【怖い話】苦狂日記 叫びの詩③/HN:忍冬

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「古田さん、何でオーラメディカの会場が移動になったんですかね?」

「俺もよく分からないけど…
この手の催眠商法、詐欺商法にはよくある事みたい…
空き店舗を利用した期間限定の会場を使うのは、逃げる為、トラブル回避の為と言われてるよ。
何かトラブルがあって、消費者がその業者に連絡したい時があっても、そこに業者がいなければ連絡のしようがない。
しかも本社の所在地が遠方だったり、不在がちだったり、なかなか連絡が取れない事が結構ある。
しかもその連絡先が架空のものだったら、被害の回復は困難になってしまうんだ。
だからこの手の業者は期間限定の会場を利用するみたいだよ」

「なるほど」

「そして移動する前に商品を高額で売り付けるんだよ。
私達が移動してしまったら、もうこの商品は買えませんよ、特許を取っているので他では手に入りませんよってね」

そんな話をしてる最中だった。
また私は何かの気配を感じ、自然と今度は台所の方に目をやった。
しかし、さっきと同じで何も見えないし、何も聞こえない…
だがやはり、そこには何者かの気配だけがあり、ビリビリと直接肌にその存在が伝わってきていた。
今度は村瀬も感じたのか、彼も黙って同じ方向を凝視していた。
その状態のまま数十秒経った時だった…
突然机の上に置いてあった、コーラを汲んだガラスのコップが『ガシャーン』という凄まじい音と共に砕け散ったのだ。
普通落としたり、物がぶつかったりしたら、割れると思うのだが、何故か割れた訳ではなく粉々に砕けたのだ。

私と村瀬は一瞬体を震わせ、その光景を理解出来ず固まってしまった。
そしてその数秒後、今度は村瀬のPCの液晶画面が『バーン…バーン…』と音を立てて砕け散っていった…
そして最後に机の上に置いてあった、デジカメが『ボン』と音を立てて飛び跳ねた…

私達は全く理解出来ず、動く事も喋る事も出来ないまましばらく固まってしまった。

◇◇◇◇

「今のなんスか?」

「解らん…」

会話が出来る頃にはその気配も無くなっていた。

取り敢えずコーラでビシャビシャになった机の上や、コップの破片、PCの砕けた液晶等を二人で片付ける事にした。

二人共、得体のしれない恐怖で少し体が震えていたような気がする。

そして片付けた後、PCやデジカメが起動するかどうか確かめたが…
両方共ダメだった…
完全に壊れてしまっていた…

デジカメはデータまでイカれてしまっていた。
PCの方は分からないが、古いPCだったらしく、直す程の物じゃないから、買い替えると言って、そのまま放置する事にした。

そしてこの得体の知れない存在が、村瀬の言っていた家に誰かがいるという事かと聞くと…

「分からないッス…
そうかもしれないけど、こんな物が壊れる事は初めてッス…」

と言って落ち着かない様子で部屋の中を見回していた。

そしてもう得体の知れない者の気配は消えていたが…
これ以上、この部屋に居る勇気もなく、取り敢えず二人で部屋から出る事にした。

「村瀬、これからどうするんだ?」

「取り敢えず何処か泊めてくれそうな友達を探しますよ。
もうこの家には居たくないですよ」

「そうだよな…
俺家に泊めてあげたいんだけど、俺家狭いし、第一嫁が何て言うか…」

「大丈夫ッスよ、泊めてくれそうな友達はいますから…」

「そっか…何かあったら連絡くれ」

そう言って私は村瀬と別れ家に帰った…

◇◇◇◇

その日の夜、突然会社から電話があり、急遽明日から一週間位、本社の方に出張に行ってほしいという話をされた。
急な話だったが断る事も出来ず、私は直ぐに出張の用意をして、その日は早く眠ってしまった。

◇◇◇◇

次の日、本社の方に車で向かった訳だが、今回は荷物になると思い、ノートPCは会社に寄って置いてきた。

この事も後に後悔する事になるのたが…
この時はまだ日記に書かれている事よりも仕事に集中したいという思いと、なんとなくだが日記を読む気分にはなれなかったのだ。

それから出張中も、何度か村瀬とは連絡を取り合っていたが、あれから別に何も変わった事もなく、今では自分の家に戻っているという事だった。

私もその事を聞いて安心したのだが。
何故か妙な違和感を感じるようになってきていた。
それは村瀬の喋り方というか、なんとなくだけど、いつもの村瀬じゃないというか…
なんかそんな感じがしていた。

そしてその違和感が確信に変わった出来事が起きた。

それは本社の仕事がかなり忙しくなり、私の出張が伸ばされ、更に応援で村瀬も本社の方に出張に来た時の事。

私は出張中、会社が用意してくれた小さな温泉付きのホテルに宿泊していたのだが。
村瀬も同じホテルに宿泊する事になり、時間が合えば風呂や食事等は一緒に行動するようになっていた。

その日も私が仕事を終え、ホテルに戻ると、丁度村瀬も戻って来ていた。

「お疲れッス、飯の前に一緒に風呂行きませんか?」

「いいけど、先に行ってて、着替えて用意したら行くから」

「了解です」

私は部屋に戻り、着替えてから洗面用具を持ち、風呂へ向かった。

脱衣場に入ると、村瀬が素っ裸になり、体重計に乗っていた。

「ヤベー、また太っちまった」

村瀬は独り言を言うと、そのまま浴場に向かおうとしたのだが、私は彼の見に付けている物が気になって声を掛けた。

「村瀬、そのネック外せ、そんなもん付けて温泉に入ったら、錆びちまうかもしんないぞ」

「大丈夫ッスよ、これ本物なんで錆びないッス」

村瀬の言ってる意味がイマイチ解らなかったが、彼はそのまま浴場に入って行ってしまった。

まあ…本人が大丈夫と言うのなら大丈夫なんだろうと思い、私も浴場に向かった。

浴場の広さは20人も入ればいっぱいになってしまうだろうか…
湯船は3つあり、洗い場も10人位は座れるだろう…
そして浴場全体が薄暗く、所々に段差があり、気をつけて歩かないと転んでしまいそうな浴場だった。

私は軽く湯に浸かり、直ぐに洗い場で体を洗い始めた。
すると直ぐに村瀬が隣に座り、彼も体を洗い始めた。
私はどうしてもネックレスが気になり、彼に聞いてみる事にした。

「なぁ…そのネック何が本物なの?」

「これッスか?
実はこれ普通で買ったら五万位するらしいんスよ」

「ハッ?マジで?」

どう見てもネットとかで五千円位で売ってそうな、シルバー系のネックレスにしか見えなかったのたが、村瀬は自信たっぷりに見せびらかしてきた。

「これ継母からもらったんスよ。
友達の家に泊めてもらってる時に、俺家に継母が来たみたいなんですよね。
それで俺が留守だから携帯に電話掛けてきて、それで一回自分家帰って、そこでもらったんですよね」

「そうなんだ…でも五万もするようには見えないけど…」

「俺も最初は半信半疑だったんスけど、これを身に付けてから家で変な事が起きなくなったんですよ。
そして、なんか体が軽くなったっていうか…
何やっても全然疲れなくなったし、あんまり寝なくても普通に動けるようになったんですよね」

「マジかよ?」

「継母に俺家であった怪奇現象の事言ったら、魔除けになるし、不思議なパワーがあるから身に付けてろって言われたんですよ。
そしたら本当に継母の言う通りになったんですよね」

「それで自分の家に戻ってたんだ」

「そうなんですよ。
そうだ、古田さんの分も継母に言って手に入れましょうか?
そしたら難病も多分治りますよ」

「俺のはいいよ…そんなんで治ったら医者が要らなくなる」

「そうッスか…本当に凄い効果あるのにな…
あ、あとあの日記の件…
もういいッスわ、多分俺の勘違いッスわ」

「そう…なのか?…」

「俺、継母と色々話したんスわ、ネックレス貰ってから頻繁に俺家に来るようになって、色々気に掛けてくれるってこというか…本当に心配してくれてるみたいで。
俺、継母の事誤解してたかもしんないッス。
だからあの日記の事は忘れてください」

「そっか…そんなんならいいけど…
俺も忙しくて全然日記読んでなかったから…」

「もう日記消していいですよ。解決しましたから」

「そっか…分かったよ…」

この時、村瀬に感じていた違和感の理由が解った。
彼は普段、あまり笑顔を見せたり、笑って会話するタイプではないのだが、この時は終始笑顔で時折笑いながら話をしていた。
少し不気味にも感じたが、それ以上何も感じなかったし、あまり気にしないようにした。

◇◇◇◇

それから何事もなく、本社での仕事も終わり、その日ホテルに泊まって、次の日の朝地元に帰れるという時に嫁から電話がかかってきた。

「ねぇ、今直ぐ帰ってこれない?」

電話に出た途端叫ぶように言ってきた。

「おい、どうした?」

「何か…何かが家に居るの」

かなり取り乱してるようで、息遣いまで電話越しに聞こえてきた。

「何かって何だよ?」

「分からないの…分からないけど何かが家に居るのよ」

そう言った時だった、突然何かが割れる様な『バリーン』という音が電話越しに聞こえてきた。

「キャーー」

「おい、大丈夫か?何があった?」

「分からない…分からないけど何かが壊れる音がした」

「取り敢えず落ち着け、そして家から出ろ」

「うん、わかった」

そう言って妻の絵理子は家から出て自分の車に移動したようだった。
しばらく興奮状態だったが、しばらくすると落ち着いてきて、今まであった事を話始めた。

絵理子の話だと、家でテレビを見ながら寛いでいたらしい。
すると、何者かの気配が玄関の方から扉を開けずに、音も立てずにスゥーっと入ってきたらしいのだ。
(何だろ?)と思い、そちらの方を見たが何も見えなくて、何者かの気配だけがそこにあったという。
少しするとその気配が家の中をあちこち移動しはじめたそうだ。
それで怖くなり、私に電話をかけてきたらしいのだ。

「ねぇ…今直ぐ帰ってこれない?怖くて家に入れないよ、まだ家の中にいるかもしれないし…」

「仕事は終わってるからな…
本社に連絡取って帰させてもらうように言ってみるよ」

「うん、お願い…」

私は電話を切ると、直ぐに本社に連絡をいれ、妻が急に具合が悪くなったと理由をつけて、帰る事にした。

泊まっているホテルから自宅まで、車で飛ばせば二時間半位で帰る事が出来る。
私はノンストップで自宅まで車を走らせた。

◇◇◇◇

自宅に着いた時には夜10時を過ぎていた。
絵理子はずっと自分の車の中にいたらしく、私の顔を見ると落ち着いたのか…
「ごめんね」と一言言って、私の後ろに隠れるように着いてきて、一緒に家に入って行った。

家に入ると、別に変わった様子はなかった。
そして何か壊れた物がないかと家中見て回った。

すると、私の部屋に置いてあるPCの電源ランプが点灯してない事に気が付いた。
最初コンセントから電源コードが抜けたかな?と思ったが、電源コードは挿さったままだった。
見る限り特別異常はなく、電源を押してみたり色々と試してみたが、全て無駄で全く動かなくなっていた…

その他は何も壊れたりしてる物もなく、何者かの気配ももう消えていた …

その後二人で軽く食事を取り、私は仕事や車の運転等で疲れたのか、直ぐに眠ってしまった。

◇◇◇◇

次の日仕事は休みだった。
私は朝から近くのPCショップに壊れたPCを持ち込み、修理を依頼した。

その帰り、昨日の事を村瀬に伝えようと彼に電話をかけた。

「お疲れッス、どうしたんですか?」

「いや…実は俺家でも何もしてないのにPCが壊れちまって…
壊れる前に嫁がやたら何かの気配を感じていたみたいなんだ…」

「マジッスか?やっぱり継母に言ってネックレス手に入れた方がいいんじゃないッスか?」

「いや、ネックレスは要らないけど…」

「そうッスか…せっかく古田さんの分調べてもらったんですけどね」

「調べるって?」

「なんか人それぞれ合うネックレスがあるみたいで、使う素材や値段も違うらしいんスよ」

「何を基準に変わるんだよ?」

「なんか名前とか、生年月日とか住んでる場所とかみたいです」

「ハッ?調べてもらったって事は俺の事色々言ったのか?」

「言っちゃいましたが…マズかったですか?」

「マズかったもなにも、そういう事は一言言ってくれ、もしかして住所も言ったのか?」

「詳しい場所までは言わなかったッスけど、大体の場所は言っちゃいました」

「マジかよ…」

私は会った事もない人に自分の個人情報を知られるのは、ちょっと嫌だったが、もう言ってしまったのなら仕方ないと思い、そのまま電話を切ろうとした…

「そういえば、俺あと3日位本社の方にいなきゃなんないんスよ」

「え…そっか頑張れよ」

「出張終わったら有休取って、俺セミナーに参加するんスよ」

「セミナーって?」

「なんか体の内側の力を増幅させるだか…なんかそんな感じで…
このネックレスのパワーももっと協力にするセミナーだと言ってました」

「それも継母に誘われたのか?」

「そうですよ。なんか2泊3日でパワースポットみたいな所に行くみたいッスわ」

「そうなんだ…村瀬が決めた事なんだから、あんまり言いたくないけど、変な宗教とか関係してるんじゃないだろうな?」

「大丈夫ッスよ、ただの健康セミナーみたいなもんですよ」

「そっか…頑張れよ」

私はそれ以上何も言わず電話を切った。

続く…

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