【SS】夏休みの日記

夏休みの日記

僕は小学校で先生をしている。
夏休みの宿題として、日記と、1日のスケジュールを生徒に書かせることになった。
休みだからと言って生活のリズムを崩さないようにと、勉強する時間を設けさせるためだ。

二学期初日、僕の机の上には生徒たちの提出物で山ができていた。
一クラス35名。単純に考えて35名の30日間の日記を僕は読むことになるとして、一体どれだけのページをめくることになるのだろうか。気が遠くなる。
しかし大切な生徒だ。一人一人にちゃんとコメントをつけて返そう。

僕は家に仕事を持ち込みたくなかったので、許される限り放課後の教室で生徒の日記を読むことにした。

日が傾いて、西日で教室が真っ赤に染まる。

何冊目だろう。学校指定のノートの山の中に一冊だけ、大学ノートが紛れていた。それも、ずいぶん古めかしい。
他の職員のものだろうか。しかし、名前の欄には子供の字で「ジロウ」と書かれてある。
僕は、このノートが生徒の物なのかどうか調べるためにノートをめくった。

どうやら、生徒の物のようだ。ノートには簡単な日記と、一日のスケジュールが書かれていた。宿題として出した内容だ。
生徒の物とわかったので、僕は日記を読み始めた。

7がつ28日
きょうはみんなでくんれんをしました

7がつ29日
みんなでラジオをきいてよろこびました

7月30日
おとうさんからおてがみがとどきました

僕は、何ともいえない違和感を感じながらもスケジュールの方に目を移した。

6じ おきる
7じ たいそう
   ごはん
8じ がっこうにいく
9じ くんれん
12じ おひるごはん
13じ くんれん
15じ はたけ
17じ ごはん
19じ らじお
20じ べんきょう
21じ ねる

…なにかがおかしい。くんれんってなんだ?
謎を解明するためにも、僕はページをめくる。

8がつ6にち
まぶしくなって、ぼくはしにました

「お水ちょうだい」

は、と僕は机から頭を上げた。
西日でいっぱいだった教室はいつのまにか薄暗くなっていた。
子供の声で目を覚まし、さっきまで読んでいたノートを探したが、無くなっていた。

仕方なく次のノートに手を伸ばす。普通の、学校指定のノートだ。

8がつ7にち
きょうは、パパとママといっしょにかいすいよくに行って、かえりにファミレスにいって、ハンバーグをたべました。とってもおいしかったです。よるは、おともだちとはなびをしました。たのしかったです。

世の中には、忘れたくない思い出と、忘れてはいけない思い出がある。

 
  • くるみちゃん

    夏休みももう終わりですね。
    戦争経験者にとって夏はやはり苦い思い出なのでしょうね。

     

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