【昔話】真実の恋人①/HN:ボサノバ

蒸し暑い日が続きますね。鰻の寝床の奥座敷は日が届きにくく、ひんやりしてます。
ぼんやりと裏庭を眺めてましたら思い出した話があるんです。

 
 
時は応仁の乱のころ。
元は由緒正しいお武家さまのご息女がおられました。幸せな時間は短く、少し成長された頃にはお寺に預けられてました。
そこに出入りしている少年も、女の子のことは顔見知り程度にはしってました。
お寺と言いましても、戦があれば何かと物入りになります。少しずつ暮らしも厳しくなりました。

そんなある夜更け、盗賊が僅かばかりの金子と女の子を拐って行きました。

見知らぬ所へ連れてこられ女の子は毎日泣き暮らしました。
(私はどうなるのだろう?)何日経っても泣き止まず、食事も摂らず痩せていく一方。
盗賊の親分は困り果て、女の子が生きてる内に子守りに売り飛ばそうと決めました。

「いやです、なにをするんです?」、女の派手な肌襦袢を着流しの襟元から覗かせた優男が女の子を抱き上げた。
「お前は家が買ったのさ。行儀見習いにするには体が細すぎる。暫く子守りしながら皆がどんな仕事をしているか良くみておくんだね」、
肌襦袢から白粉の匂いをさせている男に「いやです、後生ですからお許しください」と哀願するも聞かれずに一緒に駕籠に乗せられた。女の子の泣き声だけが何時までもこだましていた。

 
 
女の子は父親の分からない赤ん坊の世話をして暮らした。歳月たち、娘といってもよい年頃になったある日、主人の部屋に呼ばれた。
「そろそろ水揚げだな」、
「それだけは嫌です」、

「それはならん」。
 

娘は泣きながら出鱈目に走った。気付いたら池に来ていた。

川の流れが塞き止められ、澱がたまり、いまにでも物の怪が出てきそうな雰囲気。水面を風がわたる。

ふと、視線を感じ見やる。そこには青年が此方をみていた。

「どうしたのですか?」、
「なんでも有りませぬ、泣けば諦めもつきましょう」。

このまま帰しては行けない、と思い
青年は娘と並んで腰をおろすと独り言のように身の上話を語り始めた。

一晩中、互いの身の上を語り娘は此からを思うと心配で仕方ながない事も打ち明けた。
次の日も、その又次の日も並んで語り明かした。

四日目の夜、青年は娘を招き入れ、「お照どの、今暫くお待ちくだされ。きっといつか…約束しましょう」、優しく抱き締められるだけであったが娘は幸せで満たされていた。

 
娘は五日ぶりに戻ったが、そこには人買いが待ち構えていた。「今から俺が主だ」。
獣くさい大男に担ぎ上げられ、裸馬に乗せられるや
山の中へと連れていかれた。
 
 

「お照どの、泣いてはいないだろうか。」
青年は恋心を募らせる一方。池を眺めて涙を流れるに任せていた。

「もし、どうされたか?」其処には夢にまでみた娘がいた。
 
 

つづく
【昔話】真実の恋人②/HN:ボサノバ

 
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  • 匿名

    「お照」ってなにって一瞬考えたけど主人公の名前ね。「ご息女」「女の子」「娘」としか示されてなかったから、いきなり名前が出てきて戸惑いました。
    風雅な言葉遣いや地の文は、物語の雰囲気によく合っています。
    続きに期待。

     
    • ボサノバ

      ありがとうございます。 頑張って書き進めていきます、お楽しみに。

       
  • 匿名

    それて、本当に昔話として残ってる話でしょうか?

     
    • ボサノバ

      >それて、本当に昔話として残ってる話でしょうか?

      伝説はありますが、今回はフィクションで書いてます。
      時代、場所、登場人物など歴史上の又は現存の人物などと一切関係ありません。

       

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