【SS】愛する娘/HN:いくゆみ

愛する娘/HN:いくゆみ

俺の名前は佐藤健太。

あだ名はシュガー。

名字の佐藤から砂糖、そしてシュガーとなった。

誰だっかは忘れたが言い出した奴がいた。

イケメンとまでいかなくても顔は悪くない。

身長も170cm以上で高い方だ。

学校で一番の情報通である。

小さな頃から俺は分からない事があると何でも聞いた。

分からない事があるとモヤモヤしてしまうのだ。

溢れる探求心。

しかし勉強の方面に活かされる事は今のところありそうにない。

学校での情報というのは、だいたいが恋愛絡みだったり怪談などの不思議な話だ。

つまらない日常を彩るには十分過ぎる。

この学校にも何人かは面白い奴がいる。

まぁ…それは置いといて。

勿論、楽しい噂だけではない。

神宮寺彰彦。

名前からして格好良い。

俺は何故か三文字の名字に憧れがあった。

自分の名字がありきたりなせいもあるだろう。

神宮寺はめちゃくちゃイケメンだ。

最初はこんな漫画みたいな人間がいるのかと驚いたね。

ロン毛でボンボンでイケメンと絵に描いたような奴。

そして驚くべきは人間的にも最低な奴だと噂である。

この学校では良い先生としてやっているが、外からの噂は最悪だ。

男子生徒からも良く思われていない。

最初はイケメンだし妬んだ奴から変な噂を流されているかとも思ったが、どうやら違うらしい。

この学校に来たのも前の学校で問題を起こしたようだ。

大方の予想通り、イケメンらしく女絡みの問題である。



ガチャッ

「あ、スミマセン。部屋間違えました」

本当に間違えた訳ではない。

放送室には神宮寺とその生徒だと思われる女子がいた。

「あれ?鍵かかってなかったかい?」

神宮寺は俺に尋ねた。

「いや…かかってなかったですね。お邪魔しちゃって申し訳ない」

俺は頭を下げてから神宮寺の方を見ると睨みつけていた。

どうやら噂に違わぬ糞野郎のようだ。

「そ、相談はまた今度にしよう」

女子生徒に言うと神宮寺は放送室を出ていった。

それは何の相談なんですかねぇイケメン先生。

「2年1組の遠藤さんだよね」

俺は話をかけた。

「もう遅いし私、帰る」

そういうとスタスタと歩き出した。

「こんなところで先生と何の相談しようとしてたのかな?」

「アンタには関係ない」

そりゃあ、そうだ。

遠藤さんも放送室を出ていった。

俺は教室へと戻る。

「ちゃんと邪魔してきたぞ!」

鈴木にそう言うと「サンキュー」とだけ返された。

鈴木はたまに俺でも知り得ない情報を持ってくる。

今回の神宮寺が遠藤さんに手を出そうとしているのも俺は知らなかった。

不思議な奴だ。

俺と鈴木の出合いは中学に入学した時である。

鈴木は最初から有名人だった。

格好良い訳ではないしイケメンでもない。

それでも女子たちからの評価は高かった。

変わってて面白くて優しい。

誰もが口を揃えて言う。

俺も鈴木に対しての評価は同じ意見だ。

今回の件を俺に依頼したのも放送室の鍵を自分では開けられないと思ったからに違いない。

石橋を叩いて叩いて渡らないような慎重な男である。

「学校にはたくさん部屋があるのに何で放送室だと思ったんだ」

下校途中に俺は鈴木に聞いた。

「鍵がかけられて防音がしっかりしているのは放送室くらいだからだ」

なるほど。

それなら納得だ。

鈴木とは途中までは帰り道が一緒である。

「じゃあ、ここで。また明日な」

そう言うと鈴木は俺とは違う道を帰って行った。

俺はジャンパーと帽子を取りだしリバーシブルの鞄を裏返し制服を詰める。

ポケットにしまっていた付け髭を付け、帽子を被りジャンパーを羽織った。

そして鈴木の後をつける。

まさか鈴木も俺がここまでするとは思っていないだろう。

鈴木はコンビニに寄って雑誌を立ち読みしていた。

すぐ隣で俺も雑誌を立ち読みする。

微かだが鈴木の口が動いている。

小さな声だが何かを話しているようだった。

う・け・た・か・ら・に・は・ちゃ・ん・と・た・す・け・ま・す・よ

たぶんだが口の動きから、こう話していた。

俺は近くを探ったが鈴木と話している奴は見つからなかった。

遠藤さんの件が絡んでいるのは間違いない。

だが鈴木は誰と話していたのか分からなかった。

ポンポン

鈴木が俺の肩を叩いた。

ま、まずい…バレたのか…

「本、逆さまですよ」

そう言い残してコンビニを出ていった。

「………。気付かれた…かな」

俺にはバレたのかバレていないのか判断出来なかった。

次の日

俺は校長先生と神宮寺といた。

会議室という先生たちが話し合う場所。

「いやぁ、告げ口みたいな事をするつもりはなかったんですけどね。校長がどうしたのか聞くもんですからねぇ」

耳障りな声だ。

勝ち誇ったような嫌みな顔つき。

左腕にギプスと包帯を巻いている。

「医者からの診断書によると骨折みたいですねぇ」

痛がるような大袈裟な仕草。

「俺はやってませんよ」

きっと昨日の件の仕返しだろう。

神宮寺は俺に殴られたと言ってきた。

証人は遠藤奈美子だと。

遠藤さんも神宮寺と同じ発言をした。

そう言うように強要されたのだろう。

「しっかりした謝罪と通院費だけ何とかしてくれれば大事にするつもりはないんですが…」

この糞野郎に頭を下げるくらいなら死んだ方がマシだ。

「謝ってくれるつもりもないですし親御さんをお呼びして…場合によっては警察にも…」

こちらを見る神宮寺はニタニタしていた。

「俺はやってません!遠藤さんにちゃんと聞いて下さい」

俺への嫌疑は遠藤さんの発言によってかけられている。

「もう一度だけ遠藤さんに話を聞きましょうか」

校長先生が言った。

ピピピッ

携帯電話が鳴り校長先生が出た。

「分かった。では」

校長先生は俺と神宮寺の方を向いた。

「すまんがほんの少しだけ席を外す。すぐに戻るから待っていてくれ」

そう言ってから会議室を出ていった。

二人っきりになり一層ニタつく神宮寺。

「あははははははは」

こんな悪役みたいに笑う奴が本当にいるとは。

「あの時の君の目が気に入らなかったよ!助けました!いい事しました!そんな真っ直ぐな目がねぇ。気に入らない!馬鹿な餓鬼どもは俺たち大人の言うことを聞いていればいいんだよ!」

こんな奴は自分の拳を痛めて殴る価値もない。

「ああ…腕が痛い。打撲くらいにするつもりだったんだけどねぇ。やり過ぎてしまったよ」

ガチャッ

会議室の扉が開いた。

「校長ぉ早かったですねぇ。用件は済んだんで…しょう…か」

そこには校長先生と鈴木がいた。

「自己顕示欲が強くてナルシスト。勝ち誇った奴ほどペラペラ喋る。俺が最も嫌いで愚かだと思うタイプだ」

珍しく鈴木は怒りを露にしている。

「ああ用件は済んだよ、神宮寺先生」

校長先生は机の上にある携帯電話を見せた。

『通話中』

神宮寺の顔が分かりやすい程に青ざめた。

「校長ぉ…ち、違うんです。こいつが俺に暴言を吐いたから…」

神宮寺は意味の分からない言い訳を始めた。

「鈴木くんには妻の件でお世話になってね。電話を通話中にして会議室を少しだけ出て欲しいと頼まれてな。恩人にこんなに頼まれては応えるのが人というものだ」

校長先生は険しい顔になっていた。

「神宮寺先生、先程の話は録音してあります。遠藤さんも強要されて発言したと証言してくれました。それに……成績アップを条件に身体を要求された事も話してくれましたよ」

鈴木はそう言うと思いっきり机を叩いた。

「生徒を守るのが先生じゃないんですか。その前に子供を守るのが大人じゃないんですか!」

こんな鈴木は見た事がない。

「遠藤さんに手を出そうとして…妹にも手を出そうとして俺はアンタを許さない」

ん?

神宮寺は鈴木の妹にも手を出そうとしていたのか。

そりゃあシスコンの鈴木は怒りますよ。

まぁ…あの鈴木の妹さんが神宮寺みたいな奴を相手にするとは思えないけど。

「あはは…あはは…あはははは」

神宮寺は壊れたように笑っているだけだった。

「鈴木、お前どうやって遠藤さんを説得したんだ?少なからず遠藤さんにも疚しさがあったんだ。自分から言い出すのには…」

鈴木は上を向いていた。

「俺は何もしてないよ。親父さんが説得したんじゃないか?」

答えはそれだけで十分だった。

遠藤さんの父親は一ヶ月も前に亡くなっている。

これで全ての辻褄が合う。

「なぁ鈴木、俺たちは全てを守れる訳じゃない。それでも…この手で掴めるもんくらいは守っていきたいよな」

俺が格好つけて言うと鈴木は手を振って返した。

「わりぃ、よく聞こえなかった」

そこは下校途中の別れ道だった。

 
  • 匿名

    鈴木と佐藤シリーズ ミステリーな感じで面白くて好きです!

     

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