【怪異】殲滅①/HN:ゼロサム

殲滅/HN:ゼロサム

※注意:この作品の中には、軽微な暴力や虐め行為の描写があります

中学二年生の秋、
付き合っていた彼氏が『コックリさん』にハマった。
学校で大流行したから仕方ないとか思ったけど
正直なところ、彼氏にだけはやって欲しくなかった。

当時、放課後となればどの教室でも居残った生徒が
『コックリさん』をしている姿を目にすることができた。
最初は文化部系の女子生徒達が恋占い感覚で始めたみたいなのだけど、
あっという間に全生徒へ伝播して歯止めが掛からなくなった。
特に男子達は『コックリさん』にカーテンを揺らしたり、鉛筆や消しゴムの移動など
怪異現象を起こすように依頼するような事をして楽しんでいた。
そのうち、『コックリさん』を扱うのが上手な生徒が現れ、生徒達は達人、名人と
持て囃して…競い合う様になり、エスカレートして校内は明けても暮れても
『コックリさん』の話題一色に染まることとなった。

私はオカルトなどにまるで興味がなく
部活はレギュラーの座を死守する為、夜遅くまで練習に明け暮れ、
彼氏もすでにいることから恋占いなど必要としない
リアルに充実している身であったし…醒めた目でこの騒ぎを見ていた。
本当に馬鹿馬鹿しい。
そんな私と対照的、彼氏は『コックリさん』へ傾倒していき…
とうとう達人と呼ばれる始末…
部活にも出なくなり、放課後の教室で『コックリさん』三昧…
授業中に休み時間に昼休み、帰宅して寝るまで送られてくるメールの中身は
『コックリさん』『コックリさん』『コックリさん』『コックリさん』!!
全て『コックリさん』に関連する話で埋まっている。
呆れもしたけど、それ以上に『コックリさん』にむかついた。
嫉妬なんて言われたら当時の私はぶち切れたに違いない。
私は鈍感な彼氏より『コックリさん』を憎むようになっていった。
それから不安にもなった。
クラスが違うし部活があるから…なかなか逢える時間が取れない。
オカルト好きな文型の女が現れ『コックリさん』を通して意気投合し
いつか彼氏を奪っていくのではないか…なんて妄想に駆られたりもした。


『ミツルにコックリさんを仕掛けて怖がらせてやるプロジェクト(*^0゚)v』

火曜日の夜。お風呂から出ると彼氏からこんなメールが届いていた。
『ミツル』と言うのは彼氏と同じクラスの生徒で、
この前の宿泊学習で、夜の暗闇が怖くてトイレに行けず
寝袋の中でおしっこを漏らし…学校に在籍しながら伝説となった超臆病者。
その『ミツル君』に『コックリさん』を使って散々怖がらせ
二度目の『尿漏れ伝説』を打ち立ててやろうという魂胆だそうだ。
テレビで放映されてた怪奇特番を観た時に思いつき…
現在、協力者を募っていて、私にも参加して欲しいのだとか…
私に頼むということは…浮気の心配は無いということか…一安心。
ホッとしている私って…馬鹿だなぁ…

『金曜日に決行予定! (≧ω≦)b 協力頼むゼ♪』

水曜日の夜。
就寝前、彼氏にメールを打ってる途中で…あちらから先に届いた。
また『ミツル君』と『コックリさん』の話だけで…
彼氏彼女の間でなされる平凡だけど言われるととても嬉しい言葉はひとつもなし…
『ミツル君』を尿漏れまでいかにして導くかの案がズラズラと…
彼氏は悪くないんだ…
あ、そうか…協力者となれば彼氏のところへ休み時間でも堂々と会いにいけるんだ。

『いいんじゃない♪ 柱| ̄m ̄) ウププッ 任せて、手伝うよ♪』

『ミツル君』の人生を大きく変えてしまう重大なことになる…かもしれないのに
当時の私は自分のことばかりで…とても軽く捉えていた。

決行当日、金曜日の昼休み、ギャラリーとして立ち会う為
私はクラスメイトを誘い彼氏の教室にいた。
私と目が合うと彼氏が口の端を吊り上げ軽く頷いてみせる。
準備が整ったと昨夜、彼のメールがあった。
『ミツル君』が彼氏の友人に連れられ教室に入ってくる。
給食当番だったらしく白衣を着ていた。

ここで一応簡単に『コックリさん』に使う盤への記入の仕方を述べておくことにする。
地方によってそのやり方に幅があるみたいなので一応。

A3サイズの紙か同じ大きさほどの木製ボードを用意する。
もっとサイズが大きくても構わないが、小さすぎると十円玉が移動して文字を示す時
何の文字を指しているのか分からなくなるので大きめの物を選ぶ。

1.まず盤の中央の上部に『鳥居』を描いて丸で囲む。
  鳥居の形状は地図記号にある神社のマークで構わない。

2.鳥居からだいたい5~8cmほど離した位置に紙の中心から
  対称となるように『はい』『いいえ』と縦書きで記入する。
  その外側に同じく中心から対称となる位置へ『男』『女』と書く。

4.鳥居の下へ左端から1、2,3,4~9、0を
  漢数字、アラビア数字どちらでも構わない
  等間隔で紙の端から左右均等に配置される様、書き込む。

5.右端から『あいうえお』の五十音を縦書きで記入し、最後は『わ を ん』で終わる
  文字の間隔や紙の端からのバランスをよく考えて書き込むこと。

これで盤への文字記入は完成となる。
あとは『コックリさん』なる霊なのか小神なのかは不明な
姿無き者を呼び出す呪文を唱え、用意しておいた盤上の十円玉へ…、
『コックリさん』を行う三人の人差し指を乗せた十円玉へ乗り移らせ
『演者』達が質問し、十円玉がそれに答える為に自ら動きだす…のだとか。

彼氏達は状況が掴めずいる『ミツル君』を
『コックリさん』のボードが置かれた席へ有無を言わさず座らせると
仲間の一人が教室の北側の窓を開け、『演者』二人が

「コックリさん、コックリさん、コックリさんいらっしゃいましたら
 鳥居の中へお進みください」

早速、三度唱えて開始の儀式を始めてしまう。
席に着いている演者は彼氏とその友人、そして『ミツル君』
彼は『コックリさん』の演者にさせられたと知り、早速…泣きそうな顔になった。
『コックリさん』が入場する際、本来なら南側の窓を開けておくらしいのだけれど
全ては『ミツル君』を怖がらせる為だけだから、
本当に呼ぶ必要はないから北側の窓にしたとか…
十円玉はもちろん彼氏とその友人が動かしている。
恐怖にゆがむ『ミツル君』の表情を見てギャラリー達がくすくす笑っている。
『コックリさん』への質問は恋バナから入った。
クラスの誰が誰のことを好きかとか、誰と誰は付き合っているかどうか
付き合ってる誰と誰はどこまで進んでいるか…
私達女子はその質問と答えが出る度にキャーキャー黄色い声をあげた。
私も『コックリさん』に彼氏との事を当てられてしまい、
周囲からの冷かされて二人で照れ笑いする茶番を演じたりした。
だんだんと『ミツル君』の表情に笑顔が浮かぶようになった。
『コックリさん』は占いの類なんだと安心したみたいだ。
それを見て彼氏が仲間に本番に入るぞと意味ありげな視線を送って合図する。
ギャラリーに紛れ込ませている仲間達が
演者達が自分らで十円玉を動かしている可能性を、インチキではないかと指摘…
小さくは無い騒ぎとなった。
では…と彼氏は言い…ならば今度は十円玉を押さえる三人全員が目をつぶって
『コックリさん』をやってみようと発案する。
おおおと周囲から歓声があがった。

今までと質問内容がガラリと変わる。
『ミツル君』は自分がこれから何をされるのか知ることなく目を閉じている。

「じゃあ、今度は『コックリさん』本人についてのことを質問してみようぜ?」

「あ、それ…すごく私も知りたい♪」

私がお追従のセリフを吐く。ギャラリー達がうんうん頷く。

「『コックリさん』って霊なんでしょ?どうして亡くなったとか、
 どこで死んだのかとか訊いてみたいよ」

「なんか『コックリさん』っぽくなってきたな♪」

「じゃあ、今のも加えて『コックリさん』に色々と質問していくからな」

「是非是非、よろしく~♪」

「『コックリさん』『コックリさん』、あなたのお名前をお聞かせ下さい」

目を閉じた彼氏が質問をすると、
盤上を滑るように10円玉は動き、文字を示していく。
それをギャラリー全員が言葉に出して読み上げる。

(い……え………な………い)

「なぜですか?」

(い……え………な………い)

「それは、この近所で亡くなられた方…だからですか?」

10円玉は一度、

『はい』の方へ向かおうとしたが途中で止まってみせ、
『いいえ』に行きかけてから急に、初期位置の『鳥居』へ戻って動かなくなり、
ギャラリー達は色めき立った。
私の彼氏…本当に凄い…目を開けて操作しているみたい…
特訓したとか聞いていたけど…これほど完璧にできるなんて…
十円玉に人間味を感じてきた。
そこで動かぬままの十円玉に業を煮やした風情で、
彼氏は質問を変えてみることにした。

「あなたはここ最近、亡くなられた方ですか?」

この質問に、十円玉はすっと『いいえ』へと動き出した。

「あなたは恨みをもって亡くなられたのですよね?
 どんな死に方をされたのですか?」

(い……き………て………い…る………の……に…
 ま…………い……………そ………う……さ……れ…………た)

十円玉は緩急をつけて動く…まるで感情を持っているかのように…

「生きているのに埋葬された?ってことは…
 この『コックリさん』は土葬だった頃の人!?」

「まぁ、まだ医学だってそんな発展してた訳じゃないし
 子供の頃、祖父ちゃんに聞いたことあるよ
 死んだと思って土に埋めたら、土の中で蘇生したみたいなのが
 たまたま理由があって掘り返した時、
 棺桶の蓋をバリバリ毟る爪で引っかいた痕があったとか」

「こええええええ!!」

「身動き取れない狭い棺桶の中で酸欠で誰にも知られず死んでいく…」

「マジかよ!?」

『コックリさん』が出した答えに騒然となるギャラリー達
『ミツル君』の顔色が青白くなってる…

(い………て……つ……く…ま……つ……く………ら…の……
 や……み……の…な……か……だ……ん………
 だ………ん……い…き……が…く……る……し…く…な…つ…て…)

十円玉は止まる事無く、怒りを示すかような直線で動いては文字を指し示す。

(さ……む……い………と…て……も……さ……
 む…………い……こ……こ………は………さ……む……
 い………わ………た……し……う………め……た……か……そ……
 く…………か………に……く……い……
 に…く…い……の……ろ……つ…………て………や……………る)

彼氏…本当に凄いよ。
狙った文字へ澱みなく十円玉は移動しては止まるの繰り返し…
本当に目が見えているかのように…
ギャラリーから驚嘆と賞賛のどよめきが湧き上がる。

「もう、あなたが死んで時間がかなり過ぎ去ってしまってますよ?
 ご家族だってほとんどが他界されたんじゃないでしょうか?
 それなら、そこまで呪うことは不毛ですし
 成仏することを考えてみてはいかがでしょうか?」

10円玉は彼氏のセリフで怒ったように
激しくボード上をぐるぐると文字を示さず大きな円を描き止まらなくなった。

「どうするよ!怒らせちまったようだぜ!?」

「指が十円玉から離れない!!」

ギャラリーに混じっている仲間達が打ち合わせ通り…騒ぎ始める。
その言葉は全て『ミツル君』を恐怖に陥れるためのもの

「どうすれば怒りを鎮めてくれるか聞いてみたら?」

「そ、そうか!
 『コックリさん』どうしたら怒りを解いてくださいますか?」

(み……つ……る………ほ………し……い……み…………
 つ……る…つ……れ………て………い……く……………
 る………つ……ほ……の……な……か………へ…………)

十円玉が指し示す文字が読み上げられ…
名前を出された『ミツル君』の体がびくんと仰け反るように大きく震えた。
椅子を座ったまま後ろにずらして盤から身体を遠ざけようとしている。
彼氏の仲間が逃げられないように『ミツル君』が座る椅子の背もたれを押さえた。

「連れて行く…とはどういう意味なんだ?」

(く……ら………い……ふ……し……と……み……つ………………
 る……つ……れ……て……か……え……る…ふ……た……り……
 え……た……な…ら……さ……ひ……し……く……な……い……
 つ……ち……の……な……か……み……つ……る……と…………
 ね…む…る……い……つ……ま……て…も……い…つ…し…よ…
 に……ね……む……る……)

「そんな勝手はさせない!」

再び、十円玉は盤上を激しくぐるぐると円を描き続けて止まらない。

「怒っても駄目なものは駄目だ!
 『ミツル』を連れて行くことは俺が許さない!!」

十円玉の動きと会話の応酬が見事に噛み合っている…
彼氏の焦りの表情なんてもう迫真そのもの
『ミツル君』がそれに呑まれているのが傍から見ても分かる。

(み……つ……る……つ……れ……て……か……え……る…
 み……つ……る……つ……れ……て……い……く……
 し……や……ま……は……さ……せ……な……い……)

稲妻のような機動をで十円玉は文字を指し示し進んでいく。

「絶対に駄目だ!
 『ミツル』!お前だって一緒に行くのは嫌だよな?
 こいつに絶対に嫌だから一人で帰れと言ってやれ!!」

『ミツル君』…目から涙が流れ…すでに泣いてるし!?
おかしくて吹き出しそうになるのを必死で堪え…だめ…
肩が可笑しくて震えちゃう…
シリアスに…シリアスでいかないと…
私が原因で『ミツル君』にバレたら彼氏が迷惑する…

「嫌だよ!僕は絶対に行かないから!一人で帰ってよ!!」

上ずった声で叫ぶ『ミツル君』
一人称『僕』だよ…中学生になって…どこまで…軟弱なの『ミツル君』!?

(つ……れ……て……か……え……る…
 つ……れ……て……か……え……る…
 つ……れ……て……か……え……る…
 つ……れ……て……か……え……る…
 み……つ……る……つ……れ……て……い……く……
 し……し……や……の……せ……か……い……)

彼氏と友人の二人で操る十円玉の動きについていけなくなり
『ミツル君』は指を離してしまった。

「ああ!『ミツル』が指を離しちまった!」

「どうするんだよ!?『コックリさん』を帰す前に指離して!?」

「『コックリさん』が帰らなくなったらお前の責任だからな!!』

周囲から『ミツル君』を非難する声があがる。
ついに彼は大口を開け声をだして泣き出してしまった。
こういうのは号泣っていうのだろうか…
そうだ、『ミツル君』…尿!?尿は大丈夫!?

「無理矢理にでも鳥居へ十円玉を戻すぞ!
 『コックリさん』には帰ってもらう!終わりにするぞ!」

「分かった!でも、この力…すごい力で俺たちに反抗してくる!」

「な、なんだ!?ヤツは何か言いたがってるみたいだ!!
 逆らわず『コックリさん』に好きに動いて貰うぞ!?」

十円玉はボードの上を走り言葉を紡いでいった。

(ち……か……ら……と……と……の……う……
 ら……い……し……ゆ……う……の……き……ん……よ……う……ひ……に
 こ……こ……へ……も……と……つ……て……く……る……
 そ……の……と……き…
 み……つ……る……い……つ……し……よ……に……
 か……な……ら……す……
 つ……れ……て……か……え……る……
 し……や……ま……し……て……も……む……り……)

「畜生!鳥居へ押し返せ!
 絶対に『ミツル』は渡さないからな!!
 ひとりで寂しく土ん中で寝てやがれ!!」

彼氏は大声で叫んだ。
二人は盤が破れても構わないと指に渾身の力を込め、
十円玉を鳥居の中に戻し

「コックリさん、コックリさん、コックリさん、どうぞ御帰りください!」

三度『退去』の言葉を唱えて彼氏と友人は十円玉から指を離した…
疲れたと背もたれに身体を預ける二人…
十円玉から力が消えたような気がする…すごい演技だった…
ギャラリーから深い溜息が漏れて、教室内の空気が一気に弛緩した。
『コックリさん』の儀式はこれにて終了。

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