【怖い話】言葉にできない

言葉にできない

僕はオカルト好きだからよく妄想をする。よくやるのが、どんな状況が自分にとって怖いか?を、あれこれ設定を変えながら空想するたわいない遊び。

例えば、深夜のエレベーター…

マンションの自室を出て、エレベーターに乗る。何事も無く一階に到着。

チン…

その瞬間!!

ドアの隙間から次々となだれ込む大量のゴキブリ!!!驚いて飛び出そうとするもエントランスは一面、光沢のある、蠢く黒い絨毯と化している。

慌てて【閉】ボタンを連打!!そこに地震、転倒、停電。見るとドアは五センチ程開いたまま。

これは怖い…。銃を所持していれば迷わずこめかみを撃ち抜く所だ。

僕は絶叫するだろう。

――それはもはや、言語を超越した魂の叫び――

「うひぃぃやあぁぁぁ!!!!!!」

マンションの自室を出てエレベーターに乗る。先客がいた。1Fを押そうとするもそいつが立ち塞がっていて押せない。

(非常識な女だな…ま、どうせ一階だろうから押すまでもないか…)

水商売系の派手なドレスのその女、ヒールのせいもあるのだろうが見上げる程に背が高い。長い髪は腰にまで達し身長162cm僕からはまるで滝のように見える。

チン…

(8F…)

一つ下の階でドアが開く。が、誰も乗って来ない。女が降りる気配もない。

ドアが閉まる。

チン…

(7F!?)

薄暗い通路に人影はない。女は動かない。

(…………)

ドアが閉まる。再び外界と遮断され狭い空間に二人きり。

コツ

(え!?何!?今の音…)

チン…6F。

(…………)

コツ

(ボタンを押してる!?)

チン…5F

コツ

(指で押してるんじゃない…他の、何か硬い物で次の階を押してるんだ!!)

チン…4F

(…………)

コツ

(何なんだこの女!?)
“キチ○イに刃物キチ○イに刃物キチ○イに刃物…”嫌な予感が胸底から触手のように伸びて来て這いずり回る。

現実を把握しきれないまま、僕は打開策を求めて女の観察を始める。長身なので一見華奢に見えるが、肩幅が異様に広いのに気が付いた。肩の盛り上がりはパットなんかじゃなく明らかに三角筋によるものだ。長い髪に隠された首は間違いなく極太。でないとバランスが取れない。

(男…なのか!?)

チン…3F

奴は微動だにしない。当然のように誰も乗って来ない。

僕は決断する。

(次の階で飛び出そう。高校時代は100m12秒02、足には自信がある。だが喧嘩は駄目だ。身体は小さいし何より実戦経験がない。

問題は飛び出した後、階段を上に駆け上がるか、下に下りるかだ。下?…馬鹿か!!下手すりゃ鉢合わせじゃないか!!!

奴は刃物を隠し持ってる。そう考えとかないといざという時、対処出来ない。よし、部屋に戻って警察に電話だ。警察?被害に遭ってもいないのにか!?)

チン…2F

一瞬の躊躇が身体を硬直させ脱出に失敗してしまった。化け物に追い掛けられるシーンをリアルに想像してしまったのだ。映画なら絶対に助からない。部屋の解錠に手間取り必ず殺られる。

(いざとなったら、闘うしかない!!こうみえてもサッカーの名門○○実業高校で国立にも行ったんだ!!〈控えだったが…〉)

チン…(ええ!?3F!!!)

(…………宣戦布告!?。何でだ!?僕は、誰かに恨まれてたっけ?)

チン…4F

(…………)

チン…5F

(…………)

チン…6F

僕は覚悟を決めた。奴がどう出るか、臨戦態勢を整えてひたすら待つのだ。それまでは現状維持。こちらからは動かない。

族のパシリだった従兄のサブちゃんの言葉を思い出す。「喧嘩の必勝法を教えてやる。相手の髪を両手で掴んで、まずは鼻っ柱に頭突き。うずくまった奴の顔面に膝をぶちかます、それで決まり」脳内でシミュレーションを繰り返す。頭付きかますには跳ばなきゃならない、それが多少気になった。

(そうか!!ヘディングの要領だ!!来るなら来い!!ぶっ殺してやる!!)

チン…7F

ぶっ殺すとか考えている癖に、エレベーターから飛び出す事も出来ない自分に絶望する。それを見越してか、突然、奴が、しゃがれた声で歌い始めた。

「あたまテカテカ♪さえてピカピカ♪それがどうした♪ぼくドラえもん♪」

(ひっ!!)ズルズル…歌に合わせて長い髪が上にずり上がって行く。ズル…ズルズル…想定外の展開に思考が付いていかない。

ドサ!!

ドレスの向こうに大量の髪の毛が落ち、広がった。

視線を上げると、奴は、ツルツルの頭を直立させている。その形状に僕は思わず目を見張った。

(ジダンだ!!かつてフランス代表だったジネディーヌ・ジダン!!)

チン…8F

ジダンはデカい鉈(なた)を隠し持っていた。ストレッチのつもりなのか、彼はそれを大きく振り上げると刃の無い方で自らの逞しい首や肩をパシパシ叩き始める。袖が大きくめくれて二の腕が露になる。紛れもなく、超一流アスリートの上腕二頭筋だ。

(ああ…どう考えても僕に勝ち目は無い。もはや、運命に身を委ねるしかないのだ。ここで人生を終えるのは不本意だが、ジダンなら、あのジダンなら、許せる気がする。超絶トラップ、怒涛のファンタジスタ、昔、死ぬ程憧れたジダン…。貴方になら殺されてもいい。それがご意志なら喜んで従います…)

ジダンだと思い込む事でこれから起こるであろう悲劇を少しでも緩和しようとしたのだ。でないと、自分があまりにも可哀想過ぎるから。

ジダンの言動は常に僕の意表を突く。

「どこでもドアー」

ポツリそう呟くとゆっくりと振り向いた。

(うわ!!)その顔は、僕の幻想を粉砕どころか人間ですらなかった。顔面そのものが陥没し、そこに、隙間無くびっしりと、蛆が蠢いていたのだ。

目も口も無いのに奴は僕を見下ろし、今度は叫んだ。

「どこでもドアー!!」口の辺りから蛆がボトボト落ちる。強烈な腐臭が鼻を突く。

チン…ドアが開いた。

(助けて、くれるのか?いや、下さるのですか?)

思いがけない行動に、僕は感謝の気持ちで一杯になる。生殺与奪の権利を一手に握っているサイコ野郎は、今やイエス・キリストよりもお釈迦様よりも天照大御神よりも確実に、格上の存在なのだ。

(ありがとうございます!!)
僕は心の中で礼を言い、ドアから出ようとした。

メリ!!

一瞬、首筋に、雷に打たれたような衝撃が走った。

グラッ

首が大きく傾くのが分かった。視界が瞬時に暗転する。

ゴト…頭が何かにぶち当たる音がひどく遠くで聞こえた。

口の中に何かが入ろうとしている。

薄れゆく意識の中で、僕は叫ぼうとした。

「ωφε!!∇☆@σ∀φ!!!(ヒェー!!もしかして蛆!!!)」

言葉に、ならない…

以上、空想を文章にしてみたらただの糞だったというお話。

でもさ、解剖して人の中身見てみたかった、なんて妄想よりは、まだまだ健全だよね?w

2014年08月17日(日) 22:02
天通の七不思議さん ◆-
投稿広場より掲載

 
  • 匿名

    ◎素直に嬉しかったです。下の怖いとのコメントもありがと。歌のタイトル?どうでしょう(笑)

     
  • 匿名

    ↓言われるだろうと思ってました。でもあの一文は俺の怒りからきた皮肉。あの女は一生医療施設に隔離すべきです。社会復帰を許すなら、再度事件を起こした場合国が全ての責任を負うと明記すべき。悪魔は封印しないとね。未成年とか関係ない。殺しがいけない事くらい幼稚園児でも分かる。

     
  • 匿名

    事件で亡くなった人がいて
    その遺族はどのような気持ちなのかを考えたら、最後の一文は不要と言うか…書いてはいけない内容だと思います

    妄想であっても投稿内容に関しては◎だと思います

     
  • 匿名

    歌のタイトルシリーズ?

     
  • 匿名

    空想でもコエェェェ

     

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