読んで何もない保証は出来ない。

梅雨も過ぎ、山間部独特の蒸し暑さがやって来た頃、父の元に、とある雑誌の取材がやって来た。もう夕暮れ時だったが、お盆前には良くこうして取材が来ていた事もあり、さほど珍しくもない来訪だ。

良く見てみると私も何度か見た事のある方【荒井氏】で、軽く挨拶を交わし、私は席を外した。

小一時間ほどたった頃、何か言い争う声がした。どうやら父と荒井氏の声のようで、普段声を荒げる事のない父が「とにかくもう帰れ」と言う声が聞こえてきた。

突然の事におっかなびっくり様子を伺っていると、暫くして応接室から荒井氏が出てきて、力なく帰っていった。

その時はそれ以上の事はなく終わり、何となくその時の事は父に聞けずにいた。

それから2週間もたたないうちに、荒井氏が亡くなったと言う知らせが届いた。偶然?いや、先日父を訪ねてきた事と何か関係があったのだろうと察しはついた。

訃報を知らせてくれたのは荒井氏と同じ会社の加藤氏と言う方で、荒井氏の遺物をまとめる際に父宛の手紙があり、届けてくれたそうだ。

結論から言えばこの手紙に記されていたのは、父との約束を破り怒らせてしまった反省と後悔が書かれていた。加藤氏と荒井氏は同期で、加藤氏は友人の突然の死の理由を、父に問い詰めていた。

その父から語られたのは、実の息子の私でさえ信じられないような話だった。

荒井氏が亡くなる5年ほど前、父は荒井氏から依頼を受けた。

その依頼というのが、家から約3時間ほどかかる山の中腹に廃校になった校舎がある。良く聞く話だろうが、その校舎が訳ありで取り壊されずに残っているとか。真偽を確かめる為に取材に同行して欲しいという内容だった。

父はこれを快諾、後日荒井氏とその廃校を訪ねる事になったのだ。

取材当日、父と荒井氏は夕方頃に車で出発した。件の廃校へは、父、荒井氏、カメラマンの高橋氏、荒井氏の部下の吉田氏の四人で向かった。

出発して二時間もたった頃、父たちは既に鬱蒼とした山道を走っていた。山の夜は早く、既に辺りは暗がりに包まれていた。廃校に近づくにつれ、父はただならぬモノを感じ始めたそうだ。

いよいよ廃校についた。父は後悔した。一目見てここは来てはいけない場所だとすぐに感じたそうだ。入ったら二度と出てこれない。例えるならどこまでも続く大きく深い穴を眺めている気分だったそうだ。

父以外の面々も、周りの景色と馴染んでいるのに、そこだけが異質に感じたそうだ。

渋る荒井氏をなんとか説得し、直ぐに帰り支度を始めたそうだが、どうしてもということで高橋氏に写真だけ撮影させて帰ることに。

だがそれが間違いだった。シャッターを切った瞬間、暗い闇をフラッシュが照らし出した刹那、闇に浮かび上がった数えきれない影が高橋氏に吸い込まれていった。

荒井氏、吉田氏、そして父も言葉がでなかった。目の前でこれから何が起こるかわからず、ただ固まった。高橋氏はカメラ覗きこみ構えた状態のまま動かなかった。

静寂。時間にすれば30秒か1分か、重々しい空気が漂うなか、父が高橋氏に声をかけた。ゆっくりとカメラをおろし、こちらを振り向いた高橋氏の目は既に焦点が合っていなかった。

救えない。父は確信した。

パニックになった吉田氏は奇声をあげ、車に走っていった。父、荒井氏もとにかく走った。無我夢中で走って、気がつくと寺に帰ってきていた。

全く現実味のない体験。現実離れした出来事。父は本殿に荒井氏、吉田氏を引き上げ必死にお祓い、読経を繰り返した。日が昇るまで続けたそうだ。

3人が落ち着きを取り戻し高橋氏について相談した結果、父だけで探しにいく事になった。結果からいえば高橋氏は見つからず、今日も発見されていない。警察には失踪届けが出されたままだ。

見つかったのはあのとき撮影したカメラ。同時にそれだけがあの時の出来事を現実と証明するモノだった。

父は荒井氏、吉田氏にカメラの事は告げず、高橋氏は見つからなかったとだけ伝えた。

もう二度とあの場所には近づかない、誰にもあの事を話してはいけない。これが父と荒井氏の約束である。

なぜ、5年もたったあの時荒井氏が再びあの廃校を訪れたのかは解らない。だがあの日、父の元を訪れた荒井氏は父にこう言った。

あの時のカメラをくれ。

誰にも話していなかったはずなのに。

そう、父を狂しくしたのはそのカメラだ。

そもそも、そんなモノをなぜ父が持ち帰ったのかと言えば、何かの間違いで人の手に渡らないようにするためだと思っていたが、おそらく父も既に魅入られていたのだと思う。

簡単に浄められるような代物ではなく、何年もかけて少しずつ払うつもりで持ち帰ったはずのカメラ。荒井氏が亡くなった翌年にお焚きあげをした。

父は燃え上がるカメラを見つめたまま、気が触れた。本当に突然。なんの前触れもなく。

原因も、結果も、何もかも解らないことばかりで読んでくださった方には、申し訳ないのだが、これが父について知っているすべてだ。

こういったものに携わった末路は、けして明るいものはないと言うこと。だれにも解らない、触れてはいけない世界はあるのだと言うことだけは伝えておく。

部下の吉田氏も今日亡くなりました。

 
  • 匿名

    ゾッとした
    この廃校やばすぎ

     

世にも奇妙な怖い話や都市伝説から不思議体験スピリチュアルまで…オカルト小説投稿/2chまとめサイト。1万3千話超えの厳選物語を貴方に★