パン/HN:0.血苺


アンデルセンの『パンをふんだ娘』という童話がありますが、昔NHKの教育テレビ(現Eテレ)で、影絵で放送されたそうです。

そこで唄われている主題歌が怖くて、子どもの頃に視聴して未だにトラウマになっている人も多いとか…

私は、某動画サイトで大人になってから観たのですが、確かに子どもだったら怖いかも…と思いました。

この童話は、パンを踏んだ罪で地獄に堕ちてしまう娘の物語で、

“たかがパンを踏んだくらいで、罪重すぎ”

という感想を述べている人も居り、確かにそうだけど、“たかがパン”と言える程度に、豊かな時代に生きているって事なんでしょうね。

私の祖父は、昔お米の袋を跨いだ弟を叱りつけました。

「あの水戸黄門も米俵に座って怒られたんだぞ!…それに、将軍様だってご飯をこぼしたら、ちゃんと自分で拾って食べていたんだ」

「米一粒には八十八人の神様が入っているんだからな!」

そう、繰り返し説いて、ご飯粒一つ残す事も許しませんでした。

やはり、食べ物…それも主食を粗末にするなかれ!みたいな考え方(宗教観)は、万国共通なんでしょうか。

「パンが無いならブリオッシュを食べれば良いのに」

とのたまった能天気な王妃は、断頭台に送られましたしね。

パンと言えば、小学生の頃に先生からして貰い、忘れられない話があります。その後、誰に訊いても“そんな話、知らない”と言われるので、ざっくりと内容を紹介させて下さい。


昔、ある国にとても裕福な男が居た。彼は悪い事をして稼ぎ、その金で街に学校や病院を寄付して、街からは名士として崇められていた。

でも学校も病院も、お金が掛かるので、貧しい人たちは利用する事が出来なかった。街には、働いても大して稼げない人や、身体が弱くて働けない人等、貧しい人たちが溢れていたが、彼は見向きもしなかった。

彼が相手をするのは、金持ちだけだったのだ。

ある日、馬車で帰って来た彼を、貧しい人たちが取り囲んだ。

「旦那さま、私たちには何も食べるものがありません」

「何でもしますから、どうか食べ物を下さい!」

追っても追っても諦めない人々に、彼は召使いに犬の餌としてとって置いたパンを持って来させ、

「これでも喰らってろ!」

そう言って人々に投げつけた。

「ああ…やっと子どもに食べさせてやれる」

「ありがとうございます。ありがとうございます!」

貧しい人たちは喜んでパンを拾い、彼はそんな人々を侮蔑の眼差しで見た。

その夜の事。豪華な夕食を終えた彼は、突然心臓の発作に襲われた。

ふ…と気が遠くなり、次の瞬間には、彼は雲の上に居た。目の前には神様が居て、彼と神様の間には、立派な天秤が置かれていた。

神様は言った。

「お前はもう、死んでしまったのだ。これからお前が天国と地獄のどちらに行くかを決定する」

「この天秤は、お前の生前の善行と悪事、どちらが多かったかを計る為のものだ。善の方に傾いたら天国、悪の方に傾いたら地獄に行く」

神様はまず、ぎっしりと金貨の詰まった袋を持ち上げた。

「これは、お前が人を騙して稼いできた金だ。これは“悪”だ」

金貨の袋を置くと、天秤は地獄の方に傾いた。

「続いて、善行だ。どんな良い行いをして来たか、言いなさい」

彼は気負って言った。

「私は、街の為に立派な学校や病院を建設しました」

神様は学校と病院を善行の方に置いた。でも、天秤は地獄に傾いたままで微動だにしなかった。

「そ、そんな…学校や病院より、金貨の方が重いなんて…!!」

彼は愕然とした。

自分は地獄に行くのか…彼は絶望した。すると、神様は

「お前がやった善行がもう一つあるな…貧しい人たちに与えたパンだ」

そう言って、あの固い粗末なパンを取り出すと、天秤に乗せた。

「……」

彼は力無く、その様を見守った。あんなパン一つで、何が変わるものか…

ところが、パンを置いた途端に、天秤は傾き始めた。そして、ピッタリと吊り合ってしまったのだ。

「まさか!…あんなパン一つで!」

「吊り合ってしまったな。これでお前は、天国にも地獄にも行くことが出来ない。だからもう一度地上に戻り、人として生きなさい」


彼がふと気付くと、ベッドに横たわっており、医者や召使いに囲まれていた。

「旦那さまが目を覚まされた!」

「……」

翌日から、彼は変わった。金儲けはすっぱりと止め、暇さえあれば、貧しい人たちに焼きたての美味しいパンを配る、優しい人となった。


…ざっくりといいながら、割と細かくなってしまいました。おそらく、道徳の時間にしてもらった話なんでしょう。

特に感銘を受ける内容でも無いんですが、妙に記憶に残っているのは、パンで天秤が傾く様が印象的だったせいかもしれません。

まあ、だからと言って私が、食べ物を無駄にしない立派な人間になった訳では無いのですが。

少なくとも、“たかがパン”なんて事は、私は言えません。

お米を研いでいてうっかり数粒流してしまった時など、祖父から怒鳴られる思いがして首を縮めてしまうのです。


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