【奇妙】102号室の住人/HN:早坂正彦

101号室の住人である河野は毎晩不眠症に悩まされていた。

それは最近、隣に引っ越してきた102号室の住人が夜事出す奇怪な音が原因だった。

「ちっ・・また始まった」
河野が時計に目をやると深夜2時だった。
突然隣の部屋から響く鈍い音。

まるで自分の頭を壁に何度も何度も叩き付けているような、ごつん、ごつんと規則的に何かを壁に打ち付ける音。

「いい加減にしろよ!うるせぇな」
河野は自室と隣室を隔てる壁を思い切り蹴った。

ガンと自室を蹴る音が響くと102号室の奇怪な音がピタリと止む。

こんなことを繰り返してもう1週間になる。

朝方、河野はまた余り眠れなかった事にイライラしていた。
自ら経営するネット通販の会社が赤字続きな事も少なからず影響していたのかもしれない。

最近医者から処方されたハルシオンという睡眠薬を明日にでも試してみようとおもっていた。
それ以外でも河野は以前から持病があるためレスタスやセパゾンなどを服用していた。

「あの頭のおかしい102号室の住人が次に夜中にうるさくしやがったら怒鳴り込んでやるか」
玄関で靴を履きながら河野が呟く。

ドアを開け外にでると朝日がまぶしく、閑静な住宅街の街並みが河野を憂鬱な気分から一転させた。

「今日も頑張るか」
そう呟いたときふと102号室のドアに目をやる・・ドアの上窓から明かりなど一切もれていない、102号室は静まり返っていた。

河野が仕事から帰ってきたのは夜の22時過ぎだった。
自分の起こした会社が軌道に乗らないからなのか、毎朝9時に会社に出勤してから夜の21時まで働きづめだった。

冷蔵庫の缶ビールを飲みながら昨夜蹴った壁に耳を当ててみる。
シーンと隣室は静まり返っていた。

「このところ毎晩だからな・・今夜はおとなしくしてくれよ」
河野は壁一枚隔てた102号室の住人に向かってそう囁いた。
聞こえるはずがなくてもいい、今夜はおとなしくしてほしかった。

そうでなければ自身の心が壊れてしまいそうだった。

ちらりとベッドの横に護身用で購入した金属バットが目に入る。
今夜また102号室の隣人がうるさくしたら・・そんな考えをめぐらせただけで自分自身が恐ろしくなった。

河野は0時までには軽い軽食を取り風呂でシャワーを浴び薬を飲み床に入る。
自身夢か現の境目にいた時にまたあの奇怪な音が響いてきた。

ごつん、ごつん、ごつん。
頭を壁に叩き付けるような鈍い音、最初は規則正しく刻まれていたのだが、だんだんと規則性を失った激しい音に変化する。

ごつんごつんごつん何度も何度も打ち付けれれる奇怪な音に河野は金属バットを握りしめていた。
「もう殺す」河野は普段口にしないような言葉を吐いたことに気づいていなかった。

102号室のドアはきっちり施錠されていた。そのドアに向かって金属バットを何度も打ち据える。
やがて河野はドアの裏側に回り込んだ。

河野は「ドアが開かないなら窓ガラスを割って・・」ぶつぶつ呟きながら裏側に回り込み102号室の窓ガラスを割る。
そして破片が自分の腕を傷つけるのも構わず中に入り込む。

「でてこい殺してやる」と大声で叫びながら、まっくらな部屋で河野はバットを振り回していた。

 
近隣の通報で警察が駆けつけた時102号室で、ぐったりと倒れている河野が発見された。
腕にガラスの破片で切った傷が数か所あり、頭部が陥没して危険な状態であった。

その後、一命を取り留めた河野の証言によると、夜な夜な102号室の騒音がうるさかったので殺したくなったと証言しているが、もう1年以上も102号室に入居者などいなかったことが分かっている。

 
  • 匿名

    レスタスやセパゾンは精神病の患者が飲む強い薬だから主人公自身の幻覚妄想ってことか

     
  • 匿名

    ごつんごつんごつんしてたのは自分の頭だったんだな

     

世にも奇妙な怖い話や都市伝説から不思議体験スピリチュアルまで…オカルト小説投稿/2chまとめサイト。1万3千話超えの厳選物語を貴方に★