【怪談】学校怪談/HN:早坂正彦

     【学校怪談】
 
 

奇憚社の担当から電話があったのは、夏も終わりかけた、うっすらと肌寒い日の朝だった。

まだ眠い瞼をこすりながら私は電話にでた。

「もしもーし、早坂先生おはようございます。」

「あぁ加藤さん。こんな朝っぱらから、どうしたの…?」

寝起きのはっきりとしない声で応対する。

「それがですね~是非とも先生に頼みたい要件でしてねぇ。」

加藤の話は簡単にいうと次のような内容だった。

奇憚社が発行している心霊雑誌【奇談】に特集として、作家さんたちの創作した怪談を載せるという企画だった。

私は怖い話や怪談の類いなどは苦手な方で、つい先日も作家さんたちが集まり怪談を披露するという夢を見て、私の番で語った【のっぺら坊】の話が大コケした夢を見たばかりだった。

「なんとかね…お願いしますよ先生ぇ。」

私が返事を渋ってるのを察したのか、加藤は猫が撫でるような声で頼んできたものだから私は同意しつつも…

「分かりました…けど在り来たりでつまらん話になるかもしれませんよ。」と予め釘を刺しておくことにした。

こうして、怪談話を読者様にお披露目することになったのだが、如何せん加藤担当にも言ったように何処か在り来たりで怖さが伝わらないかもしれない。

しかし1つだけ読者様に言っておかなければいけないことがある。

私の書いた3つの学校怪談の内、1つは実際に起きた紛れもない事実であり、創作では無い本当の怪談である。

当事者の方たちに配慮し、人物名また地域団体名などは仮名とするが読んだ後で、霊障・その他いかなるトラブルに見舞われたとしても一切の責任は負えないことをここに書いておく。
              
           作者:早坂正彦

 
――――――――――――――――

 
学校とは不思議な異空間である。

閉鎖されたひとつの世界でもあり、そこには一体いつから囁かれてきたのか…不可思議な怪談が多数存在する。

開かずの間、トイレの花子さん、十三階段、音楽室の動く肖像画等々…

そんな学校という異空間をさまよう異形の者たちに魅入られた人々が体験した三つの怪異を御覧頂こう…。

 
――――――――――――――――

 
 
    【林間学校にて】

 
 
「本当に見たのよ…幽霊を。」

保阪夏美と名乗る生徒は、そう言って私にすがるような目を向けた。

「あのなぁ…幽霊、幽霊って毎年騒ぐような生徒はいるけど先生は1度だってみたことがないんだぞ。」

県立西日高校に赴任して以来、1年生の恒例行事である林間学校での合宿には毎年参加しているが、この手のお化け騒動で騒ぐ生徒は例年通りだ。

無論、この保阪夏美も例外ではない。

「でも本当に見たんです私、信じてくれないんですか…。」

目を真っ赤に充血させ、恐ろしい体験をした後のように震えながら呟く保阪を見て一瞬戸惑ったが、この合宿も後1日で終わる…ちゃんと話を聞いて宥めてやろうと思った。

「わかった、わかった…きっと怖い夢でも見たんだろうけど、取りあえず話を聞いてやるから一瞬に来い。」

そう言って保阪を食堂の椅子に座らせ、私も向かい合うように椅子に座る。

「で?どんな怖い夢をみたんだ。」

最初から保阪の話を信じないつもりは無かったが、少し意地の悪い態度で保阪に言った。

「だから夢じゃないんです。昨日の夜…私なんだか眠れなくて外の空気でも吸おうと思って、消灯後にしばらく経ってから、こっそり部屋を抜け出したんです。」

「お前なぁ…消灯後の外出は禁止だろ…まぁいい、それでどうしたんだ。」

「えっと、それで暗い廊下を月明かりだけを頼りに進んでたんです…そしたら向こうの曲がり角からキィ、キィって何か変な音が聞こえて…」

保阪の喉からグッと唾を飲む音が聞こえた…乾いた唇を舌で舐め、保阪はまた話だす。

「その音で私びくっとして動けなくなって…でも、どんどんキィキィキィってその音は近づいて来るんです。」

見ると保阪の顔が真っ青になっている…

「ついには曲がり角からその音の正体が出てきて私心臓が止まるかと思いました。」

「一体何だったんだ!?」

私は思わず声高になり保阪に聞き返した。

「車椅子…車椅子を押しながら歩いてくる看護婦さんだったんです…それを見た瞬間この世の者じゃないと思いました。」

今度は私の方がごくっと唾飲む。

「腰がすくみそうなりながら、私近くにあったトイレに何とか逃げ込んだんです。心臓が張り裂けそうなくらいバクバクして…じっと息を殺して来ないでって思ってました。」

こちらの顔色を窺っているのか保阪はしばらく間をあける。

「私がトイレに隠れて息を潜めてたらやがて、キィキィって音がトイレの方に近づいてきて…トイレの前で一端止まったと思ったんです…でも私の気配を感じたのか車椅子を押した看護婦がトイレに入ってきました。」

「お前それでどうしたんだ?」

私の手には、いつの間にかじっとり汗が滲んでいる。
それは夏の暑さのせいではなく、保阪夏美が体験した話によるものだろう。

「ひとつずつトイレのドアが開けられるのが分かりました…やがて私の隠れている4番目のドアにそれが来た時は目を閉じて、お願い来ないでって心の中でずっと祈ってたんです。」

青白い顔に目を真っ赤に充血させながら保阪は震える声で話を続けた。

「4番目の…私がいる個室のドアを開けようと何度もガン、ガン、ガンとドアを手前に引いているんです…鍵が壊れてドアが開くんじゃないかと思いました。…それでも暫くすると、キィキィキィという音が聴こえ車椅子を押した看護婦が諦めたのがわかり、ほっと胸を撫で下ろしました。」

「それじゃあ、お前の話が本当ならその後は何もなかったのか?」

私が保阪に聞き返すと彼女は首を横に振りこう切り出した。

「私がほっとしながらも恐る恐るトイレの個室から出ようとした時…不意に誰かの視線を感じました…ねっとりしたそれでいて射るような冷たい視線…その視線の先を辿るように上を見上げたら…看護婦がトイレの上から私を見下ろしていたんです。」

ここで保阪夏美の話は終わった。
その後どうなったのか聞いても、彼女は気絶してしまったらしく朝まで何も覚えていないという。

保阪の話を聞いた後で私はよくある怪談話のひとつだなと思った。
話を聞いている時には手に汗握るものがあったが、話が終わってみれば何のその…【よくできた怪談】ではないか。

私は保阪夏美に合宿は後1日で終わるからなんとか耐えてくれと宥め、食堂を後にした。

最後まで目を真っ赤にさせて私を見ていた彼女の視線が後に引いたが、教師生活を続けていれば今回のような事は1度や2度ではない。

合宿最後の夜、私は林間学校の宿直室で布団に入りウトウトしながら、今日の保阪の話を思い返していた…

「車椅子を押す看護婦…まさかな…。」

噂であるが、戦後間もなくこの林間学校は結核病棟だったという。
その後、病院が閉鎖となり後に今の林間学校が建てられた。

ふと眠気がどこかへと消え、私は尿意を感じトイレに起きた。

暗がりの廊下を月明かりだけ頼りに進んでいく、ふと耳障りな金属音が聴こえてくる…キィ、キィ、キィ…

私はびくりと体を硬直させ辺りを探る。

「誰かいるのか…。」と言ってみたが返事は無く変わりに、キィ、キィ、という音がだんだんと此方に近づいてくるではないか。

「ひぃい。」

私の喉から声にならない声が上がる。

金属音の正体が何なのかも確かめず、私は近くにあったトイレに駆け込んだ。

トイレの個室…4番目に入り鍵を閉め、そこで息を殺してじっと身を潜めた。

やがて、キィ、キィ、キィという金属音がトイレに入ってくる。
私の心臓は張り裂けそうな程バクバクと音を鳴らている。

1番目の個室がガチャっと開く音が聴こえ
やがて2番目、3番目と開けられていく…

私がいる4番目の個室にそれが来た時には、お願いですから来ないでくださいと心から祈るばかりだった。

ガチャ、ガチャ、ガチャ…何度か私が入っている個室のドアを開けようとする音が聴こえる…

やがて諦めたのかキィ、キィ、キィと金属音は遠ざかっていった…。

ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、私は何者かの視線を真上から感じた…。

冷や汗が背中を伝う感触と耳に何時までも残る金属音を振り払うようにゆっくり上を見上げた…。

そこには、真っ白な顔に目を充血させた女が私を食い入るように見ていた。

「保阪っっ…お前なのか…。」

薄れゆく意識の中で私が言えたのはその一言だけだった。

恥ずかしい事に私は気絶してしまいその後のことは覚えていない。

後に保阪夏美という生徒を探したが、1年生の、どのクラスにもそんな生徒はいないと各クラスの担任、副担任が口を揃えて言う。

これも噂だが、昔この林間学校のトイレで亡くなった女子生徒がいたという。
彼女が夜トイレに起きた時に、まだ起きていた生徒たちに驚かされ、心臓の弱かった彼女はあまりの恐怖に口から泡を吹き心臓麻痺を起こした。

林間学校の合宿が終わり、校舎を後にしようとした時、不意にどこからかあの耳障りな金属音が聴こえた…

キィ、キィ、キィ…

もしかすると彼女の霊はまだ林間学校をさ迷い、誰かに助けを求めているのかもしれない。

 
 

     【自殺学級】

 
 

その日、何故か教室が淀んだ空間に思えた。

西日高校3年D組の教室に入ると妙に息苦しく、鼓動が早くなる…。

勘だけは鋭い俺が、何も起きないで下さいと心で願ったのも虚しく、この日俺と学級委員長の田辺茜は人の生死を左右する事件に巻き込まれることになったのだ。

「ねぇ達郎君。」

その日の放課後、学級委員長である田辺茜が、机に顔を伏せたまま居眠りしている俺を呼んだ。

田辺茜とは小学校時代からの幼馴染みで中学、高校とその腐れ縁は続いていた。

田辺が俺の名前を呼ぶときは大抵、服装や髪型、身に付けているアクセサリーに対して注意する時だったので

「はいはい、なんだよ委員長!」

どうせチクチク説教されるのだなと思い、少しふて腐れた態度で田辺に返事をする。

「あのね達郎君に話があるの…」

今日の委員長はなんだか、思い詰めているようだ…まさか幼馴染みの俺に愛の告白なんていうことはないだろうな。…と思いながら聞き返す。

「話ってなんだよ…まさか愛の告白とか言うなよな。」

少しだけ顔を紅潮させ唇を尖らせた田辺だがすぐに真顔に戻ると

「馬鹿っ…もっと真剣な話、達朗君にしか相談出来ないの。」

田辺がいつになく真剣な表情で言うので

「な、なんだよ…マジな話って。」と聞き返してしまった。

「これ読んでみて…」

田辺はくしゃくしゃになった便箋を1枚、俺のほうに差し出す。

ドクン…心臓の鼓動が高鳴る…何か嫌なことが起こる前触れだ。
そんな時、いつも俺の鼓動は奇妙な高鳴りをみせる。

内容に目を通すと以下のようなものだった。

――――――――――――――――

【Kへ…】

《私はあなたに傷つけられた…
あなたは私の気持ちなんて少しも考えていないでしょうね…
だから私たちは今日、死にます…
何があろうとあなたを許しません。》

――――――――――――――――

「なんだよ…これ。」

俺は手紙に目を通すと、田辺の顔をまじまじと見た。

「今日の昼休みにゴミ捨てに行こうとしたら、たまたま屑籠から見つけたの…。」

田辺がぽつりと呟く。

「でも、今は放課後だよな…クラスに残ってる奴なんて俺ら含めて数人しかいないぜ…それに俺じゃなくて担任の小宮山にでも相談しろよな。」

俺は声を低くして田辺に囁いた。

教室を見回すと俺と田辺以外に残ってる生徒は4人…テスト期間なので部活で残ってる生徒はいない。

念のため廊下や他の教室も見て回ったがやはりD組の生徒は俺と田辺を含めて6人だけしか残っていなかった。

「小宮山先生は会議で無理だったの…それに今の状況、今日誰かが死ぬってこと…達朗君にしか言えないから。」

田辺も他の生徒に聞こえないように囁く。

「でも、ちょっと待てよ委員長はさ、俺がこの手紙書いた本人だったらどうするつもりさ。」

俺は身振り手振りを加えて田辺に囁くと
曇らせていた表情をぱっと明るくさせて

「達朗君は絶対違うってわかるもん…1番自殺からは程遠い人。」

そう言って田辺は廊下に出るように首をひょいと動かす。

「なんだよそれ!」

俺は田辺と廊下に出た後、田辺が言った意味を知りたくて聞き返した。

「直感よ。」と言って田辺茜は俺を見て微笑んだ。

教室に残ってるいる生徒は、4人。

帰宅部のくせに2人でいつも残ってるのは【矢倉香】と【橋本杏里】だ。

どちらかというとオタクぽい印象の2人で小柄で髪をポニーテールにしているのが矢倉香。

ぱんぱんに太って腫れぼったい瞼が印象的なのが橋本杏里だ。

何かと、この2人はクラスの女子からイジメの標的にされる事が多いが…。

次に、机に座って1人携帯をいじっているのは【井守周平】体が小さく、七三にした髪型が崩れてないか、いつも気にしている。

井守は隣のクラスの不良から毎日パシリをやらされてる可哀想な奴だった。

最後は【奥田恵】クラスでもそこそこ美人で確かバレー部に所属していた。
これといって誰かを恨んだりということは無さそうな子だ…。

俺と田辺は、3年D組の教室に程近い廊下で沈黙したまま、もう1度、先程目を通した便箋を読み返す。

「この際一人ずつ聞いて回るのは駄目か…この手紙書きましたかってさ。」

俺が沈黙に耐えかねて田辺に思いついたことを言ってみたが、田辺は顔を困惑させながら

「仮に書いた本人であっても、はいそうです…なんて言うわけないでしょう。これから自殺しようとしてるのよ。」

確かにそうだなと思いながらまた二人で沈黙した。

「狂言だったりしてな…。」

再び長い沈黙を破り、ぽつりと俺が呟く。

「大体、今の段階でなにも起きてないわけで、これは普段の溜まったストレスを解消するための狂言だった…だから書いた本人は、すっきりしたもんだから丸めて屑籠に捨てたんじゃないか…。」

ふと田辺の顔を見ると、困惑した顔が今にも泣きだしそうな顔に変わっている。

「達朗君は何もわかってないね…でもそうね…これが狂言だっていうなら達朗君の言う通りなのかもね…。」

目に涙を溜めた田辺が真っ直ぐに俺を見つめて言った…

「あ…。」

俺は何も言えなくなり、その場に立ち尽くす。

「ごめんね、達朗君…後は私1人でなんとかするから、ひき止めちゃって本当にごめん。」

そう言って田辺は再び、教室へと入っていった。

俺の脳裏に過去の映像が鮮明によみがえる。

あの時もそうだ…

いつも俺は茜に対して…

まだ幼い頃、茜と俺と何人かの友達が裏山で隠れんぼをして遊んでいた…

夕暮れ時になって1人の友達だけが見つからなかった…

「達朗君ちゃんと探そうよ…」

幼い茜が俺の服を引っ張っている。

「なんだよ、大丈夫だって、あいつ先に帰っちゃったんだよ。」

ドクン…俺の心臓の鼓動が高鳴るのがわかった。

「でも…」と不安そうに俯く茜を無視して俺は裏山を降りて行った。

「大丈夫、大丈夫、茜も早く来いよ。」

遠くで俺は茜に向かって叫んでいた…

その後、裏山のてっぺんにある貯水タンクに落ちて俺の友達は死んでいた事を知った。

あの時、茜の「ちゃんと探そうよ」という言葉を真に受けていれば…。

茜はいつもそうだ…誰かが助けを求めている時、苦しんでいる時、絶対に見捨てたりしない。

だから今度だって必死にクラスメイトを助けようと考えている。

「せめて誰があの便箋を書いたのか分かれば…。」

俺の思考は今まで以上に研ぎ澄まされ、日常の何倍もの速度で考えを張り巡らせていた。

筆跡は…駄目だ、今からじゃ遅すぎるしもしかすると誤魔化して書いている可能性だってある。

思い出せ便箋に綴られた言葉のひとつひとつを…

あの便箋は、Kという人物に当てたものだった…矢倉香と橋本杏里をいじめていたリーダー格の名前は岸野有子…kだ。

井守周平をパシリに使ってる不良は…確か安東淳だった…kという頭文字ではない。

奥田恵にいたっては誰からもイジメは受けていない…

…まて、さっきの便箋には違和感がある。

《私はあなたに傷つけられた…
あなたは私の気持ちなんて少しも考えていないでしょうね…
だから私たちは今日、死にます…
何があろうとあなたを許しません。》

冒頭では、私はという一人称で始まっているが四行目…だから私たちは今日、死にます… になっている。

そうだ、冒頭では一人称で始まっているものが四行目では【私たち】になっている。

つまり、クラスに残っている2人組が自殺をしようとしているのだ…矢倉香と橋本杏里。

俺は勢いよく、教室のドアを開ける…。

「茜っ!!」

俺が田辺の名前を呼ぶと残ってる生徒の視線が俺に集まる。

「何よ…どうしたの。」

茜が小走りで俺にかけよってくる。

「矢倉と橋本だ!2人を廊下まで呼んでくれ。」

俺は茜にそう言うと矢倉香と橋本杏里の2人を直視した。

俺の視線を感じた矢倉と橋本がびくりと肩を震わせていた。

 
「あなたたち死のうとしてたの…」

教室の外の廊下で田辺茜が矢倉香と橋本杏里に向かって聞いた。

先程、直接聞いても無駄だと言ってたのは何だよ…と思ったが、黙っていた。

「ごめんなさい…そういう話もしたことがあったけど2人でやっぱり止めようってなったの。」

矢倉香がぽつりと呟いた。

「そういう雰囲気出してクラスの足を引っ張ってたなら謝るわ…本当にごめんなさい。」

橋本杏里も申し訳なさそうに頭を下げる。

「今日たまたま見つけた、この便箋に自殺するようなことが書いてたからさ…本当なら止めたかったの、でも思いとどまってくれたなら何も謝らなくていいわ。」

茜がほっとしたように言う。

「えっ何それ?」

矢倉香が不思議そうにくしゃくしゃになった便箋を見つめている。

「私たちそんなの書いてないよ…。」

橋本杏里が呟いたその時、教室から井守周平の「ぎゃああああ~」という叫び声が聞こえた。

俺と茜は顔を見合わせ、教室に駆けつけた時、震える手で窓の外を指さし井守周平が言った。

「お、おく、奥田さんがとっ飛び降りた…。」

3階の窓から飛び降りた奥田恵は即死だった。

奥田恵の机の中には封筒が入っており、中には便箋が1枚入っていた。

――――――――――――――――

《小宮山先生へ》

私はあなたに傷つけられた…
あなたは私の気持ちなんて少しも考えていないでしょうね…
だから私たちは今日、死にます…
何があろうとあなたを許しません。

私と私のお腹の中にいる赤ちゃんは天国から、あなたをずっとみています。

あなたが今後幸せになろうとしたら、その時に私は、あなたをこっちに連れていこうと思います。

絶対許さない、絶対。

            《奥田恵》
――――――――――――――――

 
奥田恵は書き間違えた便箋をくしゃくしゃにして屑籠に捨てた。

後で書き直した遺書にはkという頭文字ではなく名前が書いてあった。

Kというのは担任の小宮山先生の事だった。

奥田恵が飛び降りた窓から夏の暑い風が吹き、田辺茜の髪をふわりとさせる。

茜は俺の制服の袖を引っ張り、俺の背中に顔をつけ泣いていた。

「また救えなかった…また…。」

いつまでも茜の声が胸の中で響いていた。

 
 

    【イジメた生徒】

 
 
県立西日高校、放課後の2年B組の教室に
机を取り囲むようにして、4人の女子生徒がコックリさんをしていた。

「コックリさん、コックリさん牧田哲夫君の好きな人は誰ですか…」

人差し指で押さえた10円玉がすぅーっと動き出す…4人の女子生徒から「あっ!」という驚きの声が上がった。

10円玉は鳥居から《な行のナ》《ら行ル》《ま行のミ》《や行のユ》《か行カ》という順番で動いた後再び鳥居に戻る。

…ナルミユカ

次の瞬間、佐崎理子は人差し指を震わせながら言った…

「コックリさん、コックリさん…鳴海由加を事故に見せかけて殺してください。」

 
佐崎理子はクラスでも目立たず大人しい
鳴海由加をイジメの標的にしていた。

「だってあの子なんかむかつくんだもん。」という理子の言葉は的を得ているといえばそうでもあった…。

容姿端麗でいて知的な雰囲気を持つ由加はクラスの男子からは、マドンナ的存在であり、理子が密かに想いを抱いている、牧田哲夫も由加を気にかけているようだった。

だから理子のグループは鳴海由加に対して嫌がらせや、時には由加を呼び出して、暴力などにも及んだことがあった。

そんな時でも由加は怯えた目などは一切せず、冷たく此方を射るような冷やかな目で理子や取り巻きたちを見つめる…

それが、より一層、理子を刺激し苛立たせるのだ。

「あんたなんか死ねばいいのよ…。」

由加に向かって悪意に満ちた声を腹の底から理子は吐き出した。

だから由加が本当に交通事故で亡くなったと聞いた時には、どこか奇妙な…それでいて自分の口にした言葉が本当のものになったことに激しく戦慄した。

1週間前にやったコックリさん、鳴海由加の名前が出てきたことで腹を立てて言ってしまったコックリさんへのお願い…

「コックリさんコックリさん鳴海由加を事故に見せかけて殺してください…。」

10円玉がすぅーっと動き、やがて《はい》という答えをだす。

そして鳴海由加に暴行を加えた日に、由加に向かって腹の底から出したドス黒い悪意に満ちた言葉…

その日の夜に鳴海由加は交通事故にあって死んだ…

理子の悪意は確かに由加に伝染したのだ。

由加が死んでから、1ヶ月後。

佐崎理子とその取り巻きは放課後の教室でコックリさんをしていた…

空いた窓から吹く風は涼しく、まだ夏も真っ盛りだというのに、どこかうすら寒い日だった。

「コックリさん、コックリさん、牧田哲夫君の好きな人を教えてください。」

10円玉がすぅーっと動き、《さ行サ》、《さ行サに濁点》、《か行キ》、《ら行リ》、《か行コ》と順番に動きだす。

《サザキリコ》

「嘘ぉ~」と取り巻きの誰かが言った。

理子は内心ほくそ笑んでいた。
死ねばいいと思っていた鳴海由加が死に、憧れの牧田は自分を気にかけている。

その時、悪い考えが理子の脳裏をよぎり、つい口に出してしまった。

「コックリさん、コックリさん、事故で死んだ鳴海由加は地獄に落ちましたか…?」

「キャハハハ。」と笑う取り巻きたち…

その時、暫くぴたりと止まったままの10円玉が動きだす…

意思を持ったように一文字ずつはっきりと10円玉が刻む文字…

《ソバニイル》

はっとして理子が振り返ると、血まみれの由加がにっこり微笑んで理子を見つめていた…

変な方向に折れ曲がった手で理子に触れようとする。

「やめて…お願い来ないで…。」

恐怖に怯えた表情で理子は後ずさる…。

「どうしたの理子…?」

取り巻きたちには血まみれの由加がみえていない…

口元から血を垂らし、微笑みながら近づいてくる由加に、怯えながら後ずさる理子は窓に手をかけ「お願い、お願い、許してぇえ」と言って体をのけぞらせた瞬間、体勢を崩し窓から落下した。

 
理子はアスファルトに頭をうち、口から泡のような血を吐いて「許して…許して…」とうわ言のように呟いていた。

やがて、アスファルトにはどす黒い血だまりができていた。

取り巻きたちが呆気に取られて落下した理子を見ていると…窓から冷たい風が吹き、由加の笑い声が聞こえた。

「あはははははは。」

「コックリさん、コックリさん、佐崎理子は地獄に落ちましたか?」

 
 

 
  • れつ

    誤字脱字よりも深刻なのは、構成の未熟さではないかな?
    批判されていたコメを読んだ事がありますがあながち間違いではないと思いました。
    賛を受けいれるよりもまずば否を咀嚼してみるのが成長につながるかと思いますよ。

     
    • 匿名

      これ、オムニバス形式で話進めていく形式で、この構成は間違いないと思うのだが、人それぞれなんだろうけど、読み手が未熟だとつらいわな。

       
      • れつ

        他の作者さんのとこにも書いてますが内容に起承転結が無いこと、話自体リアリティが無さすぎることが欠点かと。遺書を見つけたら普通なら担任以外の先生でも相談できるでしよ。

         
        • 匿名

          ここでも起承転結とかwそんなこと書く奴の年齢もだいたい絞られてくるわな。学校で起承転結しつこく言われたんだろうなwオムニバス形式ならひとつひとつの話の構成を見て、さらに全体での構成を吟味してみる。全体には起承転結の構成はできないだろうよ、そういう作品なのだから。無理矢理に起承転結を当てはめるやりかたもあるな。起承承承結など、役目で構成を語るとかな。しかし、現代の文章構成ではその枠にはまらないものも多い。アドバイスする前に自分の実力つけような。

           
  • 匿名

    早坂さん、晩餐会のところで余計なコメントを入れ、あなたの作品に誹謗中傷のコメントで荒らされる原因となってしまったことをお詫びします。大変、申し訳けないことをしてしまいました。多分、お分かりのことかと存じますが、やったのは作中に書かれたヤツと、もうひとりかと。こげさんとロビンさんにも誹謗中傷コメが付いたことで特定は楽です。あと、ひとりは某ログ参照。以後、荒らしはついてないので管理人さんがアクセス制限を入れたかもしれない。これからも良質な作品で読者を楽しませてください。評価ポイントが我々の正直な気持ちの表れです。

     
  • 早坂正彦

    皆さん沢山の応援コメントと投票ありがとうございます。
    さて、改めて自分の創作した話を読み返してみると誤字脱字のあるわ、あるわ…この場をお借りして読んで下さった皆様に謝罪をさせて頂きます。

    今後も誤字脱字の間違いや不適切な表現などあるかと思いますが、どうぞ温かい目で僕の話を読んでください。

     
  • アレア

    全部で3話の怪談でした。
    個人的に自殺学級はちょっとした推理要素もあって面白かったでつ(
    次回作も期待してます!!

     
  • 匿名

    早坂さんといえば怪文書の名手だがこの学校怪談は、ん?在り来たりな怪談だな・・と思わせて最後にひっくり返される。
    じわじわ読者をハマらせていくので、長いなと思いってもすらすら読めました。
    読んだ後凄いの一言に尽きます。

     
  • 匿名

    導入上手いな。第一話をこれって本当にあった怖い話やんけ!?と思わせて二段オチで、苦笑いさせて引き込んでいく。二話三話とじわじわイカす読後に余韻残すやな~上手いな。地上にいたと思ったら地下二階にいた感じだ。

     

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