【怪談】不幸な男/HN:ロビンM

不幸な男/HN:ロビンM

やあロビンミッシェルだ。

この話は怪談というより、悲しい生き方をした男の記録と言った方がいいかも知れない。

俺の過去の作品と少し被っている所も有るかも知れんが、まあ話を始めよう。

隣り町に住む二つ上の先輩の家が半分廃墟化していた。

先輩の父親は先輩が物心着く前に亡くなっており、母親は障害を持つ姉を施設に預けたまま蒸発。

今その家に住んでいるのはその先輩只一人だった。

夜遊び盛りの若い俺達にとって、自動的にそこが恰好の溜まり場となった。

毎日地元のヤンキー達や家出少女等が入れ代わり立ち代わり出入りし、その頃は家に誰も居ない日が無いに等しい程の大人気な会場だった。

だがしかし…何と言うか…

その家は兎に角気持ちが悪い…

敷地四十坪ぐらいの何処にでもある一般的な二階建ての家なんだが、外壁の類いはなく、手入れされていない庭は腰辺りまで伸びた雑草で埋め付くされていて、蛇や猫の死骸等がよく転がっていた。

家の中も酷い状態で、誰も掃除をしない為見事に荒れ放題だった。

台所のシンクには山積みにされた汚れた食器と生ごみが異臭を放ち、リビングのソファーは穴だらけ、カーテンも掛かっていないし、壁紙も落書きだらけでそこらじゅうビリビリに剥がれている。

因みにテレビもぶっ壊れていた。

床も洒落にならんぐらいヌルヌル状態だった為、先輩を始め俺達全員が靴のままアガると云う所謂アメリカンスタイルをとっていた。

まるで廃墟寸前を思わせる閑散としたその空気は本当に不気味で、昼間でも一人でその家にいると、何か落ち着かずにソワソワしてしまう事がよくあった。

まあヤンキーの一人が連れて来た野良猫が、『フニャーーー!!』と奇声を挙げ、一分持たずして逃げ出すといった異常さが有ると言えば何と無く伝わるだろうか…?

ある日の夕方、バイトを終えた俺は何時もの様にその家へと遊びに行ったのだが、その日は珍しく誰一人家に居なかった。

(因みに鍵は常時開けっ放しなので誰でも入れる…)

家主である先輩も居なければ、家出少女グループも居ない。

馬鹿丸出しの地元ヤンキー達もその日に限っては何故か誰一人として居なかった。

家に入るとシーンとしていて、夕方にも拘らずなんとも不気味で心細い雰囲気だった。

その内誰か来るだろうと、一階のリビングの窓を全開に開けてボーっと待ってたんだが、一時間経っても二時間経っても誰も姿を現さない。

陽が傾いて来るにつれ、外は段々と暗さが増していく。



ギシ… ミシ… ギシ…

不意にドアの向こうで、階段を降りてくる足音が聞こえた。

言っておくが絶対に家鳴りなどではない…しっかりとした重量感のある人間が降りて来る足音だ。

「 な、なんだ、誰か二階に居たんかよ!!」

俺は二階に誰かが居た事への安心感と、不安と怖さが変に入り混じり、急に腹が立ってきてリビングのドアを『バン!』と乱暴に開けた。

しかし階段には誰も居なかった…

途端ゾワゾワと鳥肌が立ち、耳鳴りが始まった。

足音からして階段の真ん中辺りに人が居ないと説明がつかない。

なのに居ない…

俺は恐怖を振り払い、ダッシュで二階へと駆け上がった。

『 い、今絶対に誰かいた筈だ! 俺は幽霊なんて信じない! 絶対にいた筈だ!俺は幽霊なんて信じてない!絶対に人だ! 人間だ!』

その当時、幽霊の存在を完全否定していた俺は、誰かのくだらないイタズラだと思ったのだ。

俺は先輩の寝室である階段を上がったすぐの部屋のドアを躊躇なく開けた。

すると安っぽいダブルベッドの横に、髪の毛が真っ黒焦げになったボッロボロの汚い人形が数体転がっていた。

「 ………!!」

更に異様なのは、その全ての顔が此方を向いていた事だ。

「 な、なんだよこれ!!」

慌ててドアを閉めた。

「はあ、はあ、前見た時はあんな人形無かったぞ!? どうなってんだよ?」

気合いで息を整えた後、続いて隣りの部屋のドアノブを握ったのだが、脳裏に物凄く嫌な予感が走った。

この部屋には今まで一度も入った事が無い…
なんか絶対開けちゃいけない気がする…

『 い、いや違う! 俺は幽霊なんて信じてないんだ!絶対これは誰かのイタズラだ!ここを開けたら先輩達がいる筈だ…!!』

キィィ…

ドアを開けると丁度目の前に鏡があった。

詳しく言えば三面鏡。

恐る恐る部屋へと足を一歩踏み入れた瞬間、物凄い目眩と耳鳴り、吐き気が襲って来てぶっ倒れそうになった。

まるで頭を持たれて乱暴に振られたような…
目の前がグワングワンと回される感覚。

鏡には俺の驚いた顔しか写っていなかったが、俺はこの部屋はヤバイと思い、すぐに一階のリビングへと走った。

リビングに戻るとある物が目に入った。

昔、先輩の姉貴が使っていたという電子オルガンの上に、埃を被った写真立てが伏せた状態で置いてあったのだ。

俺はそれが無性に気になり、その写真立てを手に取った。

写真には子供の頃の先輩と、母親らしき女性が写っている。

左端にはあの三面鏡。

どうやらさっきのあの気持ち悪りぃ部屋で撮られた写真のようだ。

「…ん? 何だこれ?」

ジックリと写真を眺めていたら、『幽霊なんて絶対にいない!』という俺の自信はガラガラと脆くも崩れさった。

二人の背後にある大きな窓に、黄色いヘルメットを被った中年の男が外側からベターーーっ!っと張り付いていたのだ。

顔をこれでもかと硝子に押し付けながら、凄い形相で此方を凝視している。

血を流しているとか、半分透けているとかそんな物では無く、輪郭も目鼻立ちもハッキリとした本当の人間かと思わせる程の男が鮮明に写っていた。

空いた口が塞がらない状態で写真を更に良く見てみると、男の周りにも数体の悪霊としか思えない姿があった。

確認出来ただけで少なくとも六体は居た…

もう外は真っ暗になっていて、カーテンも無いリビングからは蛍光灯の明かりで少し庭の様子が伺える。

ふと視線を感じて、俺はまだ空いた口が塞がらない状態のまま窓の外を見た。

すると伸びた雑草と雑草の隙間に、黄色いヘルメットを被り作業服を着たそいつが気を付けの状態でボオっと立っていた。

俺はその後二時間程気を失っていた様で、家主である先輩に揺り起こされた。

さっき見た事を全て話すと、先輩はその写真を眺めながらこう言った。

「これか…これは俺の親父なんだ。鳶をやってた親父はこの恰好のまま足場から落ちたんだ。」

「 ま、マジで? 」

「 …怖かったか?スマンな!でも父親と母親と俺とのスリーショットの写真がこれ一枚しか残って無えんだよ…はは…
まぁこれが心霊写真だって事は良く分かってっけど、どうしても捨てられねぇんだ…これだけは… 」

先輩はそう言い終わると、右手の袖で写真に落とした涙を拭った。

グスン…ヒック、ヒック…

一緒に話を聞いていた北海道産の家出少女も泣き出した。

普段は馬鹿丸出しのヤンキー達も珍しく言葉を失い、同情の目を先輩に向けている。

次第に涙は感染して行き、俺を除く全ての人間の目に涙が溜められていた。

俺はこの時、強く心に誓った。

今後一切、二度とこの家には近寄らないと…

実はその後の先輩の人生が中々壮絶で、『いい思いをさせてやる』という甘い言葉に乗せられて夜の仕事を始めたものの、タダ同然でこき使われた挙句に多額の借金を背負わされ八十キロあった体重は六十キロまで落ちた。

痩せてイケメンの部類に仲間入りした事で店の商品である女の子に手をつけ、結果妊娠させてしまった為、女を連れて親分のベンツに乗って逃走。

道中人身事故を起こし、その場に車を乗り捨てて更に逃走。

警察とヤクザのダブル捜索が続く中、名前を変えて地方の温泉街や土建屋の寮などに点々と潜伏を続けた。

勿論、知り合いである俺達の家にも警察やヤクザが先輩の居所を聞きに来たが、全員が知らぬとシラを切った。

だが結局それを最後に俺達とも連絡が途絶えてしまった為、現在の居所は誰も知らない。

公に指名手配は掛からなかったので、被害者は死んでいないと思うが、先輩の今後がとても心配だ。

だがもう彼が俺達の前に姿を現す事は二度と無いだろう…

そして家主を失ったあの不気味な家は、名実共に立派な「廃墟」となり、周りを高いフェンスと有刺鉄線で厳重に囲まれ、「怪奇現象の起きる家」として今も地元で恐れられている。

【了】

2014年05月12日(月) 14:25
ロビンM ◆eBcs6aYE
投稿広場より掲載

 
  • ロビンM

    やあ✌️ロビンミッシェルだ。

    血苺氏、いつも有難う!

    ヤンキーは涙もろい…ひ…

    確かにそうかも知れんな!言われて見れば俺の周りの人間は皆涙脆いかもしれない。

    元々感情の起伏が激しい分、尚更そうなのかも知れないな…ひひ…

    因みに俺は最近フナッシーを見て泣いた。

    暑さに耐えながらハイテンションを崩さない強い男気に心が撃たれてしまったんだ…う…

    しかし実際、事務所を通さない彼の年収は測り知れないな…ひ…

     
  • ロビンM

    やあ✋ロビンミッシェルだ。

    てぃあら氏、有難う!

    そうだな…父の死をきっかけに?結果一家離散してしまった先輩だが、今思えば先輩は精神を少し病んでいたのかも知れないな…

    黒焦げのあの人形を思い出すと今でも寒気が走るよ…ひい…

    父との記憶も無く、母親の愛情もマトモに受けずに育った先輩を思うと何か胸が詰まる思いだ。

    やはり人間というのは生まれ育った環境が大きく作用するのかも知れないな…

     
  • 0.血苺

    人が住んでいる時から肝試しスポットみたいだったのですね…
    先輩の無事を祈りたいです。

    写真の話は、怖いけどちょっとジーンときますね。
    案外、ヤンキーっぽい人が涙もろかったりするんでしょうか。

    味のあるお話でした。ありがとうございます!

     
  • てぃあら

    ロビン・ミッシェルさん、投稿広場からの掲載おめ♪で~す。ひひひのひ…ひひ。

    この先輩さんは、本当に気の毒な境遇ですね。仕事中の不慮の事故での死に、お父さんは、遺された家族(障害のある娘もいることなどは特に)のことが心配過ぎて、成仏できないでいるのかもしれません。子どもたちのことを託すしかない妻であるお母さんが蒸発してしまったのですからなおのこと、その思いは癒えることはないのかもしれませんね。お母さんが、大変でも現実逃避することなく頑張っていれば、このお父さんは、空から、ずっと見守って、家族を幸せへと導いてくれたかもしれませんのに…。

    心霊写真を承知で大事にしていた先輩さんの気持ちを察すると不憫でなりません。

    一時でも親交が深かった人の「今」が分からない…というのは、虚しいですね。

    先輩さんや、それを知るロビンさんを含めたお仲間の悲しさ、虚しさ、やるせなさを感じるお話でした。

    あと、このお父さんが眠るお墓を誰が守っているのだろう?と余計な心配もしてしまいました。

     

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