【怖い話】幽霊タクシー/HN:ラグト

今回のお話は私の就職一年目の冬で、会社の忘年会が開かれた時のことです。

その日、二次会がお開きになって、皆そこそこ飲んでいたので適当に幹事がタクシーを呼びました。

たまたま、私は飲んだお店から家の方向が同じということで女性の先輩の黒川さんを送っていくことになりました。

しばらく待っていると、私たちの乗るタクシーがやって来ました。

しかし、酔って少々ぼんやりとした目でタクシーを見た彼女がなんか変なのが来たと独り言のように言いました。

彼女は世間一般のいうところのいわゆる霊感のある人で、その彼女が変ということはそういう何かがそのタクシーにあるという意味にも聞こえてちょっと考えてしまいました。

ただし、酔っぱらいの戯言かもしれませんので、私は彼女をタクシーに乗せて運転手さんに行先を伝えました。

乗り込んだ順番で黒川さんが運転手の後ろ、私が助手席の後ろのシートに座りました。

「今日は忘年会ですか、いいですねえ」

ほのぼのとした口調で運転手さんが話しかけてきました。

決してうるさい感じではなかったのですが、こちらは何もしゃべらないのに勝手にいろいろと語り続けてきて、少し苦手なタイプでした。

そんな中、タクシーが広めの国道を走っていたときでした。

「うわっ、またいる」

不意に運転手が驚いたような声をあげました。

「どうかしたんですか?」

私は運転手が何に驚いたのかわからなかったので尋ねました。

「いや、女の人が・・・」

女の人、それだけでは意味が分かりません。

「・・・白い着物の女の人が手を上げてましたね」

隣の黒川さんが反応して声をあげました。

そこまで聞いて話が分かりました。

あいにく私は確認できませんでしたが、歩道にタクシーを止めようと手を上げた女の人がいたということのようでした。

しかし、なぜそんなことであんな驚いた声を上げなければいけないのかはわかりませんでした。

「ああ、お姉さんにも見えたんですか、じゃあ幽霊とかの類じゃないのかな。今日はお客さんが乗っていてくれたおかげで堂々と乗車拒否できてよかったですよ」

「え、幽霊、どういうことですか?」

ますます話が分からなくなりました。

「いや、実はですね、最近時々いるんですよ、白い着物の女の人が」

どうしてそれが幽霊ということになるのだろうと訝しんでいると運転手さんは話を続けました。

彼の話によると、白い着物の女を最初に見たのは二週間ほど前のことです。

その日、夜中に走っていた際、前方の街頭の下に白い着物の女性が手を上げているのが見えました。

しかし、その時はたまたま同じ会社のタクシーがすぐ前を走っていました。

そのため、あのお客さんは前の車に取られたなと思ったそうです。

運転手さんは前の車が歩道に止まると思い、横を通り抜けようと準備していたのですが、いつまでたっても減速する気配がありません。

おかしいなと思って見ていましたが、遂には手を上げた女の人を無視するかのようにそのまま通り過ぎてしまいました。

減速気味に走っていた彼のタクシーはそこで止まろうと思えば止まれたのですが、長年の経験と勘からか、嫌な感じを覚えた運転手さんは前を進む同僚タクシーと同じように着物の女の人を無視して通り過ぎました。

その後、事務所に帰った運転手さんは先ほどの同僚に着物の女性のことを尋ねました。

しかし、尋ねられた同僚はそんな女の人は見ていないと答えました。

薄気味悪い感じがしました。

その予感通り次の日から運転手さんのタクシーの前に夜中たびたび白い着物の女の人が出るようになりました。

彼はもはや半ば意地になって、その手を上げている着物の女性を乗車拒否し続けました。

そこまで聞いて、よくあるタクシーの怪談なのか、単なる偶然なのかは判断がつきませんでした。

本来ならこのぐらいのタイミングで霊感のある黒川さんが解説してくれそうでしたが、彼女は黙って運転手さんの話を聞いていました。

「いや~、私もね、他の同僚たちにこの辺で白い着物の女性の幽霊のうわさはないかと聞いたんですけど、そんな話は聞いたことないって言われてね」

「へえ、仲間内でそんな情報も伝え合うんですか」

「まあ、ここでこんな幽霊が出たっていう情報は結構出回りますね、おかげで県内の心霊スポットにはちょっと詳しいですよ」

「・・・その情報って、需要あるんですか?」

「ありますよ、この前も県外から来た若い観光客グループからお勧めの心霊スポットに案内してくれませんかって要望されてね」

ほとんどお勧めのラーメン屋案内してくださいよのノリで心霊スポットを考えているので、悪趣味だなあと思っていると、今まで黙っていた黒川さんが口を開きました。

「運転手さん、その観光客に案内した心霊スポットって、もしかして○○寺ですか?」

黒川さんは県内でその手の人にはよく知られている心霊スポットのお寺の名前を上げました。

「え、お姉さん、なんで、その通りだよ」

「あ~、なるほどね、それで繋がったわ」

彼女は一人で納得していました。

「どういうことですか?」

「まずね、さっきの着物の女の人はかなりやばめの悪霊ね」

あ、やっぱり幽霊なんだ、道理で私には見えなかったわけです。

「そんで、偶然あそこの道に現れたにしてはこの車に念が取り憑いてるような感じだったから、なんか運転手さんと因縁があるなあとは思ってたんだけど」

タクシーに念が取り憑いている、彼女が最初に言った変なものとはそのことのようでした。

「え、お姉さんそういうのに詳しい人?なんであの女の人が私に憑いてるの?」

「たぶん観光客を連れて行ったときに○○寺から憑いてきてますね」

「なんで運転手さんが連れて行ったのが○○寺ってわかったんですか?」

私は黒川さんに尋ねました。

「いや、さっきの着物の女の人が横を通り過ぎる時に『○○寺まで』って言ってるのが頭に響いてきたから」

その言葉を聞いて憑いてきた幽霊が再びタクシーで○○寺に帰ろうとしているような印象を受けました。

そんな話なら、無賃乗車しようとする幽霊の姿が思い浮かびました。

しかし、黒川さんは私の感覚とは全く逆の言葉を発しました。

「運転手さん、いい判断でしたね、あの幽霊乗せてたら、連れていかれてましたよ・・・あの世まで」

え、そっち? 幽霊が連れて行ってもらうのではなく、運転手さんをそちら側に連れていく気満々ということでした。

黒川さんは呆気にとられている運転手さんからメモを借りると何かを書き始めました。

そして、黒川さんの家に着いて、降りる際に彼女は運転手にメモを渡しました。

「ここの神社に行ってこの車ごとお祓いしてもらうといいですよ」

見ると、この前の「白護病院」の騒動の時にも訪れた黒川さん馴染みの神社でした。

「それじゃ、これに懲りて、心霊スポットの案内はやめた方がいいですよ、今回みたいに変な客を連れていくとそこのやばい霊を怒らせちゃうこともありますからね」

そう言うと、酔って妙に機嫌のいい感じで彼女は自宅に入っていきました。

 

「いや~、あのお姉さんカッコいいですねえ」

運転手さんは少し興奮して私に話しかけてきました。

「よかったですね、危ないことにならなくて」

「全くですよ、あ、それでですね、さっき紹介された神社なんですけど、仲間内で綺麗な巫女さんがいるって有名なところですよ」

そういえば、先日私が訪れたときに日本人形のように端整な顔立ちをした巫女のお姉さんが応対してくれた覚えがありました。

「明日行って良かったら、美人の巫女さんがいる神社ということでそういうのに興味があるお客さんに紹介しましょうかね」

この人、全然懲りてないなあと思いながら、今度は悪霊からの障りじゃなくて神罰が下るんじゃないかなあと感じていました。

 
  • ラグト

    嬉しいコメントを頂き、ありがとうございます。

     
  • 面白かったです

     
  • ラグト

    気がつけばこの幽霊タクシーで投稿数が二桁に乗っていました。ここまで続けられたのも皆さんのご感想、ご指摘から力をいただけたからだと思っています。

     
  • 匿名

    だらだらした展開に飽きて途中で読むのやめた

     
  • 匿名

    タクシーの運ちゃんのキャラクターを最後に生かすところは流石だな。今回も楽しく読ませてもらった。ありがとう

     

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