【不思議】鬼っ子

僕の知り合いに更科(さん)という、『かつては見えていた人』がいる。

中学に上がる頃までは、それこそ生きている人とそうでない人との区別が出来ないくらい見えていたらしい。それが、ある日を境に全く見なくなったのだという。今日はそんな彼女の身に起きた、にわかには信じ難い不思議な体験について語ろうと思う。

生まれつき身体が弱かった彼女は小学生の時、学校でよく虐められていた。

「毎日毎日が死にたいの連続でした。ただただ、両親を悲しませたくない―その一心で生きていたんです。悩みは他にもありました。幼い時から私には、恐ろしいモノが見えていたんです。家にいても学校にいても、どこにいてもそれらはいました。何とか自殺を踏みとどまったのは、死んだらそれらが待つ場所に行ってしまうという恐怖もあったからです」

そんな彼女にも限界が近付いていた。

「自分の存在を全否定するような事をクラスメートの前で担任が口にしたんです。今なら大問題になってたと思います」

泣きながら帰宅した彼女は次の日「具合が悪い」と言って学校を休んだ。そんな日は珍しくなかったので両親は特に気にするでもなく普段通り仕事に出掛けて行く。

「実家には、ずぶ濡れの長い髪の毛がいました。物心ついた頃からずっと」

目が無いにもかかわらず常に憎悪の視線をあたりかまわず撒き散らす不気味極まりない存在。

常に家のどこかにいて、床や壁、天井を這い回っている。移動した後には決まってナメクジが這った様なヌメヌメとした痕跡を残し、すえた生ゴミのような異臭とともに何日も消えなかった。

「両親には何度も言ったんです。でも、信じてもらえなくて。まあ、そのうち慣れましたけど」

昼過ぎまで蒲団にくるまってうつらうつらしていた更級さんだったが、ふいにその、慣れた筈の臭いが辺りに漂っているのに気付いた。

「上手く言えないんですけど、気味が悪いのは確かにそうなんですが、別に人を傷付けるような事を口走るわけじゃない。人間なんかよりずっとマシじゃん、なんて思っちゃって…本気で、死のうって思ったの」

行き先は決めていた。

山に向かって一時間程歩いた所に、昔、家族でよくバーベキューをした河原がある。そこから更に数百メートル遡った上流に大人から「絶対に近付いてはいけない」と言われていた遊泳禁止の淵があった。

「一瞬で人を飲み込むあそこなら楽に死ねるな、と思ってたんです…ずっと」

彼女には三歳年下の弟がいた。

(死んだって隆史がいるから大丈夫だよね…お父さん、お母さん)

川沿いの道をとぼとぼ歩く。みんみん蝉がやたらうるさい日だった。涙は出なかった。涸れたんだと思った。

30分程歩いた頃。

「後ろから視線を感じたんです。それが、あの視線なんです。驚いて振り返ると、アスファルトの上を汚れたモップのような髪の束がズルズル付いて来てました」

(え?何で?)呆然と立ちすくんでいると、どこからかキャキャ!!と男の子の声がした。

気付くと、四、五歳くらいの、古臭い着物を着た子供が髪の傍に立っている。

「信じてくれなくてもいいんです。でも見間違いなんかじゃない。その子、角が生えてたんです。ボサボサの髪の間からニョキっと。え~?鬼~?嘘でしょ?って、何か、凄く楽しくなっちゃって」

ついつい心の中でお願いしたのだという。

(そいつ気持ち悪いからどっかやって)

目の前に突如現れたその妖怪、彼女の声が聞こえたかのように更級さんに顔を向けた。姿は子供なのに顔はとても凛々しくイケメンだったらしい。

「気のせいかも知れませんが、その子、こくりと頷いたように見えました。それから、いきなり足元の髪の毛を掴むとそれをブンブン振り回しながらガードレールを跳び越え川に向かって走り出したんです。目で追っていると、後ろ姿がどんどん透けていってすぐに見えなくなりました」

霊感はそれを最後に消滅したそうである。

「自分で言うのもおかしいんですけど、あの日から妙に根性が据わって、負けるもんか!!って気で生きられるようになったの。それに、風邪ひとつ引かなくなったんですよ」

現在、三十路を迎えた更級さんだがかなり深刻な悩みを抱えている。

「ここだけの話ですけど、お嫁さんになりたくて。年だってあまり違わないしあのまま成長してたらきっとジョージ・クルーニーよりカッコ良くなってる。実は帰省する度にあの河原に足を運んでるんです。でも、逢えないのよね~。もう、一生独身でもいいかなって」

彼女の事、僕は秘かに狙っているのだが、難易度はかなり高そうだ・・・(´Д`)

 
 
ちなみにその子の顔色、赤でも青でもなく、程よく日焼けしたとっても素敵な小麦色だったとか。

 
  • 匿名

    俄には信じがたいとか、余計なのありすぎ、自分の文章や作風を理解していないからかもしれないが、一度読み直してみることをお勧めする。

     

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