【SS】命の選択/HN:いくゆみ

命の選択/HN:いくゆみ

誰だか知らない奴が目の前にいた。

「やぁ、目覚めたかい?」

状況を思い出すのに時間が掛かったが少しずつ思い出してきた。

私たちは5人で卒業旅行に来ていたはずだ。

「他の皆は?あんた誰?」

当然の質問である。

「その質問にはあまり意味がないから答えるつもりはないよ」

知らない男は飄々と答えた。

「なら帰る。あんたに付き合う必要も私にはない」

私は少し怒ったように返す。

「付き合う必要はないよ、必然ならあるけど」

何なんだ、こいつ。

徐々にだが記憶が蘇ってきた。

思えば可笑しい事だらけだった。

こいつの話し声以外に何も聞こえない。

それから窓の外が何も無い。

「そうか…私たちは死んだのか」

友人の運転で卒業旅行に来ていた。

その途中で…。

「死んでいるとも言えるし生きているとも言える」

知らない男の答えはいつも人の感情を逆撫でするかのようである。

「物事というのは箱を開けて確認して初めて事実になるのさ、開けられていない箱は可能性を残している」

シュレディンガーの猫箱か。

「もし一人の命で残り四人が助かるとしたら君は誰の命を差し出す?」

下らない話だ。

そんなの選べる訳がない。

そんな質問にこそ意味がない。

「そんなの自分以外に選択肢がない」

私は答えた。

「あぁ、駄目駄目!日本人って奴はいつもそうだ、自己犠牲万歳。そんなんじゃ詰まらない、自分以外にしてくれる?」

本当にムカつく奴だ。

今のは後付けルールじゃないのか、最初にちゃんと言えよ。

これは推測だが他の皆も似たような場所で似たようなムカつく奴を相手に同じような質問をされているのだろう。

選ばれた人数が多い人が犠牲になるという事に違いない。

「あぁ、そうそう時間制限はこの砂時計の砂が下に落ちきるまでね」

わかってはいた。

いつまでも時間をくれるような奴には見えない。

あの流れ方から見れば1時間から2時間くらいだろう。

「うぉぉりゃあああ」

砂時計に触ろうとしたが触れられなかった。

「あははは!ウケる!触れる訳ないじゃん」

これも予想はしていたが一応試してみた。

「正確な時間はあと1時間48分だよ。まぁ命を決めるんだ、ギリギリまで待つさ」

こいつ本当にムカつく…がヒントは常に出している。

「寝るわ、5分前くらいに起こして」

答えなど出しようもないものは考えても無駄だ。

なら考える必要もない。

答えは最初から、そこにあった。

「諦めちゃったのかなぁ~人間諦めが肝心とも言うしね」

私は無視して寝た。

「5分前だ、そろそろ回答を聞こうか」

私は伸びをして起きた。

「あんたムカつくけど優しい奴だ」

男は真面目な顔になった。

「ヒントは結構前にあったよ」

男は下を向いている。

「私が選ぶ犠牲者は……………………………」

男はニヤリと笑っていた。

「それが答えなら行くがいいさ、ちゃんと自分で確かめてくるといい」

私は迷わずに出口へと向かった。

「Thank You、神様」

どうやら神様というのは奇跡がお好きらしい。

「本日、お昼頃…○○県××市にて……」

ガードレールを突き破っての大事故だった。

下は崖になっていて生存者は絶望的。

「今入った情報によると……奇跡です!奇跡的に全員無傷だそうです」

私たちは全員で生還した。

数分前。

「5分前だ、そろそろ回答を聞こうか」

「あんたムカつくけど優しい奴だ、ヒントは結構前にあったよ」

私は迷わずに叫ぶ。

「私が選ぶ犠牲者は……………………………いない!!!」

そうなのだ。

犠牲者など必要ない。

シュレディンガーの猫箱はまだ確認されていない。

犠牲者を一人選べば四人は助かる。

あいつはそう言った。

頓知のようだが最初から選ぶ必要がない。

五人が助かる道を望めばいいだけである。

「それが答えなら行くがいいさ、ちゃんと自分で確かめてくるといい」

「Thank You、神様」

一応、お礼は言った。

「最後に聞きたいんだけどさ、他の皆もこんな質問したの?」

あいつはムカつく感じで笑った。

「一人目は海と山ではどちらが好きか?二人目はきのこの山とたけのこの里どちらが好きか?三人目は黒と白ではどちらが好きか?四人目はサッカーとバスケどちらが好きか?を聞いたよ」

くそっ…最後までムカつく奴だった。

命の審判を全部、私に背負わせたのか。

礼を言って損をした。

「もう二度と会わない事を神に祈るよ」

私なりのジョークのつもりである。

「なにそれ、つまんねー」

やっぱりムカつく。

 
  • 匿名

    「世界から猫が消えたなら」を思い出したわ(><)

     
  • 匿名

    この神様の軽い感じが好きwww

     

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