【昔話】真実の恋人②/HN:ボサノバ

真実の恋人1』掲載ありがとうございます。
続きです。

 
青年の前には、恋しい娘がいた。
優しく手をとり「手荒れが治っている。良かった」、と呟いた。娘は無言のまま、じっとしていた。

青年は視線を感じ顔をあげた。

水面を思わせる静かな眼差し、深く暗い海底を思わせる瞳のいろ。

(お照どの…?)、一瞬、青年の中に迷いとも訝しい気持ちのような引っ掛かりが生じた。

その時、娘の両手が青年の手を包んだ。
しっとりと柔らかで吸い付くような感触。

「どうかされましたか?」、娘にじっと見つめられ青年は何も考えられなくなった。
「なんでもありませぬ」、見つめられているようで心の奥まで見透かされているような怖さ。

「なら、良いのですが」、娘の片手が青年の頬に添えられた、「汚れてましたよ」。
娘の手から手拭いを取り、「かたじけない。私のを代わりに使って下され」、
娘は濡れた眼差しで見つめながら受け取った。

二人は湖を見ながら話したり、見つめあったりしながら夜まで過ごした。

 
 
さて、その頃。
裸馬に乗せられ、山から山へ、谷をゆっくり渡り、どことも分からない洞窟の側まで近付いた。

獣くさい男は、泣きつかれた娘を抱え下ろしながら「名は?」、力ない声で「照」。
「お照、いまからは儂の傍から離れるな。余計な返事はせず、黙っておればよい。何をみても驚いてはならない」、娘は無言で頷いた。

 
つづく

 

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