【心霊】雨合羽の男/HN:ロビンM

雨合羽の男/HN:ロビンM

やあロビンミッシェルだ。

今回は「幽霊見たい派」の後輩圭太が体験した話を聞いて欲しい。

某有名ラーメン店のラストを一人で任されていた圭太は、深夜三時頃に全ての後片付けを終えて電気を消しシャッターを閉めた。

自転車に乗ろうとしてゴミ袋を表に出し忘れた事を思い出し、舌打ちしながら再度シャッターを開けた。

するとガラス越しに、調理場の中で冷蔵庫の前に佇む人影が一瞬見えたと云う。

自称「幽霊見たい派」の圭太はすぐ様自動ドアのセキュリティを解除して店内に飛び込んだのだが、その人影は既に消えていたらしい。

実はこの店では昔からアルバイト達の間で密かに語り継がれている「レインコートの男」という霊が頻繁に出没するらしいのだが、零感の圭太は残念ながらいままで一度もそれに遭遇した事がなく、やっと見つけた!と思った瞬間に消えてしまったのだ。

「…なんだよ、ちぇ!」

俺にはとても真似出来ないのだが、圭太は電気も着けずに客席、厨房と幽霊を探して店内をグルグル歩き始めた。

「おーーい!いるんなら出てこいよ!一回だけでも顔見せて見ろやレインコートのオッサンよーー!」

しかし呼び声虚しく、店内は冷蔵庫のブーーンとしたモーター音が鳴るだけで他にはカタリとも音はしない。

「つまらん!」

圭太は半ば諦めモードで暗い厨房の中に入り、シンクとフライヤーに挟まれたポリバケツから手探り状態でゴミ袋を抜き出そうと手を伸ばした。

しかしいくら力を入れて引き抜こうとしても動かず、バケツの底で何かが引っ掛かっているのか中々抜き出せない。

「ちぇ!面倒くせぇな!」

短気な圭太はイライラしながら渾身の力を込めて思いきり袋を引き抜いた。

ビリビリビリ!!

ガタン!!

最悪の事態が起こってしまった。

なんと無理矢理引っ張った拍子に袋は破れ、力の行き場を失った圭太の体は遠心力で後ろへと引っ張られる様に吹っ飛んで狭い通路へ尻餅を着いてしまったのだ。

しかも悲惨な事に、同時に倒れたポリバケツからは丸一日分のたまりに溜まった生ゴミの雨が圭太の頭から胸元へかけてドバリと降りかかってきた。

「ぎ、ぎゃーーー!!」

余りもの悪臭と気持ち悪さに、慌てて立ち上がろうとした圭太は更なる悲劇に見舞われた。

電気を着けなかったのが災いしたのか、立ち上がった先に何か固い物があったようでガツン!と頭をモロにぶつけてしまい再度圭太はその場に座り込んでしまった。

「ぐ、痛え!!」

圭太はこの時暗闇の中でも頭を打つと「目の前を星が飛ぶ事を初めて知った」と後に語っている。

圭太は不思議に思っていた。

いくら周りが暗いとはいえ、厨房の配置ぐらいは完璧に頭に入っている筈で、今自分の上に頭を打つ障害物など存在する筈が無いと。

圭太は先日就職の為にこの店を辞めて行った大学生のアルバイト君の話を思い出していた。

『 レインコートの男って洗い場(シンク周り)での目撃率が一番高いみたいですよ、気を付けて下さいねw!』

不意に目の前で倒れているポリバケツの中でガサリと音がした。

圭太は一度瞼を強く閉じて息を整えた。頭にはズキズキと先程の一撃の余韻がまだ残っている。

ガサガサ…

やはりポリバケツの中では生ゴミに紛れて何か得体の知れない白い物が蠢いている。

「なんだ?ネズミか?」

しかし今の圭太の意識の殆どは目の前のポリバケツでは無く、自分の頭上にあった。

先程からずっとカサカサと何かビニールでもこする様な微かな異音と、何者かのハァハァとした荒い息遣いが続いているのだ。

不思議な事に「幽霊見たい派」である筈の圭太は何故か恐怖で身動きが取れなかった。

今上を向けば夢であった「レインコートの男」との御対面が出来る事はほぼ間違いないだろう。しかしそれは逃げ出せる前提での話だ。

彼曰く、目の前を星が飛び、腰が抜けて座り込んでいる上に生ゴミだらけといった心が折れてしまっている状態とではまた話が違うらしい。

言葉には出さずとも完全にビビってしまっている圭太には、上を向く勇気が持てずにただ目の前のポリバケツをジッと眺めていた。

ガサ、ガサガサ、ガサガサ、

次の瞬間、破れたゴミ袋とポリバケツの間で蠢く何者かと目が遭った。

てっきりネズミだと思っていた白い物は明らかにこの世のものでは無く、顔の三分の一しか見えていないが目の大きさからして人間の赤ん坊の目だという事が分かった。

「………!!」

『 アーーーン!!アーーーン!!アーーーン!!アーーーン!!』

突如、その赤ん坊と思しき者がバケツの中で大声をあげた。

『 アーーーン!!アーーーン!!アーーーン!!アーーーン!!』

ガサガサ、ガサガサ、ガサガサ、

必死に中から這い出ようとしているのかポリバケツが大きく左右に揺れだして、ゴミ袋の擦れる音が一段と激しくなってきた。

「…ああ、次のバイト先どこにしようかなぁ…」

圭太はこの緊迫した場面で冷静にそんな事を考えていたと云う。

ガサガサ、 ガサッ!!!

漸くポリバケツから這い出してきたその赤ん坊は頭部をニョイと外へ出した。

それは思っていたよりも小さかった。

猿みたいな顔で、見た感じ生まれて間も無い赤ん坊である事が分かるが、それでも異様に小さかった。

圭太の拳一つ分も無い頭、ガリガリに痩せ細った顔、そして懸命に大きく見開かれた両目と口に経験した事の無い不気味さと違和感を覚えたという。

『 アーーーン!!アーーーン!!アーーーン!!アーーーン!!』

だがその両目は圭太では無く、彼の背後を見ていた。

再度頭上で紙が擦れる様な音がして、背後から伸びてきた枯れ枝の様な細い二本の手がゆっくりと赤ん坊を持ち上げた。

ポタポタと雫を垂らしているその袖先は、エンジのレインコートだった。

「…………」

赤ん坊はその手に抱かれた瞬間、泣くのを止めて目を閉じ大人しくなった。

次の瞬間、圭太の頭の中に激しく強い感情がどんどんと流れ込んで来て、それまであった恐怖は吹っ飛び、涙が止まらなくなってしまったそうだ。

ガタン、ゴロゴロ!!

どれくらい時間が経っただろうか、突然近くにあった氷冷機から氷が転がる音がして圭太は我に返った。

慌てて起き上がり一目散に逃げ出そうとして、ゴミ袋からこぼしたラーメンの束に足を取られてすっ転んでしまった。

コンクリでしこたま膝を強打した圭太は、半泣きで後ろを振り返った。

すると大事そうに赤ん坊を抱いたエンジ色のレインコートを着た男がジッと圭太を見下ろしていた。

暗かったせいか下半身は無い様に見えた。そして男は鼻先まで目深に被っていたフードをゆっくりと捲った。

「な、なんだ、女かよ…」

腰までもありそうな程に長くずぶ濡れの黒髪が左右に垂れ下がり、両目がある部分は空洞の様にポッカリと空いているものの、綺麗に鼻筋は通り、ポテっとした石原さとみ先生を思わせる肉厚な唇が特に印象的だったようだ。

「そっそれ、お、お前の子か?」

女と分かった途端、急に上から目線になった圭太に女は表情を一つも変える事無くコクリと頷いた。

「な、中々可愛い子じゃねぇか!もう離すんじゃねぇぞ!」

激痛が走る膝を庇い、全く痛くない素振りを見せながら圭太は格好良く立ち上がった。

そして顔に被ったラーメンの汁を布巾で拭いながら圭太は更にこう続けた。

「頼むよ!もうこの店には出ないでくれよ!君のおかげでバイト君達が入って来てもすぐに辞めちまうんだ。バイト募集かけんのもタダじゃないんだぜ!もう出てってくれよ、なんだったら三軒隣りの沖縄料理屋にでも行ってみたらどうだ? な?そうしろって!!」

『…………』

圭太が近寄ると、女は何も言わずに背後の壁へと姿を消してしまった。

そしてその後、二度と女が店に現れる事は無かったらしい。

「結局あの女って何がしたかったのか分かりませんでしたよ。俺幽霊って初めて見ましたけど割と余裕っスねw!」

オリオン麦酒を旨そうに呑みながら圭太は得意気に語る。

「確か石原さとみに似てたって言ってたよな、俺も一度見てみたいよw」

「あぁ残念!もう俺が店の為に心を鬼にして追い出してやりましたからね!ははは!」

今の所三軒隣りの沖縄料理店に幽霊が出るという噂は聞かない。

そして一昨日圭太の店にラーメンを食いに行った妹の夏美はこう言っていた。

「圭太君の店、赤ちゃん抱いた髪の長い女の霊がいたよ!ダクトの換気扇の所から上半身だけ出して店内の様子を伺ってたみたい…久しぶりにちょっとゾッとしちゃったわw」

まあ、一体ぐらい霊が憑いてる方がその店は繁盛すると聞いた事がある。この事は圭太には黙っておくとしよう。

若い女性店員にラフテーの追加とオリオン麦酒のお代わりを頼んだ圭太は、ニタリとイヤラシイ笑みを浮かべてこう言った。

「ま、でもあんなに可愛いんならもう一回ぐらい会ってみてやってもいいかな?あのエンジのレインコートの女♪♪ わははは!!」

【了】

2014年06月16日(月) 21:46
ロビンM ◆D82I7DTk
投稿広場より掲載

 
  • ロビンM

    やあロビンミッシェルだ。

    まず管理人様、加筆した文章を書き換えて下さり有難う!感謝感激僕ヒデキです…ひ…

    血苺氏、ティアラ氏、紫姫氏、嬉しいコメサンクス!!いつも君達のお陰で創作意欲がギンギンと湧いてくるよ…にひ…

    な、なんと、そんな夢の様な女子会に俺も誘ってくれるのか?! 圭太と二人でとびきりお洒落な洋服を買いに行かないといけないな…ひひ…

    ラーメン食って、心スポ行って、小洒落たBARでお酒のんで、その後は……♡

    す、すまん!!

     
  • てぃあら

    男子がちと混じった女子会ですね♪

    (^_^)/□☆□\(^_^)

    ついでに(と言ったら何ですが)レインコートのお母さんも誘って、みんなで交代で赤ちゃんのお守りをしてあげましょう!

     
  • 紫姫

    念願叶って おめでとう 圭太さん ウヒヒヒ-。 初の 幽霊[s:17723] が、石原○○み似の母子 とは、ラッキー[s:20302] ほう かもね[s:20294] 私も ロビンさんと一緒に 圭太さんのお店へ 食べに行きたいです[s:20302] そして 夏美さん や 美菜さんや てぃあらさん や 血苺さん や こげさん で 皆さんと お話 したい いひひひ-

     
  • てぃあら

    ロビン・ミッシェルさん、ファンです。ひひひのひ…ひひ…。
    投稿広場からの掲載おめで~す。

    これは、雨の日に事故にでも遭って亡くなった母親と赤ちゃんの幽霊なのかな?
    圭太と幽霊のやり取りが、何か可愛かったです。

     
  • 0.血苺

    圭太さんが憑かれてしまったんでしょうか^^;

    何度も転んじゃって可哀想だけど、ちょっと笑いました。

    それにしても、何故赤ちゃんがゴミ箱に入っていたのかが謎ですね〜。

     

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