【怪異】ムジナ

学生時代、まだ徒歩で通学していたときのこと。

夜の9時頃、薄暗い農道の少し前方をOL風の女性が歩いている。

と、彼女のショルダーバッグから財布らしき物が落ちた。

拾いあげて呼びかけるとOLは立ち止まり、ゆっくりとこちらを振り向いた。

 
いや、首が陶芸のロクロのように回転したと形容するのが正しいかな。

しかも顔があるはずの場所も一面長い髪の毛で覆われており、どっちが前か後ろかすら分からないありさまだ。

その異様なスタイルに後ずさりしながらも「これ‥落としましたよ」と財布を差し出す。

すると相手は髪を掻き分けて顔を見せたが、それはまさに茹で卵のごときツルンと白いノッペラボーで、思わず腰を抜かしてしまった。

そして口が無いくせに、コンピューター合成のような無機質な声で「ありがと…」と呟きながら迫ってくる。

俺は声にならない悲鳴とともに失神した。

 
数時間後 、ケータイの着信音で我に返ると、女の姿は消えていて、握っていた財布も無い。

電話は姉からで、帰りが遅いのを心配して掛けてきたらしく、時刻は既に0時を回っている。

 
帰宅後、TVを観ている後ろ姿の姉に例の出来事を話したらゲラゲラ笑って、「マジで?それってもしかしてこんなのだった?」とこちらに向き直ると、あのノッペラボーになっていた。

俺は二たび気絶してしまった。

 
 
気がつくと朝になっていて部屋には誰もおらず、TVや電気もつけっぱなしだった。

当時は姉とアパートでふたり暮らしをしていたのだが、考えてみると彼女は昨日から旅行で不在なのだ。

夕べ電話を受けたはずなのに着信履歴も無い。

本人に連絡すると、確かに旅行先にいるようだし、もちろん俺に電話なんかしていないと不審げだ。

ならばあの怪異は何者の仕業?

近所のおじさんによれば、昔からごくたまにタヌキが人を道に迷わせたりなどのイタズラをするが、ノッペラボーのパターンは聞いたことがないと言う。

実際、山に近いこのあたりではキツネやタヌキを見かけるし、あんな体験をすればさもありなんとも感じる。

とにかくそれ以降、夜は遠回りしてでも別ルートで通うようになったのは当然。

現代に於いても、妖怪は人間の心の隙を狙って出没しているのだろうか。

 
  • 匿名

    まんま八雲で、逸脱なく終わってなんなの?って感じ。

     

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