【怪談】カラオケ店の七階

カラオケ店の七階

今から六年ほど前、カラオケ店でバイトをしていた時の話。

そのカラオケ店は街中の人通りの多い場所にあり、それなりに繁盛していた。とは言っても平日の昼間から夕方の時間帯はかなり暇だった。
人件費を削っていたせいもあるが平日は社員を入れて三人くらいで店を回していた。入って間もない頃はホールの清掃やドリンク・デザートやスナック類を作ったりしていた。

カラオケ店は八階まであり、一階がフロント、二階と三階が厨房で残りの階をカラオケルームとして使っていた。八階は従業員の休憩場所。
エレベーターは一台しかないので、原則的に従業員は非常階段を利用して他のフロアへ移動しなければならならない。これが結構な重労働だった。

問題はここから。先輩のSさんは常々、用がない限りはあまり七階には行かないでね、と話していた。理由はひとつ。出る、ということだった。
確かに七階は他のフロアに比べて雰囲気が暗いというか、とにかく居心地が悪かった。なのでトイレ掃除以外は七階には近寄らないようにしていた。

その日もいつものように出勤して開店作業に取りかかっていた。
全室周り、照明を点けて機材の電源を入れ故障がないか確認。フライヤーに油を入れて温めておく。業務用の食材補充なども欠かせなかった。これらを全て自分一人で行わなければならない。

Sさんはカウンターの作業がメインだった。客がいない時はエレベーターを利用しても良かったので、六階から厨房のある三階へと戻ろうとエレベーターの前に行くと何故か七階でランプが止まっていた。
七階は利用客がいない限りはたまにトイレ清掃をするくらいで開店作業はしない決まりになっていた。店内には一階にいるSさんと自分の二人だけ。七階には行った覚えはない。

念のため一階にいるSさんに確認をしてみた。インカムを付けているので、離れていても従業員同士でマイク越しに会話が出来る。

「あのー、Sさんまだ一階ですよね?」
『そうだよ。〓〓さんは開店作業終わった?終わったなら厨房で休んでていいよ』
「終わったんですけど、エレベーターが七階で止まってるんです…」
『え?七階に行ったの?行かなくても良かったのに』
「行ってないです。でも止まってて…どうしたらいいですか」
『本当に行ってないの?』
「六階までしか作業はしてません」

こんなやり取りが続いた。自分もSさんも半分涙声になっていた。二人とも内心思っていることは同じだったから。

『…〓〓さん、階段で戻りなよ』
「はい。そうします」

ランプはまだ七階で止まっている。エレベーターを使う勇気などとてもなかった。

これはまだ序の口で、無人の七階からフロントに電話が鳴ったり、電気が突然消えたりと毎日がパニックの連続だった。七階だけ監視カメラに何も映らないなど日常茶飯事だった。

七階の件は他の従業員も知っていたが口にするのはタブーだった。どうしても七階に行かなくてはならない時は必ず二人で行動する。そんな暗黙のルールが出来るほど七階は従業員にとって恐怖のフロアだった。

一番のトラウマは七階で片付けをしている最中、フロア全ての照明が消えたことだった。あの時の恐怖は未だに忘れられない。真っ暗闇のフロアで自分以外の誰かが歩く足音を聞いてしまったから。

さすがに耐えきれなくなり、半年ほどでバイトは辞めた。因みにそのカラオケ店は今も営業している。

 
  • 匿名

    カラオケ店は安い土地、安い物件でしか営業できない。薄利でモトが取れないからな。

     

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