市松人形


市松人形

418 名前:ぺクチマ 投稿日:2001/04/06(金) 18:36


押し入れに1体の市松人形が眠っていた。


厳重に包まれて桐の箱に大事そうに入っていおり、その為あって保存状態はすばらしく良かった。

長く黒い髪、白い肌、赤い蝶の刺繍が入った着物。


これは高く売れる、と質屋に持って行った。

質屋もその人形をたいそう気に入り、ガラス窓の一番目につく場所に飾った。


ある日、一人の少女が店の前を通りかかった。

少女はその人形を一目見て気に入り、すぐさま両親にねだって買ってもらった。

それからしばらくは少女の格好の遊び相手となった。


しかし少女も大きくなり、そんな人形があった事などすっかり忘れてしまい、中学入学の日ふと人形の事を思い出した。

やっとの思いで探し当てた人形は、かつての姿は微塵と無くそれはそれはみすぼらしかった。


髪はぼさぼさ、着物はすす汚れていて腕は割れていた。

しかしその割れた腕の隙間から、なにやら黒く細長いものが出ていた。


少女は気になりよく見てみると、それは髪の毛だった。

何故髪の毛が? そう思って引っ張ってみると、するするするするどこまでも抜けていった。


さすがに奇妙に思い、その人形を叩き割ってみたところ、中からミイラ化した1、2歳の赤子が長い髪の毛に包まれ姿を現した。

少女は悲鳴をあげ倒れこんだ。


数日後、お寺に人形を持っていき供養してもらった。




それから十数年の月日が流れた。


その少女も今やすっかり年老いてしまい、孫までいた。

たまたま遊びに来ていた孫は、押し入れの奥からなにやら箱を取り出してきた。


見たことも無い箱だった。

しかし孫が箱を開けた瞬間、老婆は驚きを隠せなかった。


そう、確かにあの時寺で供養し焼き捨てたはずの人形が、新品同様な状態で眠っていた。

そんな驚きを知らず、老婆の孫はその人形を気に入ったようだった。


そして孫は老婆にせがむ。


「ねぇおばあちゃん、この人形私にちょうだい」



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