【怖い話】苦狂日記 叫びの詩②/HN:忍冬

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部屋が暗くなってきたので、村瀬は立ち上がり電気を点けて、カーテンを閉めた。

「線維筋痛症って辛い病気なんですね、下痢が続くとかって何なんですか?」

「辛くない病気なんてあんまりないと思うよ。下痢は線維筋痛症の症状なのか、合併症なのか、薬の副作用なのか、よく判らないけど、線維筋痛症の人は結構下痢に苦しんでる人はいるみたいだよ…」

「合併症って何スか?」

「合併症とは。その病気が原因で起こる病気の事だよ。
重い病気や、複雑な病気程、合併症もあるし。
薬の副作用も強力な薬を使うから半端なものじゃない…
実は俺も薬の副作用で腎臓の機能が50%以下になってしまったし、肝機能も低下してきてる…
俺も合併症が色々あるし、いつまで働いていけるか判らないんだよ」

「マジッスか…」

「それより日記に書いてある、信兄って村瀬の親父の事かい?」

「そうッス」

「じゃあやっぱりこの日記は、村瀬の叔母さんの物なんだね。」

私達はそのまま日記を読み進めた…

―井上陽子の日記―

平成22年7月19日 (月)

今日は朝から大騒ぎした
信兄が遊びに来てくれたから…
新しい奥さんは若くて美人だった、とっても素敵な人
信兄にはもったいないような気がする…
夏美も久しぶりに笑ってた
嬉しかった
笑顔は大事
毎日笑顔で居られたら最高だね
信兄も幸せそうだったなぁ…
ちょっと羨ましいな…

『時は川の流れの様
時に早く
時に遅く
穏やかな時
激流の時
それは時によって違う
違うけど同じ
同じ川
同じ時』

・・・・・・・・・・・・・・

日記には時々、詩のようなものが書かれていた。
詩の言葉には飛躍的な表現があるが、多分書いた時の彼女の心理状態を表していたのではないだろうか?…

「なぁ…村瀬、新しい奥さんは若くて美人って書いてあるけど…
継母って何歳なの?」

「33です、俺の8つ上ですよ…
親父と17違います」

「マジで?それじゃあ夫婦って言うより、親子だな。
村瀬も母親って言うより、姉貴って感じだろ?」

「そうなんですよ。
だから余計居づらくなっちゃって…
実家出てきたんスよね…」

「そうなんだ…解るような気がする…」

ふと時計を見るともう夜の8時を過ぎていた…

「ヤベ…もうこんな時間、早く帰らないと嫁に怒られるわ。
日記の続きは家で見る事にするよ」

そう言って私は村瀬のアパートから出て、自宅へと車を走らせた。

自宅に着くと。早速預かったデジカメから日記のデータを自室のPCにコピーして…
そして次の日には村瀬にデジカメを返した。

それから仕事の忙しさから日記を見る暇もなく、数日か過ぎていった…

◇◇◇◇

そんなある日、また仕事中に村瀬から声をかけられた…

「古田さん、なんかヤバいかも…」

村瀬は何かを焦っているのか、どこか挙動がおかしかった…

「どうした?…何かあったのか?」

「実は…継母がうちのアパートに来たんですよね…」

「それがどうしたの?」

「今まで一回も来た事ないんですよ…
おかしくないスか?」

「そうでもないような気がするけど…
継母は何しに村瀬の所に来たんだ?」

「それが解らないんですよ…
ただ様子を見に来たって言って、部屋に上がってジュース飲んで帰っていきましたわ…」

「そうなんだ…なんだろうな…」

「俺が日記見たの気付いたんですかね?」

「どうだろうね…
でも考え過ぎじゃないか?
あんまり気にするな」

この時、私が日記の最後の方にも目を通していれば、もっと別の事を言ってあげれてたのではないかと思う…
だがこの時は村瀬の考え過ぎだろうと思ってしまったのだ…

その日私は家に帰ると、久しぶりに日記の続きに目を通した。

―井上陽子の日記―

平成22年8月6日 (金)

今日は夏美の病院の日だった
暑い中、夏美は頑張って歩いていたな
杖も新しいのを買ってあげたい…
新しい杖はもっと使いやすい物を買ってあげよ
本当は杖なんてなくても普通に歩けたらいいのに

またお薬が増えてしまったね
増えたのはコロネルとトリプタノール、便通と鬱病の薬
これで全部で16種類、もうすっかり薬漬けみたくなってしまったね
副作用も色々あるし心配だよ
早く良くなって、笑顔で暮らしたいね
旅行とかにも一緒に行きたいね

平成22年9月14日 (火)

今日はアーちゃんが来てくれました
色々お土産貰ったし、何より夏美の笑顔が見れた
楽しかったね
夏美は疲れたのかな?
今ぐっすり寝ています
私も久しぶりに笑ったな…
アーちゃんありがとう

・・・・・・・・・・・・・・

問題のアーちゃんなる人物がここで初めて登場する。
村瀬の言う通り、アーちゃんが村瀬の継母なら、もっと前から登場してる訳だが…
アーちゃんの本名等は書かれておらず、継母だと断定する事も何も書いていなかった。

◇◇◇◇

それから私は。出張で一週間位、地元を離れた…
暇があれば、日記を読もうと思い、会社からノートPCを持って行ったのだが…
結局そんな暇もなく、一度も読まず出張を終わらせ帰ってきてしまった。

それから久しぶりに出社すると、村瀬が私の顔を見た途端声をかけてきた…

「古田さん、お帰りッス」

「ただいま」

この時私は、村瀬が変な事に気が付いた…
疲れているのか、やたらゲッソリとしてしまっているのだ。

「村瀬、この一週間で随分窶れたんでないか?」

「分かります?あんま寝てないんですよ」

「大丈夫か?何かあったのか?」

「なんか家が変なんですよ…
家に誰か居るっていうか、常に誰かに見られてるような気がするんですよ」

「もしかして幽霊か?」

「やめてくださいよ、マジでヤバイんですから」

「前に行った時はそんな感じしなかったけどな」

「判るんですか?」

「なんとなくだけどな、帰り寄って見てやろうか?」

「頼みますわ」

私は昔から霊感みたいなものがあり、そういう所に行けば、何かしら感じる事が出来た。
でも感じとれるだけで除霊等、専門的な事は一切出来ないのだが…
それでも何か解るかなと思い、仕事の帰りに村瀬のアパートへ向かった。

村瀬の部屋に上がると、私の好きなコーラとお菓子を買って来てくれていた。

「どうッスか?何か感じます?」

「イヤ別に…いつもの村瀬の部屋だよ」

「そうッスか…」

「考え過ぎなんじゃないのか?
最近色々あったから、神経が高ぶってんだろ」

「そうッスかねぇ…」

本当にこの時点では何も感じなかった…
色々見て回ったが、普段と何も変わらない普通の部屋…
私は彼の思い過ごしだと思いそのまま帰ろうとしたのだが…
せっかく来たので彼と日記の続きを読む事にした。

―井上陽子の日記―

平成22年9月22日 (水)

またアーちゃんが来てくれました
すっかり夏美も懐いてしまった
今度、電位治療器の体験会場に連れて行ってくれるみたい
その治療器で癌や糖尿病、難病が治った人がいるみたい
夏美の病気も治ってくれたらいいな
アーちゃん良い情報ありがとう
今から金曜日が楽しみです
それより電位治療器ってどんなのだろ?

平成22年9月24日 (金)

今日は夏美とアーちゃんに連れられて、電位治療器の会場に行ってきました
会場は意外と近かった
あんなスーパーの一角でやってると思わなかった
あと老人が多かったなぁ…
でも椅子に座ってるだけだし、会場も近い。
これなら夏美も毎日来れそう
しかも本当に色々な病気を治してる人がいっぱいいるみたい。
こんなのあるならもっと早く知りたかったぁ
アーちゃんには感謝です

平成22年10月1日 (金)

オーラメディカの会場に通って一週間
夏美の調子が日に日に良くなってきてるよ~な気がする。
私も最近体の調子が良い
これもオーラメディカのお陰かな…

平成22年10月8日 (金)

今日は夏美の病院の日でした
最近、先生から同じような事しか言われない…
線維筋痛症って血液検査等で反応が出ないから難しいみたい…
でも最近調子が良い事を伝えると、トラムセットの量が少しだけ減らされた
やっぱり薬の量が減ると嬉しいな
薬が無くても普通の生活が出来るようになりたいね。

・・・・・・・・・・・・・・

「古田さん、電位治療器って分かります?」

「電位治療器ってのは、肩凝りや頭痛、不眠症とか便秘とかに効果のある医療機器の事みたいだよ。
俺も詳しくは解らないけど…
高電圧をかけて、電界を発生させ、その中に人間の体を置く事で治療するらしい…
実は俺もこの電位治療器の体験会場に一度行った事があるんだ」

「どんな感じでした?」

「俺が行った所は、潰れたコンビニの建物を借りてやってたんだけど…
まぁ…簡単に言えば催眠商法だったよ」

「催眠って催眠術の催眠ですか?」

「そう…その催眠。この電位治療器ってのは癌や糖尿病、難病を治せる効果は無いよ。
これで治せるなら医者や病院が要らなくなっちゃうかもね」

「でも日記には治ってる人がいるって書いてますよ」

「多分プラシーボ効果を利用してんだよ。
体験会場に来るのは体の調子が悪い人や老人が多い。
どこかしらに不調を抱えて、少しでも良い健康グッズを探してる人が多いからね。
その人達に実際に体験させて、その間に暗示にかけていくんだよ。
多分マニュアルか何かあるんだろうけど…写真や資料を見せながら、あの人は癌が治った、この人は難病が治ったと言って、治療器の効果を信じ込ませていくんだ。
時にはサクラを使ったり、特許取得してると言ってみたり、高名な医学者、又は医療に携わってる人の名前まで出したりしてね。
そうやって暗示にかけてプラシーボ効果で、体の調子が良くなったと勘違いさせて、この治療器を高額で売り付けるんだよ

「恐いッスね…」

「でも買う人は、これで病気が治ると信じてしまうんだよ。
特に長年病気に苦しんでたり、俺みたいな難病もってる人とか、本当にそれで治せるんなら買ってしまうと思うよ」

「でも効果は無いんですよね?」

「それが微妙なんだよね。
本当にこの治療器で治した人もいるらしいんだよ。
病は気からってやつだろ…
最後まで治ると信じ込んだんだろうね…
でも、やっぱりほとんどの人は効果は無いよ。
病気は根本から治さんとね。プラシーボ効果だけじゃどうにもならん事がほとんどだよ」

そしてまた日記の続きを読もうとした時だった。

私の頭が勝手に玄関のドアの方を向いたのだ…

上手く説明出来ないのだが…
目の前に突然何かが飛んできて、それを無意識の内にかわした事がある人がいると思う。
それに似た感じと言えばいいだろうか…

無意識の内に玄関の方に目がいったのだ。
でも、そこには誰も居ないし、何もない…だが何者かの気配だけがそこにはあった。

そいつは動く訳じゃなく、じっとこちらの動きを伺っている様だった。

私は昔から幽霊と言われる者を何度か見た事がある。
突然消えてしまう女の子を見たり。
心霊スポットと言われる場所で、無実を叫びながら処刑される人を見たり。
火災現場の炎の中に無表情の男が立っていたり。
誰も居ないのに物が動いたり、ドアが開いたり閉まったりするところも見た事がある。

昔からそういう体験をしてるので、ちょっとの事ではビビったりはしないのだが…
この時は正直恐怖をおぼえた…

突然現れた何者かの気配…
姿も見えず、音も声も聞こえない。
ただそこに居るという事だけは確実に解るのだ。

どんな形をしてるのか、どんな色なのかも分からないのだが。
そいつはじっとこちらを見てるのが分かった。

これが本当の第六感ってやつではないだろうか?
見える訳じゃなく、触れる訳じゃなく、聞こえる訳でもない。
本当に感じるのだ。
それも直接肌にビリビリと伝わってくる感じがした。

ハッキリ言って怖かったし動けなかった。
そうして固まっていると、その気配はスッと消えてしまった。

「古田さんどうしたんスか?」

「いや……何でもない……」

どうやら村瀬は何も感じていないらしく、変な顔で私の顔を見ていた。

私は村瀬を心配させたくなかったし。気のせいかもしれないと思い、日記の続きを読む事にした。

―井上陽子の日記―

平成22年11月1日 (月)

今日から11月、寒くなってきました
そろそろ灯油を買わなくては…
今日も日課のオーラメディカの会場に行ってきました。
そしてショックな事がありました。
11月いっぱいで今の会場から他の会場に移動になるみたいです…
せっかく夏美の調子が良くなってきてるのに…
オーラメディカ欲しいけど、オーラメディカ一式で260万位するみたい…
買えない金額ではないけど…
アーちゃんに相談してみようと思います。
でも夏美が元気になるなら260万位安いのかもしれない
病院代や薬代だって高いし、このまま病院通っても治る保証はないし…
病院代だって何年も通えば260万を超えてしまう…
どうすれば良いのだろう?

『長い夜は終わり 朝日が昇り始めた
私達を優しく包み込み 心を満たす
苦痛の道は分岐点を向かえたようだ
分かれた全ての道から誘惑の声が聞こえる
正しい道を歩けるのだろうか…
光の道はあるのだろうか…
でも今は歩く事しか出来ない
その道がまた長い夜に続いても…』

平成22年11月18日 (木)

遂にオーラメディカを買いました
アーちゃんの車で運んでくれて、設置も協力してくれた
分からない事があればアーちゃんが聞いてくれるし、本当に助かった
アーちゃんには本当に感謝しか言いようがないね。

・・・・・・・・・・・・・・

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