思い出を記憶する家/HN:ドクロン


この時期にぴったりの話をします。尚、県名、市名は伏せます。

数年前、G氏は某県の某市に越してきた。築年数のある中古住宅だった。家具のいくつかは前の住人のものを使えるという事だった。

二階建ての中古住宅。一階には部屋が二部屋、そして洗面所、トイレ、お風呂。そして台所。二階には、部屋が三部屋ある。

一階にある部屋から時々話し声が聞こえたり、足音がしたりするようになったのは住み始めてから数ヶ月してからだった。

その話し声や足音はとても小さく「ごそごそ、ごそごそ」という感じで聞き取れるほど大きくはなかった。何かつぶやいてるようなそんな感じだった。

しかし話し声がし出してその部屋を開けようとすると話し声は止む、そして開けるのだが、誰もいない。勿論誰かが隠れるスペースもない。

ある日残業から帰るとまた「ごそごそ、ごそごそ」と例の部屋から話し声がした。また開けてみても、同じだろうとは思ってみてもやはり気になる。

そして再び開けようと襖に手をかけた瞬間、(スゥッ)と襖が開き中から女性が出てきた。女性はそのままG氏をすり抜けG氏の後ろに消えた。

開いた部屋の中にはテーブルの周りだけ明かりが点いており、テーブルを囲みケーキやチキンを食べる家族の姿があった。おばあさん、おじいさん、そして子供が二人、お父さん。

(なんだろう、私が見ているのは)

そんなことを思っていると、再び後ろから家族の母親らしき女性がお皿に盛ったサラダを運んできた。そして二人の子供はケーキを美味しそうに食べる。それを父親と母親が優しい眼差しで見ている。

そしてまるで明かりを消すようにスゥッと部屋は暗くなり、家族も居なくなった。

そんな事があった。今もその家には暮らしているが、たまにあの部屋から(ごそごそ)っと話し声が聞こえることがある。

(追記)

怖いとかそういうんじゃないんですが、多分あの部屋はリビングになっており、前に住んでいた家族がいつも楽しそうに集まって話をしたり遊んだり食事をしたりする部屋だったんじゃないか。

だからあの部屋に思い出として記憶されたんじゃないか。その思い出をG氏は見たんじゃないかと思う。

心の温まるような微笑ましい話である。


ドクロン ◆WrQmn0zw
天通の投稿広場より掲載


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