【SS】心を覗く眼鏡/HN:いくゆみ

心を覗く眼鏡/HN:いくゆみ

「あらぁ!木村麻美さん、お久しぶり」

誰だかは忘れたがクラスメイトの一人が話かけてきた。

別に久しぶりでも何でもないのだが嫌みを言いたいのだろう。

私は子役タレントをしているのだ。

まだ、そんなには有名ではないけどお仕事を貰っている。

基本的には休みの時や学校が終わってから仕事をしているのだが、どうしても時間がずらせない仕事や忙しく疲れてしまった時は学校を休んだり遅刻したりしてしまう。

だから勉強を疎かに絶対にしない。

好きで子役タレントをしているのだから勉強も皆と同じようにこなす。

休んだり遅れたりした分は家で勉強をし必ず取り戻すようにしている。

それでもクラスメイトの中には気に入らない人も多いのだろう。

たまにでも休んだり遅刻したりしている私をズルいと思ってしまうのは無理もない。

私が逆の立場だったらズルいと思ってしまうだろう。

「ごめん。誰だっけ?」

私は覚えてもいないクラスメイトに言った。

何か吠えていたが、私にはどうでもいい。

私には夢がある。

大女優になるの。

私の事を知らない人なんていないくらい有名になりたい。

今、私を無視しているクラスメイトも手のひらを返すだろう。

人間とはそういう生き物だ。

特に学校という場所は残酷である。

異端なものは受け入れない。

子供とは純粋であるが故に残酷だ。

私も同じ立場なら同じように無視していただろう。

誰が悪いとか責めたりは出来ない。

だって誰も悪くないのだから。

何かが悪いのだとしたら『人間』そのものが悪い。

昔から人間という生き物は差別思想があった。

偉い人たちは自分たちに不満が向かないように人間より下の身分を作ったりした。

学校もそうだ。

誰もが自分より下の人間を作りたがる。

このクラスでは女子は私。

男子は梶井だ。

理由なんてない。

ただ何となく、そうなった。

梶井はマイペースで全く気にしていない。

私もあれくらい鈍感というか…気にしない人間になりたいものである。

「またか…」

少し席を外している間に物が無くなる。

鉛筆だったり消しゴムだったり教科書だったりである。

何か言われたりするのはいい。

教科書やノートを隠されたり取られるのは勉強に影響が出るので本当に困る。

頭が良い方ではないので、ちゃんと勉強しないと着いていけない。

最近では道具一式を持ち運ぶようにしていたが、気が緩んでいたとしか言い様がない。

教室ではヒソヒソと話声がしていた。

下らない。

コイツらは本当にガキだ。

まぁ子供なのだから、そうである。

今日もつまらない学校が終わった。

帰ったら仕事だ。

私の生き甲斐。

「はじめまして」

校門の前で母を待っていた私に、いきなり声をかけてきた。

怪しい人だったので当然無視である。

「爆弾でぜーんぶぶっ壊したくなった事ありませんか?人を呪ってみたくなった事ありませんか?」

怪しい男は勝手に話続けた。

爆弾で壊せるもんなら壊したいよ。

何度だって、今だって呪ってる。

怪しい男は名刺を差し出して去っていった。

『川原悠希』

その後すぐに母が来た。

怪しい男のせいで今日の仕事には身が入らなかった。

心を見透かされたような感じ。

彼は一体何者なのだろうか。

次の日の放課後も校門の前にいた。

「爆弾でぶっ壊しても何も解決しないですし呪ったところで意味なんかありませんよ。やった事ある僕が言うんですから間違いありません」

川原という男は言った。

見た目は特徴がなく身長も普通で髪型も普通。

少し痩せ型で不気味な雰囲気ではあるがニコニコと笑顔を絶さない。

何とも矛盾を孕んでいるような男だった。

「じゃじゃーん。これ僕が開発した人の心を覗けるマスィーンなんです!どうです?どうです?試したくないですか?今のあなたには、こういうものが必要なんじゃありませんかね」

相変わらすニコニコとしている。

本当に心が読めるならば聞く必要すらないだろう。

そうか、だから近づいてきたのか。

私には人の気持ちがよく分からない。

クラスメイトの事もそうなのだ。

私が無視されているのに理由なんてないと思っているのは深く知る事が怖いのである。

「勿論、条件がありますけど。どうします?」

そりゃあ、そうだ。

世の中、タダより怖いものはない。

条件がある方が自然な事である。

「あなたに演技力を買ってお仕事をお願いしたいのです。あ、怪しい仕事とかでは…ない…ですよ。ちょっと怪しいかもしれませんね」

何とも怪しい。

「今回のこれは無償でお貸ししましょう。恩を売っておきます。その後で仕事を受けるか決めて下さい」

まぁ結局は貸すから仕事受けてくれよと言われた訳だ。

受け取ったマシーンとやらは私には、ただの眼鏡にしか見えなかった。

「あいつ…適当なもん掴ませて騙そうとしてんな」

しかし次の日、学校にかけて行くと心の声が音声で聞こえた。

『あー眠い。授業だるい』

『早く給食の時間になんねーかな』

『……………欲しい』

最近の技術は凄いんだなと関心した。

人が考えつくものは全て作れるようになる。

そんな事を言った人がいるらしいが夢ではないように思う。

「あらぁ!木村麻美さん、今日もお一人で寂しく給食?」

全く嫌みなやつ…

『………ともだち』

『麻美ちゃんと友達になりたい』

え?

なに?何?

『出てる番組、全部録画してる。雑誌とかの切り抜きも集めてる。いけないって分かってるけど…つい欲しくなって麻美ちゃんの私物を…』

えっと…名前分かんないや…嫌み子ちゃん(仮)でいいか。

彼女は私のファンなの?

『あの子また麻美ちゃんと話してる』

『ちょっと羨ましいな』

『私も話したい』

『やっぱ木村は可愛いよな』

『眼鏡も似合ってる』

私の頭は完全に混乱した。

「私、みんなと仲良くしたい!!!」

気付いた時には叫んでいた。

こうして一日にして友達がたくさん出来た。

「どうでした?どうでした?僕の発明品は!」

ニコニコした男は放課後の校門前にいた。

「最近の発明って凄いんですね。びっくりしました」

正直な感想だ。

「まっさか人の心が覗けるなんて信じたんですか?」

へ?

「そんな発明品ある訳ないですよ!あの眼鏡はただの受信機です。僕がボタンを押してあなたにしか聞こえない音声が流れるだけのね」

………。

「じゃあ…あの声は…全部デタラメなの…か…?」

「はい」

川原は笑顔で答えた。

「眼鏡から見える映像を元に適当な音声を作り上げて流しました。それっぽい感じで。でも、ちゃんと友達出来たじゃないですか」

結果良ければ…何とやら。

しかし私は無視されてたのに仲良くしたいと叫んだ変な奴じゃないか。

「最初から皆は仲良くしたかったんじゃないですかね。僕ならタレントさんとか憧れちゃうなぁ。仲良くしたいなぁって思いますけどね」

こいつ私の心が読めるのか。

「さてさて、お仕事引き受けて頂けますかね?」

ニコニコしてる怪しい男に私は言った。

「その心を覗ける眼鏡で見たらどうだ?」

 
  • 怪談マニア

    男がどんな仕事を頼みたかったのかが、気になりますね~。

     

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